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MCOマルチクラブオーナシップについてまとめてみた

2023年10月10日、『DAZN』より昨今欧州サッカーでトレンドとなっている【マルチクラブ・オーナーシップ(MCO)】にフィーチャーしたスポーツビジネス特化型コンテンツ「FRONTIER OF SPORTS」の第2回が配信された。
本編で海外サッカー専門誌『footballista』編集長・浅野賀一氏が徹底解説するMCOの仕組みや成り立ち、課題や今後の行方などをまとめた。

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■ MCO(マルチクラブオーナーシップ)とは…
⇨ 1つのオーナーが複数のクラブを保有し、選手の育成や経営管理を効率化。欧州を中心に急激に勢いを加速させている経営スタイル。

⚫︎ クラブオーナーの歴史・変遷
① ローカル・オーナーシップ(2000年代初頭まで)
└ 会員によって運営される - ソシオ型(バルサなど)
└ 地元の有力な資産家が所有する - パトロン型
② グローバル・オーナーシップ(2000年代中盤以降)
衛星放送やインターネットの普及により、ビジネスとしての成長性や収益性に注目した海外資本が入る。
③ マルチクラブ・オーナーシップ(現在)
複数のクラブを経営しながら効率的に利益を追求する。

Ⅰ. MCO 3つの型
❶ プレーヤートレーディング型
・コアクラブを持ちながら選手の発掘&育成のためにファームクラブを保有。
└ 価値を上げて売却益を得ていくMCOの基本モデル(ex.三笘薫のサンジロワーズへのレンタル)→ イギリスでプレーするための労働基準を満たす意味合いもある。
・移籍金バブルの煽りを受けてクラブの人件費が高騰すると、これまで買う側だったビッグクラブも売りながら買うスタイルにシフト。
・若手の育成 / 競争バランスの促進 / 買い占め防止 を目的に、FIFAは段階的にレンタル移籍の上限を制限していくことも関連する。→ 22/23(8名)- 23/24(7名)- 24/25(6名)
❷ グローバルフランチャイズ型
MCOブームの火付け役となった〈シティグループ〉〈レッドブルグループ〉を例に、プレーヤートレーディング型を基本に世界各地にクラブを保有することでよりグループ全体のブランド価値を高めていくモデル。
・グローバルにスポンサーを獲得し利益の最大化を図るとともに、コーチングスタッフ / 首脳陣 / 経営陣 も育てていく。→ 人材育成としても機能的
・特にシティグループは大都市を中心にFCし、ファンを増やす戦略もある。
❸アメリカンスポーツビジネス型
NFLやNLBなどのプロスポーツクラブを経営しながら投資的にサッカークラブを保有。選手の価値を上げるだけでなくクラブの価値をも向上させ売却益を得ていくモデル。
・アメリカの投資ファンドからヨーロッパサッカーへの投資が増えている。→ アメリカンスポーツのビジネススキームをヨーロッパクラブに導入し価値を高め、最終的にクラブの売却益を得る。

シティグループとレッドブルグループの傘下クラブ


⚫︎ MCOの課題
└ 同じオーナーが所有するクラブ同士が同一大会に参加するケースが増え、公平性などの観点からルールの見直し含め繰り返し議論が行われている。

⚫︎ MCOのメリット
└クラブは価値を高めるために選手のキャリアサポート(移籍先を探す / 日常のケア)・開発も行う。

ⅱ. 移籍金のインパクト
クラブ経営における主な4つの収入源
1. 入場料・飲食・物販
2. スポンサー
3. 放映権料
4. 移籍金(ベンフィカがトップを誇る)
*ベンフィカの成功例
└ 選手の売却で得た収入を育成環境に毎年1,000万ユーロ(約15億円)投下しているとも言われ、〈育成への投資 ⇄ 選手を売却〉というサイクルを循環させている。

⚫︎ 連帯貢献金
└ 国外のクラブへの移籍で移籍金が発生した場合、その選手が12歳〜23歳に所属したチームがその移籍金の5%を分配した金額を請求できるFIFAが定める国際ルール。
*遠藤航選手の事例
└ 2023年8月に1,900万ユーロ(約29億円)でリヴァプールに移籍。かつて所属していた、南戸塚SC・南戸塚中学校・湘南ベルマーレ・浦和レッズに連帯貢献金を受け取る権利がある。

連帯貢献金の配分割合

⚫︎ TC / トレーニングコンペンセーション
└ 23歳以下の選手が移籍する場合、移籍金が発生しなくても育成クラブにお金が支払われるFIFAが定めた国際的なルール。

ⅲ. 日本サッカーとMCO(世界の潮流)
・日本のクラブが欧州クラブとMCOで提携するとしたらファームクラブとしての扱いになるため、感情的に対応できるかどうかは鍵になる。
・日本全体がMCOを取り入れる舵を切るかどうか → そうせざるを得ない状況になってきている(国内の選手が欧州に行きたいのを国内クラブが留めることは不可能)
◉ 大学からの移籍例
└ 佐藤恵允(明治大学 → ブレーメン)

◉ 10代の海外移籍例
└ 福井太智(サガン鳥栖U-18 → バイエルンミュンヘン)


*今後日本の若手選手が海外移籍する際に必要になってくること

移籍先がどのようなチームなのか、MCOなのかチェックすること。
⇨ Jリーグクラブは早急にこの事例に向き合っていかなければいけない。(C契約の撤廃など)


■「FRONTIER OF SPORTS」配信スケジュール
第2回:『マルチクラブ・オーナーシップ(MCO)』
DAZN:配信中
YouTube:配信中
  前編:https://www.youtube.com/watch?v=c9psgzcIyeg
  後編:https://www.youtube.com/watch?v=hIh93TW3XkI
MC:槙野智章
アシスタント:小山愛理
ゲスト:浅野賀一(『footballista』編集長)

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