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「思い出なんかいらん。」

「思い出なんかいらん。」

自分の大好きな漫画である「ハイキュー‼」で、主人公が対戦する「稲荷崎高校」の横断幕に書かれている言葉です。


2023年12月、大学サッカーを引退しました。
新しい世界に飛び込む前に、大学サッカー、4年間で学んだことを少しだけ立ち止まって振り返りたいと思います。


振り返りとは言いますが、この文章で、
「4年間こんなことがあった、、、」
「大学サッカー楽しかった、、、」
といったことを書くつもりはありません。

素晴らしい仲間たちと過ごした時間や、ここでしか得られなかったであろう感情は、自分の人生に彩りを与えてくれる貴重なものであったし、これからの人生で間違いなく大きなエネルギーになると思います。


それでも、
本気で賭けてきた時間をただの酒のつまみになる話にはしたくないし、何かを達成したつもりになって歩みを止めている余裕は今の自分にはありません。


大学サッカー、4年間を、そういった意味での”思い出”にするつもりはありません。

この4年間で得られたものを、最大限これからの人生で活かすために、言語化して整理しておこうと思います。


もし、興味があれば最後まで読んでみてください。
自分がどういう人間かも少しわかると思います。


①スタンス

4年間を終えて、一番変わったと思うものは”スタンス”です。

簡単にまとめると、物事や人に向かう姿勢、態度を正すことができました。


この4年間で、自分のしょうもないプライドは粉々に打ち砕かれ、自分は何者でもないということに心の底から気づくことができました。


筑波大学蹴球部には、プロを目指して入部しました。
蹴球部の先輩にはJリーガーが多くいたし、自分もここで成長し最後にはプロになりたいと考えていました。


しかし、それは、”絶対にプロになる”という覚悟とは少し違って、
今思うと、本当に恥ずかしいですが、”頑張ればなれるでしょ”くらいに思っていたところがありました。


「高校は強豪ではなかったけど、強豪に進んでいたらプロになれたかもしれない。」
「まだ本気を出していないだけで、自分には可能性が眠っている。」

口には出さないまでも、心の中ではそう思っていたところがありました。


自分は小学生の頃から運動神経が良く、勉強もできた方でした。
人から褒められることや、高い評価を受けることも多かったし、目立った挫折もありませんでした。


そのような経験から、自分はどこか特別で、人とは違うと思っていたところがあったのではないかと思います。


今考えると、くそしょうもない。

恥ずかしいぐらいしょうもないプライドが自分にはありました。


そんなしょうもないプライドを打ち砕いてもらえて、本当に良かったと思います。


自分は3年生の春にTOPチームに昇格しました。
入学初年度は4軍でしたが、順調に3軍、2軍と昇格し、目指してきたTOPチームに昇格することができました。
筑波大学蹴球部のTOPチームは、世代別代表を経験しているような選手たちばかりで、大学サッカーの中でもTOPクラス、毎年プロ選手を輩出するような場所でした。

ここで自分はそれまでの人生では比べ物にならない、大きな挫折をしました。


初めの1週間の調子は悪くなかったと思います。
TOPレベルの選手たちからボールを奪えたり、勢いのあるプレーでチャンスに絡めたりしていました。

しかし、それは完全に初めの1週間だけで、だんだんと良いプレーができなくなり、周りの実力差を正確に理解することができました。


ゲームに入ってもボールを足元に止める技術もなく、自分のところで必ず攻撃の流れが止まる。
守備でも自分のところが明らかに穴で、チームとして連携してボールを奪えない。


圧倒的にレベルが違う選手たちの中で、自分の心やプライドはボロボロになりました。



そのような挫折の中でも、本当に良かったと思えることがあります。


それは、

逃げなかったこと。


今回も、

今は調子が悪いだけだし、
自分はまだ3年生だし、
自分も経験があればこれくらい、

と言い訳を作ることはできました。


これまではそうやって乗り切ってきたし、自分のプライドを傷つけないように言い訳を考え、逃げることはいくらでもできました。



それでも、今回は逃げなかった。


そこで初めて、敵わない何かに本気で打ち込み、全力を出し尽くしたうえで、挫折を味わうことができました。

それによって、自分は特別な人間ではなく、くだらないプライドなんて守っていてもしかたないと、初めて心の底から気づくことができました。


ここで逃げなかったのは、本気でやらなければいけないと思わせてくれる仲間がいたからです。

明らかに実力が違う自分にも、見捨てずアドバイスをし続けてくれたチームメイト。
こんな自分を応援してくれ、いつも声をかけてくれる同期。


その人たちがいたから、逃げちゃだめだと思えたし、最後まで全身全霊で立ち向かうことができました。
みんなには本当に感謝しています。



今思えば、取るに足らないプライドは、自分の現在地をくらませ、成長を妨げる悪因だと思います。


理想と現実の距離を正確に把握し、それを埋める正しい努力をすること。
圧倒的な劣等感を持ち、それをエネルギーに変えて努力することが、成長のためには絶対に必要なものだと今なら理解することができます。


