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【ライブメモ】tacica TOUR 2022 "singularity" at 2022.08.20 渋谷クラブクアトロ

tacica TOUR 2022 "singularity"
2022年8月20日(土)@渋谷クラブクアトロ
開場16:30/開演17:30
当日券あり。生配信&アーカイブあり。
ツアーファイナル。

サポートミュージシャン
Drum : 中畑大樹

〈tacica TOUR 2022 "singularity"〉ツアー日程
01. 2022年7月10日(日)柏PALOOZA
02. 2022年7月16日(土)仙台 MACANA
03. 2022年7月30日(土)札幌 cube garden
04. 2022年8月6日(土)大阪 umeda TRAD
05. 2022年8月7日(日)名古屋 Electric Lady Land
06. 2022年8月20日(土)渋谷 クラブクアトロ

会場周辺について

天気はどんより曇り。ちょうど会場に到着したころ、ポツポツ雨が降り始めた。渋谷のライブハウスにしては入場のオペレーションがこなれていない感じ。階段で4階まで登る。検温、手消毒、立ち位置指定。ドリンク代600円(交通系など一部の電子マネー可)。

東京だと客層がグッと広がる感じがする。当日券はあったようだけど、ほぼほぼキャパめいっぱい。

公演の一週間前ほどに生配信が決まったこともあり、カメラが何台か設置されていた。

感染者が爆増しているなかでのsingularityツアー。まさに特異点における開催。およそ1ヶ月、全国6カ所。自分が観に行けたことはもとより、バンドメンバーやスタッフの方が疾患することなく完走できたのは、大袈裟じゃなく奇跡的。世の他の音楽イベントで出演見合わせや中止延期が相次いでいたので、無事ツアーファイナルが迎えられて心の底からよかったと思う。

セットリスト

01. Dignity(2022年『singularity』)
02. 冒険衝動(2020年Sg)
03. BROWN(2022年『singularity』)
04. 群青(2017年miniAL『新しい森』)
05. 掟と礎(2011年AL『sheeptown ALASCA』)
06. space folk(2022年『singularity』)
07. デッドエンド(2022年『singularity』)
08.クローバー(2007年 miniAL『Human Orchestra』)
09. アロン(2022年『singularity』)
10. 某鬣犬(2009年 AL『jacaranda』)
11. GLOW(2022年『singularity』)
12. バク(2008年AL『parallel park』)
13. アシュレー(2007年 miniAL『Human Orchestra』)
14. ねじろ(2021年配信)
15. 人間賛歌(2022年『singularity』)

en01) ダンス(2022年『singularity』)
en02)人鳥哀歌(2009年『人鳥哀歌e.p.』)★
en03)HERO(2007年 miniAL『Human Orchestra』)★

17:30開演、18:55本編終了。19:18全体終了。
東京公演だけアンコールが1曲多かった。全6公演中、初日の柏だけアースコード。他は、人鳥哀歌HEROのどちらか。それ以外のセットリストは同じ。

感想など

猪狩さんは黒のニールヤングのTシャツを着ていたけどいつもの腕を振り上げているやつではなく、あまり見かけないもの。黒のパンツ。
小西さんはネイビーとホワイトのキャップ、白のツアーTシャツ、ベージュのチノパン。

ライブ冒頭からおや?と驚いたのは照明の演出。一曲目のDignityではいきなりミラーボールが登場。他の公演では、ホワイトの照明で真後ろから照らす逆光の演出だったけど、今日はちょっと違うぞ、と。次の冒険衝動ではブルーとグリーンを組み合わせた、クールな世界観に。曲の後半、黄緑の照明も珍しかった。

BROWNでは暖色系のオレンジでやさしい感じ。〈憎しみはとっくに洗いざらい許したよ 他の誰でもない僕の為に〉と言うフレーズが好き。イントロから印象的なギターの音色が好き。

「自分でも思っていた以上に気を張っていた。無事にファイナルできてよかったです」ということを初っ端のMCで言う猪狩さん。でもそれは本当にそのとおり。

群青掟と礎では、“この禍”を意識したようなフレーズに耳をすませる。〈当たり前が困難で自由とは不自由の理解者〉〈呼吸の価値を思い知る日々〉〈今日僕がいなくなってしまっても特に非常事態なんて騒ぎ立てる事もしないか?〉 猪狩さんにとって「ネイビー」ってどんな印象なのだろう。人間賛歌にも出てくる。

デッドエンドで号泣。真っ赤の照明が大正解で、第一音からその世界観に飲み込まれた。とにかく歌詞が沁みた。ここまで泣いたのは、ベストアルバムツアーの京都dear, deer以来か。自分にとって今日までの、2022年の総まとめといった感じで、すべての歌詞が沁みた。サビでは赤い照明にフラッシュも加わって、ただただかっこよかった。

動揺したままクローバー。どうにか、アロンで正気に戻って、照明がかっこよ!!ってなった。ピンク系とその補色のグリーン系の組み合わせで、サイケで妖艶。この曲のライティングが、過去一番センスいい!と感動した。後半の間奏で小西さんの指がうねうね動くのを確認。

