有報の感想 (株)ビックカメラ(平成30年8月期)

(基本情報)

創業者である新井隆二氏が営業していた会社(株)高崎DPセンターのカメラ販売部門が大元の流れ。この会社の東京支店(池袋)を、昭和55年に設立された(株)ビックカメラが引き継いで、店舗運営を始めた。

その後、家電やパソコンなどにも進出。ソフマップ・コジマなどを買収している。

日本BS放送(株)も子会社としており、チャンネルとしてBS11を保有している。

(感想)

大株主について

(株)ラ・ホールディングスが第三位の大株主となっている。創業者の資産管理会社だろうと思って調べたら、このような記事が。

ラ・ホールディングスがビックカメラの第2位の株主に
体育会系なムードが面白い!ビックカメラの株主総会に行ってきた

仮に(株)ラ・ホールディングスの持ち株だけだとしても1億円を超える配当が資産管理会社へと支払われる。源泉を除いても8千万円超。ものすごい。

事業の売上割合について

生産、受注及び販売の実績をみると、品の区別売上高が記載されている。これをもとに表を作成してみる。なお、セグメント情報は注記していない。

構成比をみると、割合が大きいのは携帯電話である。意外な気もするが、家電量販店での売り場も大きくなっているし、(株)ラネットが携帯ショップを持っている。

主な事業の売上推移は次のグラフの通りだ。

家電電化商品と情報通信機器商品が主要な売上となっている。伸びている分野は、家庭電化商品とその他の商品だ。

経営環境及び会社の対処すべき課題の中で、「インターネット通販、インバウンド事業、法人事業、非家電事業、住設事業、株式会社ソフマップにおけるリユース事業を成長領域と位置づけ」ているが、分野が多くていまいちよく分からない。家電は長期的には成長分野ではないとみているのだろうか(インターネットに含めている?)。

まず、非家電事業を挙げていることを考えると、家電についてはそれほど伸びないと考えているのだろう。家電における需要があるのは主にインバウンドであると思われる。しかし、爆買いと言われた中国人の購買行動も少しづつ落ち着いているという見方もある。また、中国は外国への資金持ち出しが年々厳しくなっているようなので、インバウンド需要は減少傾向となるのではと思う。その他の地域、例えば東南アジアや中東のインバウンド需要が増える見込みがあるのだろうか?

近年、玩具専門店のビックトイズ、化粧品や理美容家電等を中心としたビックカメラセレクト、酒類販売のビックカメラリカーを展開しており、より専門性の高い店舗運営を目指そうとしている。専門店のほうが、店員の専門的知識は要求されるため、育成につながるように思える。
しかし、トイザラスが破綻したように、玩具は少子化による需要の減少とインターネット店舗の影響による競争の激しい分野であると思われる。玩具が生き延びるためには、対象となる消費者層を拡大する必要があるだろう。例えば、高齢者の健康促進のための玩具といったものが考えられる。子どもや孫とできるものならなお良い。例えば、任天堂のWiiは家族みんなで使える玩具として、業界の拡大に大きく寄与した。
理美容や酒類も競争が激しい分野であるように思えるため、大きく伸びるとはあまり思えない。

法人事業は通信機器などだろう。働き方改革のためか、スマートフォンやパッドを社員に支給して業務効率を上げる運用を行っている会社も出てきているし、その流れはしばらく続くように思う。法人受注は金額としても大きくなるし、継続契約が見込める。低価格のプランとして、少し古い世代の機種を使用してもらうという方法もある。

おそらく、物品販売には二つの軸があるのだろう。1つは上の商品別。もう1つは実体店舗とネット上の仮想店舗というくくりだ。統合ECシステムへの投資が翌年度15億円を予定している。当期もソフトウェア増加額が30億円(個別決算)である。ビックカメラのサイトを見ると、多くの種類の商材を扱っていることが良く分かる。

ビックカメラ.com

会員登録もできるようになっており、いずれはより個々人の好みを反映できるようなサービスを提供するようになるのではないかと思う。

その他

勘定としておもしろいと思ったのが「番組勘定」。日本BS放送(株)の番組制作費であって、未放送分が棚卸資産として計上されているのだろう。
番組制作費は長期に渡り多額の場合であって原価が見積れる場合には工事進行基準を用いるのだろうか?

ちなみに、ビックカメラ事件というものがある。
はしょって書くと、資産の流動化に関する会計処理について課徴金納付を命じられたが、これに対して株主が任務懈怠を訴えたものであり、判決は任務懈怠には当たらないというものであった。会計処理の適法性と課徴金納付に関する経営判断、取締役等の職務執行が違法であったからと言って即ち任務懈怠にあたるわけではないという点で有意義な判決とのことだ(『会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す』(弥永真生))。

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