自分は特別な人間ではなく、物事や他人から学び、謙虚な姿勢をもって成長しなくてはならない。

このスタンスを得ることができたことが、自分にとって一番価値のあるものだった思います。


②基準

次に、筑波大学蹴球部だったからこそ、"基準"を知ることができました。

よく筑波大学蹴球部ではこの言葉を使います。

「当たり前の基準をあげよう。」
「日本一の基準で練習しよう」


自分は初め、この”基準”という言葉があまり好きではありませんでした。

基準ばかり高く設定して、見えないものを目指して現実をただ否定してばかりいることにはなんの意味もないと感じていました。


今考えても、基準が本当に見えず、ただ言葉を使っているだけであるなら、その感想も間違いではないと思います。


しかし4年間、この”基準”に本気で向き合ったからこそ、筑波大学蹴球部には確かに基準があり、それを目指すことは必要不可欠なのだということを理解することができました。


筑波大学蹴球部の基準は、他のチームや社会からも乖離しているのではないかと思う時があります。


練習や試合はもちろん、小さなミーティングやZoom会議でも、1分も遅刻することは許されない。

ただサッカーをするためだけに組織にいることは許されず、チームのためや仲間のために行動することは当たり前である。

練習の中の一つのプレーでもミスをすることは許されないし、周りもそれを許してはいけない。


先に社会に出た同期や、先輩からは、

「他の組織や会社ではそこまで厳しい基準を要求されない。」
「蹴球部で厳しくやっていたから他の組織では楽だ。」

という話をよく聞きます。


わざわざ自分たちにそこまでの基準を課す意味はあるのか。
なぜ社会と乖離するほどの高い基準を目指すのか。


その答えは、4年間経ち、やっと理解することができました。



それは、

この組織がそれだけ高いところを目指しているからである。


筑波大学蹴球部は、日本一を”獲らなければいけない”クラブです。

それだけの歴史をOBの方々は遺してくださっているし、応援してくださるたくさんの方々からの期待を背負っています。


さらに、

筑波大学蹴球部は”ただサッカーが強い”だけではいけない。


筑波大学蹴球部は、サッカーの実力だけでなく、その姿勢やサッカー以外での取り組みでも大学サッカーを牽引しなくてはなりません。

牽引するということは、既にある目標を目指すことではなく、自分たちが前に進み続け目標となる存在であり続けることです。


筑波大学蹴球部が目指すところは高く、それに見合った基準が筑波大学蹴球部にはありました。



しかしそれは、筑波大学蹴球部だけにあるものでなければ、サッカーやスポーツだけにあるものでもないと思います。

何事をするにしても、個人であっても組織であっても、高い目標を達成するためには、その基準に合った行動をしなくてはいけません。


当たり前のことを当たり前以上にやる。
高みを目指し続ける。


これからも高い目標を目指す自分にとっては、ここでその基準を知れたことは本当に良かったと思います。


ここからさらに目標に向かって成長し、基準を上げていきます。


③考え方

最後に、マインドセットや価値観とも言い換えられますが、4年間サッカーに打ち込むことで正しい”考え方”を身につけることができました。


考え方×行動=結果

結果を出すためには、正しい考え方をもってアクションすることが重要です。
大学サッカー、4年間を通して身につけられた考え方は本当に価値のあるものであると感じています。

