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岡田監督の凄み

戦い方のビジョン

私は何十年も野球を観てきた。
しかし、今回ほど凄みを感じたことはなかった。
タイガースの岡田監督。
2023年6月11日、北海道での日本ハムとの3戦目を1対0のリードで迎えた九回裏。
ここで岡田監督は湯浅投手を登板させた。

湯浅投手は3日のロッテ戦では九回に抑えとして登板も3点差を追いつかれた。
5日の同じくロッテ戦では延長の12回にマウンドに上がり、2安打を許しながらも辛くも無失点でしのぎ相手にリードを許さなかった。
この試合は延長12回までになり及川投手の他湯浅投手しか残っていなかった。
8日の楽天戦では九回に2点リードで登板した。
岡田監督は優しいなあ……???。

しかしその試合で湯浅投手は四球2つのあと2点差を守れず、逆転サヨナラ3ランホームランを浴びて負け投手になった。
この11日の最後の日本ハム戦で湯浅投手を1点差のリードで登板させるとは、私は考えてもいなかった。
いやあ素人の私ならずとも実際にこのケースで湯浅投手を指名する監督がいるだろうか?
だが、これこそが今年の岡田監督のビジョンなのだろう。

無言のメッセージ

私は9日に富田投手を先発で1軍登録する際に湯浅投手を2軍に落とすのではないかとさえ思っていた。
セ・リーグの順位はこの時点でタイガースのトップは変わらず、DeNAとは4.5ゲーム差だった。
多少の余裕はあったのだろう。
シーズンの残り試合もまだ2/3ほどある。今後、湯浅投手を当てにできないとなるとかなり苦しくなる。
岡田監督は富田投手に代わって湯浅投手を登録抹消にしなかった。
それこそが湯浅投手に対して監督からの無言のメッセージになっていた。
どのタイミングでリベンジに挑戦させるかを常に頭においていたのだろう。

もしも万が一、6月11日に湯浅投手がリードを守れなかったとしたら、今年のこの先の戦い方を一から見直すことになっていたに違いない。その時点で今期の「アレ」の可能性が確率を相当に下げたはずだ。
ここで湯浅投手が救援を失敗していたら、岡田監督はメディアを含めてどれだけ叩かれたことだろう。
その覚悟を含めて下した結論が湯浅投手にこの試合を任せることだった。
試合後、岡田監督は普通のことを普通にやったような受け答えをしていた。
岡田監督はこの先何年も監督を続けるつもりはないことだろう。
それでも不本意な退陣を望んでいるわけもあるまい。

画像はイメージです(神宮の東都大学リーグ)

「勝負師」

プロ野球の監督は本人がそう考えているかどうかは別にして「勝負師」であることは宿命ではないか?
また、そうでなければ務まらないのではないか?
これまで名監督と呼ばれた人たちにはその匂いをプンプンと感じる。
そしてその「勝負師」の役割を自覚して、さらにその役割に没頭して、自分の知識と体力と運を注ぎ込む。
そこにはやはり「勝負」とは何なのかを知らなければ成り立たないのではないかと思う。
肉を切らせて骨を断つがごとくのこともあるのだろう。

湯浅投手に賭けることで今年の「勝負」を賭けているのかも知れない。
誰も真似できない、真似もしたくない、そんな凄みを私は岡田監督に感じた。

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