第2回 会計とは何か① 記録すること

会計の定義

前回、これから何を書いていくかを書いました。具体的には、会計とは何か、会計で報告される書類、そして貸借対照表と消費計算書について。これを書いていく、としました。
今回から、数回に分けて、会計とは何か、について考えていきます。

早速ですが、『財務諸表論の考え方 ー会計基準の背景と論点ー』(田中弘)に書かれている「会計とは何か」の定義を書いてみます。当然、いろんな論者によって、会計の定義はさまざまありますが、ひとまずはこれを使います。

会計とは、経済主体が営む経済活動とその結果を、複式簿記のシステムを使って貨幣額で測定し、これを伝達することをいう。

これだけ読んでもよく分からないと思います。私なりにざっくり言うと、会計は取引を記録し、財産と儲けを計算して、報告することです。そして、記録するのに複式簿記を使います。いわゆる簿記です。簿記という言葉と会計という言葉がごっちゃになっている人もいると思います。記録するための言葉が簿記で、簿記で記録されたものを報告するのが会計です。

晩ごはんは何ですか?

突然ですが、昨日の晩ごはんは何でしたか?1週間前は何をしていましたか?1か月前に何を買いましたか?
人間は忘れる生き物です。記憶には、短期記憶と長期記憶があります。短い時間しか覚えていられない記憶と、長い間覚えていられる記憶です。実は長期記憶は容量が少なく、覚えるのにエネルギーをたくさん使います。だから、何でもかんでも覚えていられるわけではありません。忘れてしまう。
では、忘れていく私たちは、どうしたら物事を覚えていられるのでしょうか。
頑張って覚える、という方法もあります。歌は覚えるのに便利なツールでした。ですが、それには限界がある。なので、外部の力を頼ります。私たちは、メモをすることで、情報を保管しておくことができます。私たちの日常のメモとして分かりやすいのは日記でしょう。日記を書いていたら、昨日の晩御飯が親子丼だったとすぐに分かるし、1週間前はすき焼きを食べたと分かるし、1か月前にまよのいぬTシャツを買ったことも分かります。細かく書いていなくても、思い出しやすくなる。私たちは、記録をすることで、記憶を保存しているのです。ことばは本に保存され、音はCDで保存され、映像は写真で保存されます。本や、CDや写真と同じように、会計は記録の保存しています。会計が記録しているのは何か、というと経済活動です

経済活動とは何か

例えば、お店でパフェを食べに行きます。友達と映画館でお金を払って映画を見る。コンビニで食べ物を買ったり、本屋でマンガを買ったりもする。推しちゃんのチェキを撮りまくったり、アイドルのライブでオタ芸を打ったりする。

私たちは、こうした日常生活での行動をおこなっています。そして、会社も同じようにこうした行動をしています。正確にいうと、会社で働いている人がいろんなことをしているのですが、まあ、会社のためにやっているので、会社がおこなっているとしましょう。そういった会社の行動、それを経済活動といいます。会社はたいてい商売のために何かを行うので、商売での取引と考えておけばよいと思います。

お店はパフェを提供してお金を受け取ります。映画館は、設備を整えて、お金をもらって映画を流します。コンビニや本屋は物を売っていますね。裏では、売り物を買ってくる、つまり仕入れをしている。仕入れ先では、食べ物を作っている工場がある。工場には機械もあります。機械もどこかの会社が作って、工場に売っています。

いろんな会社が商売で取引をしている。経済活動をしている。しかし、私たちは忘れてしまうから、どんな経済活動をいつ行ったのか、忘れてしまいます。だから記録をしたい。その記録の方法が簿記なのです。

複式簿記ができたのは、中世イタリアと言われています。1200年代から1400年代に発展していきました。簿記ができるまでは、別の方法で記録していました。例えば動物の骨に傷をつけて。例えば粘土板に模様をつけて。こうした記録は次第に複雑になっていき、何を持っているかが記号による記録となり、やがて文字になっていくのです。

簿記以前についての会計と記録については、別のnoteでもう少し詳しく書いているので、よろしければ、そちらもご覧ください。

経済主体、経済活動とその結果、簿記

最初の定義に戻りましょう。

会計とは、経済主体が営む経済活動とその結果を、複式簿記のシステムを使って貨幣額で測定し、これを伝達することをいう。

商売をしている人は、商売のためにいろいろな取引をします。これが経済活動であると、先ほど説明しました。

定義では、主語、主体は経済主体となっています。行為者と言ってもいいですね。経済主体とは平たくいえば会社です。個人事業主も含まれます。何かしらの商売をしている組織や人、とでも思っておけば大丈夫です。

経済活動とその結果、つまり、取引をしてどうなったのか、これを記録していきます。この記録は、複式簿記という方法で行われます。いわゆる簿記ですね。

最初に、記録するための言葉が簿記で、簿記で記録されたものを報告するのが会計という話をしました。簿記では、仕訳と呼ばれる記録法で取引を1つ1つ記録していきます。これを集計して決算書という形にします。詳しい話は、後々書いていこうと思いますが、一般的に「簿記の勉強をする」といって教科書を買う場合、簿記検定を受ける場合、勉強するのは、この複式簿記という記録方法になります。

ここまでで、定義のうち「経済主体が」「営む経済活動とその結果を」「複式簿記のシステムを使って」というところまで説明しました。

かみ砕いていうと、経済主体は商売をする組織や人でした。まあ会社ですね。経済活動とその結果は、商売上の取引とその結果です。これらを複式簿記という方法で記録、集計していきます。なので、本当に大雑把に言うと、「商人の行動記録」を複式簿記というフォームに書き込んでいる、といった具合になります。まあ、ある種の日記のようなものです。


ひとまず、今回はここまでにします。次回、定義の中の「貨幣額で測定」すること、「伝達」することについて考えていこうと思います。

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