挙げるとキリがないですが、中でも大切だと思うことをまとめられたらと思います。


「壁を越えて成長する。」

成長するためには、苦しいことや辛いことがあるのは当たり前です。

苦しいとか辛いとか、そういった試練を越えた先にしか成長はなく、そのような壁に真っ向から向かっていくしかないということを知ることができました。


4年間サッカーに向き合う中で、逃げずに向き合い、100%以上を出し切ったときにしか成長はありませんでした。


蹴球部の先輩からこのような言葉を聞いたことがあります。


「何をすればいいかは、すでに自分がわかっている。」

プロになるために、厳しい練習が必要で、練習以外でも栄養管理、勉強、ケアなどが必要なことはわかっている。

わかっている人は多いが、わかっていてもできない人が多い。

それがほとんどの人がプロになれない理由であり、自分もそうであったと思います。


この4年間で、厳しい試練を越えた先にしか成長がないということが良くわかりました。


今では、壁が大きく、難しければ難しいほどありがたいと感じます。
その壁を越えた先の景色や、その先に待っている自分の成長がとても楽しみです。


「結果がすべて。」

サッカーという勝負の世界に打ち込んだことでこの考え方を身に染みて感じることができました。


サッカーの試合でも求められるのは結果です。
サッカーは、どれだけボールを綺麗に繋げたのかを競うスポーツではなく、ゴールを何回決められたかを競うスポーツです。

ゴールという目的のために、ボールを繋ぐという手段を選ぶわけで、一番大切なものはゴールであることから目を背けてはいけません。


結果は出なかったけど過程は良かったというのは、自己満足であり真摯に向き合っていないと思います。


人の期待に応えられる人は結果で応えられる人だと思います。
結果に真摯に向き合うことはとても難しいことで、それでもそれができる人が強くて頼りになる人だと感じます。


加えて、
結果に拘ることが、一番過程に拘ることにも繋がるということも学びました。


能力は全て備わっているものではなく発揮されるものです。
どれだけ練習をして技術を磨いたとしても、それを試合で活かせなければ価値はありません。

結果が出ないのであれば、能力がないということです。


結果は一番客観性のある正当な評価指標であり、結果に拘るからこそ、成長を正確に測れ、より過程にこだわりを持てると思います。


「準備がすべて。」

結果がすべてであり、その結果を出すためには準備が全てです。

結果をだすために大切なことは、そこまでの準備をどれだけ徹底できるかだけだと思います。


サッカーでも、当然、練習でできないことを試合ですることはできません。
試合までに、技術を完璧に身につけ、不安をなくしきり、自信をもって完璧な状態だといえるようにしておくこと。


常に完璧な準備をしておくことが大切です。


その準備をとにかくこだわり、徹底できる人が、結果を出す人であり、力のある人だと思います。


「まずは動く。」

動いてみないと何も始まらないし、何もわかりません。

考えることももちろん大切ですが、すでにある知識の枠組みだけではわからないことも多いです。
やってみて失敗をして学ぶしかないということを学びました。


自分はどちらかというと思考が先行するタイプだったと思います。


TOPチームにいるときに、ある選手から何度も「あと一歩寄せてみろ」と言われていました。
守備の際に、より相手によってボールを奪いに行けという意味です。

そのアドバイスを踏まえて考えても、自分の中では、”これ以上寄せたら抜かれてしまうリスクもあるし、既にベストの距離で寄せている”と思っていました。


今思うと、考えている暇があったら動いてみるべきだったと思います。


やってみれば、まだ知らなかった結果に繋がったかもしれない。
失敗したとしても、それによってベストな距離感を学べたかもしない。


既存の知識や経験の中での判断は、正しい場合もあるかもしれませんが、ほとんどの場合、自分自身はまだまだ未熟で、見えている範囲が小さいことが多いと思います。

判断材料を増やすためにも、行動し、失敗することから、学ぶことが必要だと理解することができました。


当たり前のことにも思えますが、何かと言い訳をつけて行動を怠ってしまう場合は多いのではないかと思います。


何でもやってみる。

そのために、圧倒的に行動量を増やす。


その大切さを学ぶことができました。


「不可能なんてない。」

サッカーをやる中で、毎日不可能なことを可能にしてきました。
何度も不可能なことを可能にする経験を通して、”不可能なんてない”と心の底から思うことができました。


これは、水戸ホーリーホックのGMである西村さんのお話で気づかされました。


サッカーをする良さの一つは、

”不可能なことを可能にする経験を得られること”

だと。


初めは、どういう意味かわかりませんでしたが、詳しく話を聞いてみると、自分も当たり前のように不可能を可能にする経験をしていました。


例えば、リフティングが10回しかできなかった時には、リフティングを100回することなど不可能だったと思います。
それでも、達成するための正しい努力をすることで100回でも、1000回でもできるようになりました。

サッカーでは常にその繰り返しでした。

正確なキックが蹴れるようになる。
勝てなかった相手に勝てるようになる。

できなかったことがどんどんできるようになる。


サッカーの経験を通じて、正しい努力をすれば、今は不可能なことでも可能にすることができると体と頭で理解することができました。


今では、不可能なんてないと本当に心の底からおもいます。


これから自分は、人生を通して、普通は不可能だと思われることに挑戦します。
それでも、実現するための方法を学び、時には自分で生み出し、人と協力し、希望をもって可能にしていきます。


「全ては自分。」

最後に、原点となる一番大切な考え方を学びました。

全ては自分次第であり、自分に矢印を向け続けるしかないということです。


他人や環境など変えられない定数となる部分ももちろんあります。

しかし、それでも自分ができることをやっていくしかないし、
自分と向き合うことから逃げてはいけません。

自分次第でなんとでもなるし、結局自分がやるかやらないか。


自分にとことん向き合って自分を信じて生きていきます。


最後に

最後にはなりますが、この4年間もそれ以前もたくさんの人に助けられ支えられて自分があると改めて実感することができました。

自分に関わってくれている全ての皆さんに感謝したいと思います。
本当にありがとうございます!

大学の4年間を終えて、ある程度用意されているような環境から飛び出します。

何もできない自分ですので、これからも助けてほしいし、支えてもらえたら嬉しいです。

自分も皆さんの力になれるように、少しでも皆さんが誇りに思えるようなことができるように、挑みもがいていく所存なので、これからも宜しくお願いします。

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