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技術士 (電電/電設) むけ研鑽 - 分野分析 -

以降の方向性が定まったのでスコープを具体的にするためにもう少々の分析をしておく。


1. 電気電子部門とは - 他部門との比較 -

電気電子分野とは何かと考えるに当たりひとつ気をつけたいのは、自分が思う電気電子分野なるものはいったん忘れる、ということ。これは社会人になって学んだことであるが、小学校教育で教え込まれてきた、自分だったらどう考えるか、というのは通用しない世界がある。かわりに、決裁者ならどう考えるか、と考えるのがサラリーマン。
というわけで決裁者たる技術士会がどのように定義されているのかを確認してみる。

4. 電気電子部門
4-1 電力・エネルギーシステム
4-2 電気応用
4-3 電子応用
4-4 情報通信
4-5 電気設備

技術士二次試験申込要項

細かいところに入る前にここまで概観した時点でわかることを述べてみよう。
気にし過ぎなのかもしれないが、まず気になるのはナンバリング=序列である。というのも、意外なのが 4-4 情報通信は情報工学部門ではない こと。そしてわれらが電気設備は本部門野中で最後に位置しているということ。これらから勝手に想像をふくらませると、これら分野の並びは試験スコープとして挙げられた順番ではないか?ということ。
時代の流れ的に情報通信が電力や電気よりも後に追加されるというのは何となく分かる。では、電気設備が最後に来ているのはどういうことなのか。ひとつの仮説は電気設備はその他の扱いなのではないか、というもの。これは決して卑下してのものではなく他分野がカバーしきれていない部分をまとめて担当していると思えば良い。すなわち、試験にあっては必須問題では電気電子部門として回答するものもあるので、電気設備分野の人間としては自分野のつもりで回答すれば部門の回答になるという利点がある。
以上について技術士会サイトで試験制度の変遷など確認したが、電気設備分野についての改変は見つけられなかった。一方で 4-1 はもともと「発送配変電」だったようでエネルギ寄りに重心が移動したことは確かめられた。

次に実務上で近い関係にあると思われる部門についても確認をしておく。これらまで目を向ける理由は、電気電子部門には含まれていないが他部門にのみ含まれるトピックを取り上げて領域侵犯してしまわないためである。

機械部門
1-1 機械設計
1-2 材料強度・信頼性
1-3 機構ダイナミクス・制御
1-4 熱・動力エネルギー機器
1-5 液体機器
1-6 加工・生産システム・産業機械

技術士二次試験申込要項

領域侵犯という意味では、これを見る限り比較的フリーに考えて良いように直感する。1-3 に制御が含まれていたり 1-4 にエネルギ、1-6 に産業機械があるので被る部分はあるが、電気電子部門にも含まれているので問題はなかろう。
余談だがこれを見てふと思ったのが非設備メーカ従事の設備機械屋はどの区分で受験するのだろうということ。恐らく 1-6 を選ぶのではと思うが、これも電気電子における電気設備と同じような位置づけのように思えて興味深い。

情報工学部門
16-1 コンピュータ工学
16-2 ソフトウェア工学
16-3 情報システム
16-4 情報基盤

技術士二次試験申込要項

ぱっと見こちらに関してはまずそうな項目は見当たらない。少し気にするとしたら、細目にある 16-1 に組込システムが挙げられていることと、16-4 に情報セキュリティが含まれていること。これらも電気設備面からアプローチしたとしても共通の領域になるだろうから、特に意識する必要はないと片付ける。

5. 化学部門
5-1 無機化学及びセラミックス
5-2 有機化学及び燃料
5-3 高分子化学
5-4 化学プロセス

技術士二次試験申込要項

この部門をチェックするのは化学工学メーカに勤める都合上。実際には研究開発部門が担うところであるが、問題解決の視野を広げた場合に足を踏み入れてしまうかもしれない。被る領域としては 5-4 化学プロセスの細目にある 〜にかかる装置及びプロセスの計測、設計というくだり。

19. 環境部門
19-1 環境保全計画
19-2 環境測定
19-3 自然環境保全
19-4 環境影響評価

技術士二次試験申込要項

この部門を見ておくのは現在の仕事ネタからの発展・逸脱を気にしてのこと。この部門に関しては各項目と欄外に補足があり ”専ら一の技術部門に関するものを除く” "他の技術部門における環境関連科目のことを指します" とのこと。この時点で本分野がもともと他領域に対して回避をしてくれていることがわかるので、大きく心配することはなかろう。

