見出し画像

嫌いで居続ける体力

日本テレビで深夜不定期に放送している「有吉×巨人」という番組が好きだ。

各界の巨人ファンたちがあらゆる手を駆使して、大のアンチ巨人である有吉に少しでも巨人を好きになってもらおうという内容だ。

深夜、酔っ払いながらニヤニヤしてこれを見るのが楽しみなのだが、毎度本当にすごいなと思うのは有吉のブレなさ加減なのだ。

劇的で感動的な試合のVTRを見せられても、仲の良い選手同士のほのぼの映像にスタジオの空気が和んでも、元木コーチが選手に対して厳しくも温かい言葉を贈っても、大将原監督がアンチと知っているが…と前置いた上で有吉に優しくコメントしても、彼は全く表情変えず「嫌いなものは嫌いだから」と言い切ってしまう。

コンセプト上、巨人に対して有吉が好意を持ってしまったら番組は続かない。それは分かってはいるのだが、発言のみならず目がマジだから、この人は本物のアンチなんだなというのが画面越しにでもビンビン伝わってきて面白い。


それに比べて自分は…。


アンチ巨人になった時期もきっかけもよく憶えている。

高校生のとき「他のチームの主力を金の力で獲っていくから嫌だ」とよくある意見を言うと、大の長嶋茂雄ファンの父は「それだけ魅力があるチームなんだからしょうがないだろ。こっちが来てほしいって頼んでんじゃない。選手が来たくて来るんだから」と言った。

それはまるで、数年前に父が浮気の言い訳に使った台詞とよく似ていた。

「俺のことが好きだって、女がよって来ちゃうんだからしょうがないだろ」

僕は巨人が大嫌いになった。



日韓ワールドカップの前後にサッカーに寄り道したことはあったけど、おっさんになった今も僕は野球が一番好きで、とても運動なんかできる体じゃないから見る専門で、日々開幕を待ち侘びて物足りない日々を過ごしている。

そんな心の隙間を埋めてくれるのが「有吉×巨人」なのだ。

VTRを見るまでは知らなかったのだが、巨人戦の名場面の1つとして欠かせないのが亀井選手の伝説のホームランだ。

前の打者が2打席連続で敬遠されるという屈辱。2打席ともまわってきたチャンスをものにできず。そして何と、3打席目も前打者が敬遠。「打てなかったら命をとられる」その覚悟で挑みバットを振る。サヨナラ逆転スリーランホームラン!!!!そしてお立ち台で男泣き!!!

男泣きする亀井選手を見てもらい泣きしている自分にハッとして、そんな自分があまりにも意外で驚いた。


贔屓にしているのはもう1つの在京チーム。もちろんファンクラブにも入っている。去年は11戦現地観戦して結果は1勝9敗1分けだった…。心が折れそうになった。正直、今年もファンクラブに入るか迷った。これだけ現地で負け試合を観てることがあの球団マスコットに知れてしまったら、たぶん「もうくるな」と書かれるだろう…。

別に、アンチじゃなくなったわけじゃない。推してるチームが嫌になったわけでもない。いいものはいい、ただそれだけのこと…。嫌い嫌い言い続けるのも体力がいるんだ。だから有吉はすごいと思うのさ。


脳裏に、生まれたときから巨人ファンの義兄の言葉がよぎる。

「〇〇君、アンチ巨人も巨人ファンなんだよ」




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?