有報の感想 (株)文教堂グループホールディングス(2018年8月期)

(基本情報)

書籍・雑誌販売を目的として神奈川県川崎市にて設立。現在、文教堂・文教堂ホビー・アニメガなどを中心に書籍・雑誌・文具・玩具などを販売している。

継続企業の前提に関する注記(以下GC注記)が当期からついている。監査法人は監査法人ナカチ(平成28年11月29日就任。それまでは海南監査法人)

この決算で債務超過となる。現在、猶予期間入り。債務超過についてのIR

(感想)

継続企業の前提について

平成28年8月期になぜ注記していないだろう。個人的には、営業CFが3期連続で重要なマイナスであるし、親会社株主に係る当期純損失も三期連続でマイナスだから、注記しても良かったのでは?と思う。営業損失・経常損失に重要性がなかったことや、日本出版販売(株)との業務提携が結ばれたため営業利益を取れる可能性が高いと判断したからだろうか?

ただ、こういう将来予想も検討しなければならない項目は後からならなんでも言えるところはある。結果のバイアスが入ることで、その当時の判断をその時の気分でリプレイできないからだ。

当期、結果的に債務超過をGC注記をつける理由としている。ただし、説明には営業以下の損失・営業CFのマイナス・債務超過を理由としてあげているので、継続企業の判断としては、①利益、②営業CF(≒資金繰り)、③債務超過を設定の際の判断材料としている。

GC注記については、東電HDもあやしい。
東電HDは、原発事故の補償金額が見積もれないとして引当金計上していないが、引当計上したら確実に債務超過に陥るだろう。おそらく、政策的に見積もれないとしているのだろう。政府がこれ以上株式を保有できないから増資は不可能だし、上場廃止はかなり厳しい。そのため、政策的に偶発債務としている感がある。いっそ、国が全部負担してくれるから、東電としての債務はないと言ってしまえば良いような気もするが、そこは誠意を見せるためなのだろう。

なお、対応策として、収益改善と財務状態の改善を挙げている。

収益改善について

本社管理費の削減と店舗収益の改善を軸としている。

本社管理費はリストラクチャリング。おそらく、人件費はおそらく銀行の”指導”によってぎりぎりまで抑えられるはず。賞与引当金がないから、賞与はでない。しばらくは出てないだろうけど。給与自体も抑えられてるだろう。

店舗収益の改善については不採算店舗の閉店をしていくことをあげている。
そもそも、在庫金額がかなり大きい。それを考えると、売れない書籍を購入して滞留している可能性がある。商材の選別も必要なのではないかという気もする。

財務状態の改善について

内容としては、在庫の圧縮、資産の売却・賃貸、自己資本の増強、資金の確保である。

在庫の圧縮については、店舗閉鎖とネットや海外への卸売りをあげている。2018年8月期は1億7千万円の棚卸資産評価損を計上している。

資金の確保のために、金融機関からの借入金の返済のリスケ、筆頭株主である日本出版販売株式会社の仕入債務の一部の支払猶予の同意を得ている。

会社がやらなければならない事は、利益改善もそうだが、資金繰りの改善だろう。そうでないと倒産は時間の問題だ。ただし、GC注記の原因は債務超過であるから純資産の回復が急がれる。でないと上場廃止になる。
債務超過に対して今すぐやれる事は、増資だろう。日本出版販売株式会社はこれ以上投資するのだろうか?投資の失敗の傷が広がるだけの可能性もある。

資金繰りについて

キャッシュフローをみてみると、現金がどんどんと流出しているのが分かる。財務活動の流出は主に借入金の返済のようなので、おそらく、貸してくれるから借りたら返済が苦しくなったということだろう。土地も貸してくれた時に買ったものでは?まず、不要な土地を売却、有価証券も売却しないと資金繰りが厳しいだろう。銀行も回収できなくて土地をもらっても仕方ないはずだから、売却を許すのではないか(即返済に回させられるのだろうが)。売却益が出れば純資産の充当にもなる。(ノジマと日本電産の株はすでに当期売却したと思われ)

直近の営業CFが悪いのがかなり苦しい。第67期も仕入債務が増加(38億円)したためなので、支払がこれから来るだけだ。在庫金額がそこまで増えていないので、買い控えていたが、期末に仕入が増えたということか?3Qは138億円まで在庫金額は減っているため、期中は仕入を抑制していたのだろう。

これから起こりうるストーリーとしては、GC注記がついたことで支払いサイトが短くなり、急激に資金繰りが厳しくなるということだ。おそらく3ヶ月前後の支払いサイトが、例えばひと月になると、瞬間的に支払いが重なる。銀行は追加貸し出しはしないだろうから、それが耐えられるかどうか。さらに、仕入から売るまでの期間を早くしないと、支払が前倒しになって、回収が後回しになる。そのような中で在庫がはけないと厳しくなる。
さらに、借入の金利が高くなる可能性もある。もともと高いだろうが、GC注記がついてさらに高くなる恐れもある。社債の償還期限もせまっている。これはリスケが厳しいのでは?(そもそも可能なのだろうか?)
そして、従業員が辞めていくリスクもある。給料が下がり賞与も出なければ、少しでもいい条件の会社に移りたくなるのが心情だろう。退職金の負担は軽くしているのだろうが(退職給付引当金戻入益があるため)、いずれ新規採用の体力がなくなると、さらに人的リソースがなくなってくる。本屋は時代感覚も必要だろうから、若い血が入ってこないのは痛いだろう。

この1、2年は営業CFが悪くなる。切り売りする資産がまだあるため、それを売ってしのぐ。子会社も売る可能性はあるだろう。幸い、本は時間が経っても売れる可能性はある。欲しい人にリーチできれば。
不採算店舗がなくなれば、売上は落ちても店舗は利益を出せる可能性がある。あとは、管理部門のコスト負担をできるぐらいの利益が出せるかだ。管理部門の費用は減らせるのだろうが、それも限度がある。最終的には会社も言っている通り、収益力を上げてキャッシュを回収できる体制にするしかない。

個人的にはすごくお世話になっているから、頑張ってい欲しいと思う。

その他

棚卸資産評価損の注記が当期しかないのはなぜなのだろうか。今年度重要性が高くなったため?だとすると、過去評価損をすべきだったがしていない在庫もあったのかもしれない。なかったのかもしれないが。

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