新郎からの手紙

皆様、本日は僕たちの結婚式に来て頂いて、誠にありがとうございます。そして、美穂、僕と結婚してくれてありがとう。
僕は、この手紙を昨日の夜に書いています。書きました、ですね。今日は、友達と独身最後のパーティーをしてきました。パーティーと言ったって、久しぶりに集まって、酒を飲んで語り合っただけです。みんな、おめでとう、と言ってくれて、ケーキも用意してくれて、本当にありがとう。
でも、正直に言います。実は、祝われながら、すごくさびしい、というか、惜しい気持ちがしていました。
夜、家に帰ってきて、本当にこのまま結婚していいんだろうか、と考えてました。喜ばしいことだって頭では分かっているんです。美穂と結婚できてすごく嬉しいし、早く結婚式の日が来ればいいと思っていた。でも、それと同時に、なんとも言えない不安が胸の中を渦巻いてきて。これがマリッジブルーってやつなのかな、って思いながら、ゆうきに電話して、ゆうき、ド深夜に悪かったな、話を聞いてもらって。それで、考えたんです。
たぶん、僕は新しい生活に飛び込むことが怖いんだと思う。変化することが怖いんだと思う。独り身の時は、僕さえ良ければなんでも良かった。でも、これからは、美穂のことを考えて、守らないといけない。子どもができたら、もっと守るものが増える。僕はその責任に耐えられるほど大人なのだろうか、なんて思います。お父さんお母さんの話、僕が生まれて、殺さないようにがんばろう、と思って育ててきたってあの話、今になってしみじみ思い出します。お父さんとお母さんもこんな不安を抱えてたのでしょうか。ここまで育ててくれてありがとう。
お義父さん、お義母さん、美穂を産み、育ててくれてありがとうございます。お二人の温かさが、美穂のやさしさにつながっているんだと思います。僕は、美穂との結婚に、希望と不安が入り混じった複雑な感情でいます。それはきっと美穂も同じだと思います。でも、だからこそ、二人は進んでいけるんじゃないか、とも思うのです。今の安泰よりも、より大きな未来の幸せをつかみたいのです。どうか、若い二人の門出を見守っていて下さい。
美穂。愛してます。臆病で情けない僕だけど、美穂のことを世界で一番愛しています。僕を選んでくれてありがとう。僕と結婚してくれてありがとう。僕と人生を共にする決意をしてくれてありがとう。昨日、ゆうきとの電話の後に話したけど、もう一度言うね。僕は美穂がいてくれるから、僕らしくいられるし、この不安も、美穂がいるから乗り越えられる。美穂。愛してる。ありがとう。本当にありがとう。僕は美穂と結婚できて幸せです。一緒に幸せになろう。そして、温かな家庭を作ろう。これからもよろしくお願いします。愛してるよ。

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