Softwareがas a Serviceたるための三条件
こんにちは、相良です。ジェネシア・ベンチャーズでキャピタリストをやっています。
ここ数年のスタートアップシーンはSaaS全盛の様相を呈していますが、今日は改めてSaaSの意味、つまりSoffwareがサービスであるとはどういうことなのかという点について、前職での経験を基に掘り下げてみたいと思います(昨年末まで、企業のデジタルトランスフォーメーションを促進するためのデータ活用基盤をSaaSで提供するTreasure Dataに在籍していました)。
前提として、オンプレとクラウドの違いであるとか、定義についての説明は割愛しています。
1. 永遠のベータ版であること
まずは何よりもこの点が重要ではないでしょうか。リリースしたら終わり、アップデートがあっても半年に一度という程度なら、それはサービスではなく製品です。完成品でありながら未完成品であり、修繕と改良を繰り返して文字通り絶え間ないアップデートを続けていくことで、変化し続けるユーザーニーズを適時捕捉し、価値を創造し続けられるかどうか。これがSoftwareとSoftware as a Serviceを切り分ける大前提の要素であるように思います。
ちなみにTreasure Dataでは、マイナーなものも含めると数週間に一度の間隔で新たな機能をリリースし続けていました(今も続いていると思います)。製品ではなくサービスであること。ある意味でゴールがなく、終わりのない戦いです。
2. 営業と開発の距離が近いこと
めっちゃ大事です。サービスたるSoftwareにより良い改善を高速に重ねる上で、顧客ニーズを押さえる前線(営業)と機能要件を実装に落とす後方(開発)の蜜月関係は必要不可欠だからです。これを実現するために必要になるのは、意思決定基準の透明化とインセンティブの同一化です。
いくら営業が「売れる」と言っても、特定顧客のみでしか使えない機能を開発は実装すべきではない(戦略的な案件は例外です)。また、緊急かつ重要な案件に対応して実装した機能によりもたらされた利益が開発陣に還元されないのでは、作り手のモチベーションが維持できません。両者が同じ方向を見られるように、営業と開発の双方がハッピーになる制度設計が必要になります。
インセンティブを同一化することによって営業と開発の間にチーム意識が生まれ、コミュニケーションも活発になります。コミュニケーションが活発になることで組織の風通しも良くなり、それが企業カルチャーの醸成にも一役買います。営業と開発の距離が近いことは、組織に多くの実りをもたらすのです。
ちなみにTreasure Dataの開発陣はすべからく優秀かつ良いおじさんモトイ良い人が多く、営業のどんなリクエストに対しても一定の理解を示した上でどうしたら実現できるか(実装の現実味が増すか)に対して的確な意見をくれました。細かい点ですが、大事なコトだと思います。
3. サポートチームが強いこと
Softwareがサービスであるための最後にして最大の条件は、カスタマーサポート機能を備えることです。それも最高に強いチームでなくてはなりません(カスタマーサクセスと言い換えることもできますが、ビジネスバリューへの貢献はある種の上位概念であり、ここでは顧客を満足させながら利用を定着させる役割を指してカスタマーサポートと呼んでいます)。銀行や小売店、通信キャリア等他の企業組織におけるカスタマーサポートとは一線を画し、SaaS事業者の生命線と言っても過言ではないほどの重要機構です。
利用マニュアルが整備された完成品であっても、多くの顧客がサポート窓口に問い合わせを行なう事実からもわかるように、利用難度に関わらず、顧客は学習コストをアウトソースすることで時間のROIを最大化するものです。日々新たな機能が発生し続け、利用マニュアルの整備が追いつかないSaaSであればなおさらです。顧客はドキュメントを読まないし、時間をかけて作ったマニュアルも(一瞥こそすれ)読み込みはしない。洋の東西を問わず、この事実は普遍的です(もちろんマニュアルが必要なくなるほどUIを磨き込む努力は大事ですが)。顧客の問い合わせに対して即座に返答し、最適な利用方法をガイドできるカスタマーサポートがある組織とそうでない組織には中長期で雲泥の差が出ます。
営業も大事、開発も大事、でもカスタマーサポートはもっと大事です。Treasure Dataには高橋さんというサポートマネージャーがいて、顧客からのいかなる問い合わせにも「秒で」対応し、顧客満足度と企業価値を飛躍的に高めています。彼及び彼の組織するチームなくして、今のTreasure Dataはなかったように思います。
また何か思いついたら徒然に書きます。要望や相談などあれば、お気軽に問い合わせください。秒で対応します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?