不二家の記事について

Yahooで不二家の業績についての記事が出ていました。

まず、不二家の成績ですが、第2四半期の成績をみると、前年度よりは悪いですが、経常利益まで利益となっています。

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なお、特別損失には、店舗休業による人件費・賃借料・減価償却費の振り替えである臨時休業等関連損失が136百万円あります。それを考慮しても、営業利益は黒字です。不二家全体で考えると、営業キャッシュ・フローもプラスですので、記事で煽るような窮乏にいるとは言えないでしょう。

記事中では、次の記載があります。

コンビニスイーツが脅威なのは大手の不二家も同じだ。コンビニスイーツに押され、同社の洋菓子事業は長らく苦戦が続いている。同事業の営業損益は03年3月期から直近の19年12月期まで全ての期が赤字で、売上高は19年12月期まで5期連続で減収となっている。

この文は洋菓子セグメントの業績なので、売上ではなくセグメント売上、営業利益ではなくセグメント利益とした方が誤解されないでしょう。セグメント情報を第2四半期報告書から引用します。

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業績予想の修正のIRでは「ここ数年苦戦が続いておりました 洋菓子チェーン店は4月以降回復傾向となりましたが、レストラン部門の売上が対前年同期比 67.9%に落ち込むなど各部門において新型コロナウイルス感染拡大の影響を 受け、前回予想を下回りました。」と、第2四半期報告書では「単体の洋菓子((注)洋菓子事業セグメントのうちの洋菓子)は(中略)既存店売り上げが前年同期を上回り、利益面では当第2四半期連結累計期間において前年同期の実績を上回ることができました」と記載されています。
不二家によれば、洋菓子事業のうちの洋菓子は徐々に良くなっている、という見解です。ただし、よく見せたい面もあるでしょうから、悪化はしなかった、という程度に読んでおくことにしましょう。流行病の一番大きい影響は、レストラン部門が受けたようです。

洋菓子事業がセグメント損失ですが、前年度からです。記事の中では、以下のように述べられています。

コンビニスイーツが脅威なのは大手の不二家も同じだ。コンビニスイーツに押され、同社の洋菓子事業は長らく苦戦が続いている。同事業の営業損益は03年3月期から直近の19年12月期まで全ての期が赤字で、売上高は19年12月期まで5期連続で減収となっている。また、不二家の洋菓子を販売する洋菓子事業の店舗の数は大幅に減っている。19年末時点で829店となっているが、4年前の15年末(986店)からは157店も減った。ここ半年は増加傾向にあり今年6月末時点で868店まで増えたが、それでもかつてと比べると少ない。

そもそもなのですが、セグメントで洋菓子事業が現れたのは平成22年12月期のことです。それまでは、「小売事業」「卸売事業」「不動産事業」「その他の事業」の区分でした。平成22年3月期以前は、小売事業のことを言っているのでしょうか?(平成22年に3月から12月に決算期変更をしています。)平成22年12月期は、9カ月決算なので、平成23年12月期以降の有価証券報告書から拾った数字を並べてみます。

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これを見ると、店舗数は一気に増加して、その後減少しています。そのため、記事で言及されている大量閉店は、好調だったものが悪化したというわけでもなさそうです。むしろ、広がりすぎたから不採算店を閉めているのでは?という感もあります。なお、平成26年4月にスイートガーデンを子会社化しています。その影響で、その年は店舗数が大きく増えているのでしょう。スイートガーデンを子会社化した時のIRでは、下のように記載されています。

当社は、スイートガーデンを子会社とすることにより、同社の約 500 の店舗と神戸工場を当社グループに加えることとなり、事業の規模を拡大させることができます。特に当社の店舗が少ない西日本地域の店舗数が増加することで、物流面を中心とした事業の効率化が図れます。また、店舗においては、両社の商品開発力を活かして品揃えを強化し販売力を高めることができます。生産面では、神戸工場と、当社の関西地域の生産拠点である泉佐野工場との連携を深め、両工場の生産効率を高めると共に、事業規模の拡大によって、当社の他地域の工場稼動率の向上を目指してまいります。

平成27年度から大きくセグメント損失が増えています。スイートガーデンの子会社化に伴い、固定費が増えて、それを回収できるだけの店舗売上が得られていない可能性があります。
ただし、それだと平成26年度のセグメント利益はあまり説明できません。平成26年度の有価証券報告書にはスイートガーデンの店舗を不二家店舗へ転換について記載されていないけれど、平成27年度の有価証券報告書にはスイートガーデンの店舗を不二家店舗へ転換について言及されています。そのまま読むならば、平成27年度にスイートガーデン店舗を不二家店舗への転換を大きく進めたのでしょう。とするならば、その影響なのかもしれません。もしくは、価格改定と消費増税があったようなので、その影響なのかもしれません。

固定費もかかっていますが、元々原価が高くて利益を出すのが難しい状態になっていたのが、スイートガーデンが入ったことでさらに利益を出しにくい体質になったのではないか?というのが個人的な分析の感想です。

ところで、不二家の過去の業績を並べてみましょう。

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平成18年3月期から数年、業績は一気に悪化しています。そして、平成20年3月期、平成21年3月期に財務活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスになっています。

不二家は平成20年に山崎製パンの子会社になります。資本業務提携による増資をしています。平成18年~19年にかけて、埼玉工場において社内規定の使用期限切れの原材料使用がありました。そのため、信用を失い、売上が大きく落ち、資金繰りが悪化したようです。そのため、山崎製パンが救済したのでしょう。

不二家は、この10年間で過去の不祥事からの信用回復と業績の回復を行ってきました。製菓事業は安定的に収益を挙げています。洋菓子セグメントに関しては、セグメント売上を大きくするために店舗を増やしていましたが、なかなかセグメント利益に結び付かない状態が続いていました。前年度からは、納品店というスーパー等の納入先が販売を行う形態での出店を増やしているようです。販売員の費用を削減し、固定費の削減(店舗数で考えると変動費ですが)を図っているのではないかと思います。

記事では、次のように記しています。

「ペコちゃん」でおなじみの不二家が赤字に転落した。2020年1~6月期連結決算は、最終損益が1億7100万円の赤字(前年同期は1億5100万円の黒字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収益が悪化した。

たしかに、流行病の影響で赤字にはなっていますが、『「ペコちゃん」の不二家が赤字に 大量閉店とのWパンチで苦境』という記事タイトルほどは危険な状態にはありませんし、百貨店や外食チェーンと比較して、流行病の影響は限定的だったと言えるでしょう。なお、資金的にも、借入も増えていませんし、現状は困窮していないと思われます。

タイトルも含めて、誤解を招く記事だと思います。

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