その他、建設部門や応用理学、生物工学なども関わりがないわけではないが募集要項を見る限りではヒヤッとする文言は見当たらなかった。逆に言うとそれだけ分野に囚われた日々を送っているということでもあるので、広く技術者としてはどうよという感じだが、それがどうかを考えるのは少なくとも一分野に合格してから考えても遅くはあるまい。 

2. 電気設備分野とは

以上の流れでそこそこに細かいところを見てきたので帰納的にイメージが固まりつつある。が、せっかくなのでここはひとつ文字面上の定義から演繹的に見ておきたい。

  • 電気: 電荷の移動や相互作用で起こる様々な物理現象の総称

  • 設備: その目的に必要な器具・装置・部屋などを設けること。そのために設け備えたもの。

    • 設ける: あることに備えて構える。ある目的のために作り出す。

    • 備える: 物事が起こった時それに応じて行動ができるように準備する

電気についての定義は深入りすると抜け出せなくなるのでこの程度にしておく。一方の設備については対象が器具・装置・部屋となっており、産業用機械ばかりを考えていると視野が狭くなるという気づきを得た。設ける・備えるについては補足的であるが、目的や物事に予め対応するという意味で工業的な健全さを感じる。

次は募集要項の細目を確認してみる。

建築電気設備、施設電気設備、工場電気設備その他の電気設備に係るシステム計画、設備計画、施工計画、施工設備及び運営に関する事項

技術士二次試験募集要項

ここに列挙されている項目についてそれぞれ層別するつもりはないが、それぞれがどのような設備をイメージされているかを考えてみる。また ”〜に係る” 以降は列挙された設備全てに対するフェーズが記載されていると思われるので、これも同時に分解してみる。

  • 設備

    • 建築/施設電気設備: 少し考えたがこれらを分けるのは容易ではなく、かつ、分けることにあまり意味がないのでまとめて記す。具体的には、受変電や発電、蓄電、避雷、接地、監視、放送、通信、照明、空調などが想像できる。 

    • 工場電気設備: 建築/施設がハコモノとするとこちらはその中に収めるもの。生産設備で言えば成形機や攪拌装置のような電動機やヒータ、検査装置などに大別される。ユーティリティで言えばコンプレッサを始めとする電動機やクーリングタワー、チラー、ボイラなどが想像できる。

    • その他の電気設備

      • この後のつながりで言えば幹線設備が想像できる。また上 2 項目に入れづらい電動フォークリフトや非定常用に用いるものがあればここに入れても良いかもしれない。

  • 計画

    • システム

      • やや解釈に困るが情報システムのような狭義ではなく連動して動く系を指していると想像。ラインやプラントと読み替えれば、インタロックなど含めた解釈ができよう。

    • 設備

      • システムの構成要素と思われる。個別には上で展開した設備群のことを指すとして、それらに付随する FS やリスクアセスメント、運転方案なども含めて良いかもしれない。

    • 施工

      • 意味を広げて解釈するのは難しそうなので単純に工事とみなす。とすると電気設備の据付や配線工事が対象となろう。

  • 施工設備

    • 一口に言うと謎。施工される側の話は上で出ているので純粋に施工に用いる設備のこと?無理くり挙げるなら高所作業車や建柱車などだろうか。要追調査。

  • 運営

    • 工場系であれば生産や保全、施設系であれば維持管理が想像できる。データ収集したりなんかもこの部分に入るだろう。

ざっと見て大きな違和感はなく非設備メーカ従事の電気屋としては実務との乖離はないものと考える。心残りがあるとすれば、計測制御や IT/OT システムのようなソフトウェア系は 4-3 電子応用に含まれるので電気設備分野に限定した記述ではメインとしにくい。また、社会課題を大きく捉えた場合にハコモノの外に出てしまったり、移動体を対象にしてしまったりすると本分野で回答を準備できないという悲劇がありうる。ここが、予め備えて設える設備の難しさというか泣き所としてよくよく心得ておく必要がある。
一応の回避策としてはエネルギ問題に紐付けて無理くり電源設備の話にしてしまうとか、家庭の話に落とし込んで集合住宅や街単位での電力等の話にしてしまうという手はあるので、こういった対策案は今後つみあげるべし。

3. 今後の研鑽に与える影響

たちまち軌道転換するレベルの影響はないことがわかった。部分部分で気をつけるレベルの発見は見られたので今後の研鑽で思い出しながら進めることになろう。
また募集要項で求められている対象については、初期執筆時点では総称での扱いにとどまっているが、今後の技術調査で個別名称が深堀りできれば本コラムに追記していくことにする。

以上。

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