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津軽弁に対する優しい誤解

私は青森県の津軽地方出身なので、津軽弁が話せる。15歳で地元を離れてから日常的には使わないが、親と話すときは津軽弁だし、帰省すると当然津軽弁になる。

他の地域の方言についてはよく分からないが、津軽弁ほど標準語と違いが大きいと、日本語と外国語を話すときのように切り替えて話すので、標準語と津軽弁が混ざっておかしな言葉になってしまうということはないし、これまた外国語と同じで、幼少期に染みついた津軽弁は普段使わなくてもなかなか忘れない。

とはいえ、方言の中でもとりわけ難解と言われている津軽弁は、他の地域の人にとって不思議な点が多いようである。

私は東京にある大学に通っていたが、まだ入学してそれほど経っていない頃、サークルの同級生たちと出身地の話になり、私が青森出身であることを伝えると、「えっ、じゃあ津軽弁話せるの?」と聞かれたのでそうだと答えた。この展開はこれまで何百回経験したが分からないほどお決まりのパターンであり、その後はだいたい「じゃあ、何か津軽弁でしゃべってみて(ニヤニヤ)」という無茶振りが来る。

しかしそのときは、一人の女子が、「受験大変だったでしょ?だって、まず標準語ちゃんと勉強しないと現代文解けないよね?」という完全に予想外の質問をしてきた。その子は割と真剣な顔だったので純粋に疑問に思ったようで、その子の優しさゆえの思いやりのこもった質問だったと思うのだが、不器用な私は気の利いた返しができずに、ほとんど反射的に「いやいや、青森の人みんな標準語分かるから!もしかして、国語の授業も津軽弁でやってると思ってたの?そんなわけないじゃん。みんなと同じ教科書だよ笑。光村の」と答えてしまった。

今なら、「そうそう、うっかりしてると津軽弁で解答書いちゃうし、そもそも現代文を読むのが大変だからまじ時間足りない。でも、津軽弁には昔の日本語がそのまま残ってるから、逆に古文は余裕で得点源だったよ!津軽弁は発音が英語に近いから英語のリスニングも簡単で間違えたことない笑」ぐらいの返しはできたかもしれない。

何はともあれ、津軽の人もちゃんと標準語が分かるので、青森に旅行に行くときにポケトークとかはいらないし、標準語でおげーである。

野菜の直売所の看板や寿司屋の手書きのメニューに、でご(=大根)やすずご(=筋子)のようになまりがそのまま書かれていることがあるが、あれは津軽の人のおもてなしの気持ちの表れである。

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