某鬣犬バクアシュレーなど初期の曲たちはその歌詞も相まって、猪狩さんがストーリーテラーのようで、お話を聞かせているような歌い方がよかった。そしてGLOWが好き。メロウでアンニュイな世界観に浸る。

小西さんのグッズ紹介について、猪狩さんが「CDをまるで自分が手作業で作ったような言い方が、いいなって思った」という感想。それから、中畑さんが「ゆっくりやるつもりだね」と言ったときに、小西さんが中畑さんの紹介をしなかったことを指摘し、「紹介しないとあの人誰だろうってなっちゃうじゃん」の流れで、猪狩さんによる中畑さんの紹介。

猪狩さんが今日、会場に電車で来るときの話。ずっと立っててようやく席が空いたから座ったものの、おばあちゃんが乗ってきたから「どうぞ」と席を譲ろうとしたら、強めに肩をググッと抑えられて断られたそう。「そのわりにひざをさすってんだよねぇ」に会場爆笑。さらに、「前も言ったかも知れないけど、登山の格好をした老夫婦って、(席を譲るべきかどうか)迷うよね」と言ったところで、中畑さんから「配信してるからね!」と指摘が入ると、「あっ」。まだしゃべり足りなかったようで、「一昨日、家にヤモリが出て、家を守るって書いてヤモリ。井戸を守るって書いてイモリ」という話をしていた。

六度目のライブなのに、今日が一番、体感速度が速かった。ねじろを聴きながら、弾き語りを始めて聞いたときのこと、ここ3年くらいのことを振り返っていた。

本編最後の猪狩さんMC。『singularity』は長い時間をかけて作ったアルバム。前作『panta rhei』から3年。サボっていたわけではないけど。アルバムのかたちが見え始めて、どう届けようと考えたときに、panta rheiの頃よりもさらにCDで出すことの意義が問われるようになってて、鈍感なふりして敏感に感じていた。それでもCDを作りたいと思って、なぜって、作りたいから作っただけ。そもそもバンドだってそう。やりたいから、やっているだけ。みんなだって、ライブに来たいから来てるだけ。難しく考えなくていいかなって思ったときに、一枚一枚届けるっていうことを、改めてやってみてもいいかなと思って始めた(←これは終演後に猪狩さんが物販に立つことを指していると思われます)。すごい、やってよかったと思ってる、と。その力強い言葉に、会場は大きな拍手で応えた。

さらに、「また性懲りも無く曲を作りたいから作るし、ライブもやりたいからやるし。みんながライブに来たいときに、いつでも来れるようにしておきます」。その猪狩さんの言葉に泣いた。

人間賛歌のアカペラの部分が好き。鳥の鳴き声とか日常の音が流れるなかで猪狩さんの声が響くのが、言葉に言い尽くせない感情が込み上げる。

ダンス、弾き語りも含めて過去イチのパフォーマンスだったのでは。やわらかで、あたたかい空気感のボーカル。中畑さん、猪狩さんとしばらく見つめあって、「小西くん泣いてたよ」と言いうと、「小西は泣かないです」と猪狩さんが即答。

続けて、「ごめんね、ファイナルくらいはサプライズでハモがあるんじゃないかって。……そんな気、全然なかったけど」と猪狩さんが言うと、「いいよ、そんなこと言わなくて」と中畑さんの優しいフォロー。それでもなお猪狩さんは、「だって毎公演、一人でやるんかい!って思われてるのかなって。つっこみが聞こえるんだよね、夜寝るときに」と。(個人的には微塵も思ってなかったです)

からの、ライブ告知!!!『tacica tour 2022 三大博物館 〜動物達の遊戯〜』。(漢字で遊戯って書いて、ゆげって読みます。初期の曲に顕著なんだけど、動物縛りのセトリを組む」と説明。「人間を動物とするか、という線引き」、「じゃあ、神様は動物?ちょっとわかんなくなってくる。まいったね…」というぼやき。とにかく楽しみ。

最後に中畑さんからひと言。「無事、一本も欠かさずできたtacicaの二人に拍手!」からの、猪狩さんペンギンをステージ最前に置いて始まった人鳥哀歌

ツアーファイナルはアンコールが一曲多かった。ホワイトの照明が全開で、光に溢れていて、多幸感に満ち満ちていた。人鳥哀歌HEROも、これまで何度も聴いた曲なのにそれでもなおテンションはあがるし、幸せな気分に包まれるのはすごい。

曲が終わっても鳴り止まない拍手。ダブルアンコールも期待したけどそれはなかった。(猪狩さんが真っ先に物販に走っていた疑惑)

人生二度目の全通。札幌で観るという夢も叶えてしまって、とても楽しく幸せな1ヶ月だった。tacicaはツアーファイナルを迎えるごとに次の活動の告知をしてくれるので、命が更新される思いがする。次は東名阪。今年もまだまだ楽しみでいっぱいだ。

新幹線でおいしいビールが飲みたい!