子どもの懸命な背伸び~となりのトトロを見て~

となりのトトロの感想で「田舎の広い家で、リモートワーク、令和的なお父様素敵はあと」みたいな人がツイッターにいました。まあ、何言ってるんだ?というリプが多かったのですが、実際、となりのトトロを見ると、なんだか、さつきがかわいそうでかわいそうで仕方ない映画だな、と思いました。

ネタばれになりますが、まあ、あれけテレビでやってるから、多少いいでしょう。

さつきとメイの母親は入院しています。だから、父親とさつき、メイの3人暮らし。さつきは、風呂を炊いたり、朝ごはんやお弁当を作ったり、母親としての仕事もやっています。隣のおばあちゃんと初めて会ったときも、それはそれは丁寧なあいさつでした。常識をわきまえている、という意味でもあるでしょうが、それ以上に、自分が母の代わりにしっかりしなければならない、と思っていたのではないでしょうか。

メイが学校に来た帰りに、さつきは「部活は休むって言っておいて」と友達に言っています。メイを連れて帰らないといけなかったから、部活に行けなかったわけです。

たびたび、メイが何かしたら叱るシーンが出てきます。「ちゃんとして」とか「わがまま言わないで」とか、そういう”母親”的な台詞を言うのです。そこらへんも、大人として振舞おうとしていた。父親に傘も届けに行っていました。

病院から電報が送られてきて、本家から電話をした後、メイについ当ってしまいます。カンタの手前、毅然としていますが、おばあちゃんには「お母さんが死んじゃったらどうしよう」と不安を打ち明け、泣きます。父親は仕事で大学に行っているから、頼ることもできない。子どもは意外によく分かっていて、母親が意外に重い病気なんだろうということも察しているけど、それをメイの手前(父親が隠しているから、あえて聞いていないところもあるのかもしれません)、それを表にしていないのではないでしょうか。泣いてるお姉ちゃんの姿を見て、メイはかなりショックを受けたと思います。頼れる人だと、動じない人だと思っていたのに、そうではなかった。だから、トウモロコシを持って病院に向かったのでしょう。「ばあちゃんの野菜を食べれば病気もすぐよくなる」から。

おばあちゃんがサンダルを持って、念仏を唱えている。もう、メイは死んでいるのかもしれない、という恐怖。さつきにサンダルを差し出す手が微かに震えているように見えました。

しかしまあ、あの父親はなかなかになかなかですね。おそらくは、妻の病気やら何やらで引っ越しをせざるを得ないものの、大学での研究の線を捨てるわけにはいかなかった。だから、大学に通っているのでしょう。最初に病院に行く時に、田植えをしていました。私は詳しくありませんが、村の人総出で各家の田んぼを順々に田植えしていってたのではなかったかと思います。だとすると、引っ越してきたばかりとはいえ、田植えも手伝わず、のんきに出かける一家、という見方もできなくはない。まあ、村八分にはされてなさそうなので、そういう目では見られては無いのかもしれませんが。

父親は、メイを庭で遊ばせてて、どこか行方不明にしています。さつきが帰ってきて、お昼ご飯を食べてないことを思い出すくらい、熱中していて、忘れてしまっていた。その時にメイはトトロに出会ったんですね。

また、父親がいない間にメイは二度目の失踪をして、大捜索隊に出てもらうことになりました。さつきとメイがネコバスで病院に行ったら、のんきにお母さんと話していて。まあ、メイが行方不明であることを知らなかったのかもしれませんが、のほほんとしている。その時に、母親は、「さつきは無理しているだろうから」と言っています。

なんというか、年を取ったからか、さつきが懸命に背伸びをして大人ぶっている、そういう感想をもちました。父親は、おそらく、のほほんとした人なのでしょう。抜けている。その分、さつきの負担が多かったのでしょうね。

その意味で、ごりごりに昭和的な家だと思いますが。冒頭で「令和的お父さんで素敵はあと」という感想を持った人を見かけた、と書きましたが、どうしたらそんな感想になるんでしょう。不思議で仕方ないです。

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