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石膏の影のつき方


 目の前の石膏像をデッサンしている。たまに書いてる場所から離れて見る。さらにたまに違う角度から見る。この違う角度から見た時の気づきの話。
 今描いているものの形をもっと立体的に把握するために、違う角度からも見るのだと思っていた。解像度が上げるためにみる。
 しかし、それだけではなかった。そのことに気づいたのは影の色をシビアに見ながら描いていたときだ。立ち上がって違う角度から見た時に、あれ、もしかして影の落ち方、色のつき方ってどの角度から見ても同じじゃないか!と大発見した。あまりピンときてない人も多いと思う。当たり前だ。光源の位置は変わらないのだから、視点がずれようがずれまいが、影は同じ位置に落ちる。でも、これに改めて気づいた時に、頭の中で正面から見た図と横から見た図が全くつなげられない私は、形を把握し、色を確認するものすごい手がかりを手に入れたと思った。固有色に置き換えると本当によく考えずとも当たり前の話をしている、赤いTシャツはどこから見ても赤いTシャツなのだから(光と影で見え方は変わるが)。
 絵画教室の先生に聞いてみると、「あー、でも鏡とか見る角度で映るもの違うじゃん。あと反射光とか。」と言われて、確かに金属とかも変わるわと愕然とした。この大法則は別に全てに使える訳ではないのかと膝から崩れ落ちたところ、「でもその気づきマジ大事、変化しにくいものもあるよね」とフォローしていただいた。
 どちらにせよ、二次元の絵を模写しているだけでは気づかないことだった。
 漫然と見ていて、あれ?と思う瞬間がある。ふと、当たり前のことを実感を伴い捉え直す瞬間は、何かを得た訳でもないのだが、ものすごく喜びがある。

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