IFRSはどうなるのか 『会計グローバリズムの崩壊 国際会計基準が消える日』を読んで

田中弘先生の『会計グローバリズムの崩壊 国際会計基準が消える日』には、「ブレクジットがなされると会計基準はどうなるか」という話が、国際会計基準の成り立ちを踏まえて書かれています。
簡単にまとめますと、

イギリスにおいて時限立法的に採用された時価会計があった。しかしイギリスでは有用性に欠けるとして本採用されなかった。国際会計基準はその時に失敗した会計基準がベースにある。
ブレクジットがなされたら、もともとイギリスは採用しなかったものだから、イギリスが独自の基準を作るだろう。そうすると、コモンウェルスの国々も国際会計基準から離脱する。そして国際会計基準はヨーロッパ大陸の基準になる。しかし、大陸の国家も一枚岩ではないから(例えばドイツとフランス)、歩調が乱れてバラバラになっていくのではないか。そうすると、大陸の国も独自の会計基準を採用していくようになっていくだろう。そうして国際会計基準はヨーロッパの基準でもなくなり、消えていく。

先日EU議会でも可決されたことで、ブレクジットは確実なものとなりました。田中先生の言説の通りに進むならば、国際会計基準は消滅に向かっていくでしょうし、日本で国際会計基準を採用した会社は日本基準に戻るのでしょう。会社にしても、採用するメリットがなければ採用しないからです。しかし、これまでの日本基準での原価主義に戻ることはないと思います。元に戻れないくらい、会計基準が変わってしまったからです(もともと、日本の会計基準はつぎはぎな部分もあるのですが)。

会計は国家の独自性にも寄与しています。国家の徴税とも絡むこともあって、国家と会計は政治的につながりがあります。その意味では、グローバルスタンダードな会計基準というのは、EUがひとつの集合体になり切れていないのと同じように、夢物語なのかもしれません(現実に、IFRSを採用している国は多くはカーブアウトしているようです)。特に、近年はリベラルの反動で保守が台頭していることから、排他的な会計基準となっていくと思います。

仮に、国際会計基準がEUの基準でなくなり、消えたとしましょう。もしかしたら、国際会計基準は中国もアドプションしているので、中国基準として復活するのかもしれないと、個人的には思います。
会計史において、会計の中心は覇権国家です。中国が本気で覇権国家を目指すのならば、米中の間で会計戦争が起こると思います。そして、それはそのまま米中経済戦争と言えるのではないでしょうか。

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