転校生は公認会計士!

日本公認会計士協会は謎のアニメを作っています。

正直、声優さん以外、見どころは何もありません。竹達彩奈さんが主役をやっている他、脇役には名前を見たことある声優も入っています。でも、なんでこれを作ったんだろう?というのが正直な感想です。

というよりも、ちょいちょい間違ってるんですよね。このアニメ。少し挙げていきます。

「公認会計士は厳格に正しい数字を読み取り報告する、これが大きな社会貢献につながるの」

主人公、遠藤マイの台詞ですが、少し違和感を感じます。
『監査基準』によると、

経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明すること

です。大雑把に言えば、"経営者の作成した財務諸表が概ね正しいかを判断して意見を表明すること"です。そもそも「厳格に正しい数字を読み取り」とは、どこから「読み取る」のでしょうか。

「読み取る」という言葉は、

①読んで内容を理解する。
②表面に表れたことから,その背後にあるものを推し量る。
③計算機などで,文字・画像などを情報として認識する。

という意味です(三省堂 大辞林 第三版 )。

まず、③の意味では使っていないでしょう。①の意味だとするならば、何が書いてあるか知るということですし、②の意味でも裏の意味を読み取るということなので、"適正に表示しているかどうかについて(中略)判断"することにはなりません。

「正しい数字を読み取り報告」というマイの言葉は、逆で、"数字が正しいかを検討し報告"するのです。

まぁ、別の場面では「数字をチェックする」と言っているので、全体を通してみれば誤情報というわけではないのですが、ちょいちょい監査業務とコンサルティング業務が混ざっているところが散逸されます。
(一項業務(監査)と二項業務(コンサルティング)は同時提供できません。)

実は、今期の業績があまり良くなくて……今度の監査は少々甘めに見てもらえないかと。

妄想の中のケンタの台詞です。

いや、これは!!

粉飾しますから見逃して下さいって言ってるようなものじゃあないですか!!

経営者の誠実性に問題ありですね。監査リスクが高いです。下手すると監査契約解除の案件でしょう。

でも、きちんと調査をしたうえで、これからどうしていけばいいのか、一緒に考えることはできます。一緒に頑張りましょう!

「甘めに監査を」というお願いに断った後の言葉ですが、倫理規則に反する可能性があります。具体的には、独立性に問題が生じる可能性があります。

監査には指導機能があります。しかし、この指導機能は"経営判断に携わらない"程度であることが求められるようです。『独立性に関する指針』では、経営者の責任とそれを担う業務について、以下のように書かれています。

162項
経営者は、人的、金銭的、技術的及び有形・無形の経営資源を獲得し、活用し、管理することに関連した決定を行うことなどにより、企業を管理し、統率し、指揮することに責任を負っている。
163項
ある活動が経営者の責任の範囲にあるか否かは、状況により異なり、その決定には判断が必要である。例えば、会計事務所等が次の活動を行う場合には、経営者の責任を担っていると考えられる。
(1) 組織の方針及び戦略的指針を設定すること。
(2) 従業員を雇用し、又は解雇すること。
(3) 従業員の職務に関して業務を指示し、その責任を負うこと。
(4) 取引を承認すること。
(5) 銀行口座や投資を管理し、又は運営すること。
(6) 会計事務所等及びネットワーク・ファーム又はその他の第三者の助言のうち、いずれを実行すべきかを決定すること。
(7) 経営者に代わって、監査役等に報告すること。
(8) 一般に公正妥当と認められる会計基準に従った財務諸表を作成し、適正に表示する責任を負うこと。
(9) 内部統制を整備し、運用し、監視し、又は維持する責任を負うこと。

コンサルティング業務(いわゆる二項業務)ならば問題ないでしょうが、監査をやっている文脈の中なので、問題だと思われます。

なお、マネジメントレターというものはあります。監査を実施し過程で発見した事項を経営者に提出するものです。しかし、内部統制の不備や、会計上の問題点、監査上の不正誤謬や法令等の違反などについて記載するものであり、経営方針について記載することはありません。

そのため、この公認会計士は倫理規則違反で公認会計士協会から罰を受けることになるでしょう。

今月の売上が赤字だったら、来月黒字にするにはどうしたらいいのか

マイが監査業務について説明しているときに出てくる例え話なのですが、売上は赤字にも黒字にもなりません。"収入ー支出=黒字または赤字"だからです。

公認会計士には企業の不正を見抜くっていう大事なミッションがあるの

麻子がビルに入っていく公認会計士らしき人を見て、「ものものしいね」と感想を言ったのに対してマイが言った言葉です。

『監査における不正リスク対応基準の設定について』には、

本基準は、財務諸表監査の目的を変えるものではなく、不正摘発自体を意図するものでもない。

と記述されている通り、監査においては、不正を見抜くミッションはありません。"不正又は誤謬による重要な虚偽表示"を見抜く、ことは求められているでしょう。

転校生は公認会計士!

マイは公認会計士にあこがれているだけで公認会計士ではありません。タイトルがそもそも誤りです。

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