期待値

引当金と偶発債務を同等に扱おうというプロジェクトがIFRSの会議であったようで、『会計基準の考え方』に書かれていました。

そもそもですが、日本の企業会計基準注解18では、評価性引当金と負債性引当金が説明されますが、これは収益費用アプローチから説明されています。IAS第37号では、資産負債アプローチに拠っていることもあり、負債性引当金のみ説明されています。日本の現行の基準も、評価性引当金は貸倒引当金だけで、これも金融商品の基準に含まれているので、注解18に拠っているかと言われると微妙なのだとか(なお、かつては、評価性引当金として減価償却引当金なんかがありました)。

負債としての定義を満たす以上は測定額を付すべきではないか、という意味で、「期待値」という単一の測定方法で計算できるのではないか、と考えられていたようです。なにより、偶発債務をオフバランスせずオンバランスできる。東電が偶発債務で賠償金をオフバランスしていますが、期待値の計算だと、これを何かしらのせないといけないことになるのでしょう。

蓋然性も、期待値を用いる場合は考える必要が無くなるため、オンバランスになるものが増えるという事になるようです。

しかし、期待値は計算が難しいし、それが正しいことも分からない。何度も繰り返す取引にかかるもの、受注損失みたいなものなら分かりますが、訴訟の期待値と言われても分からない。

期待値というのは、まさに未来予知のようなもので、それで会計が計算されていいのかどうか、というのはあります。田中弘先生の、「IFRSは金融のための(M&Aのための)会計」というのがなんとなく思い出されます。企業の売却価値、特に負債がいくらなのかをはっきりさせたい、という考え方です。

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