有報の感想 朝日新聞 2020年中間期

朝日新聞の成績が悪い、というニュースがありました。

朝日新聞の個別決算を見てみたいと思います。

当中間貸借対照表(一部)

まず、投資その他の資産の貸倒引当金が増えています。引き当てる資産は、株式かその他資産なのですが、どちらなのかは不明です。

また、繰延税金資産が全額取り崩されております。税効果会計の分類が5に変わったのでしょう。中間決算で分類が変わるということは、それほど影響があったということなのでしょうか。分類5に該当するのは次のいずれの要件も満たした企業です。

過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生じている。
翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。

これまでの決算においても、重要な欠損金が出ていたということでしょうか。つまり、過去から見た目以上に良くなかったというのでしょう。

当期純損失の多くは、繰延税金資産の取り崩しが原因ですが、営業損失なので、それ以前に経営自体が悪いのでしょう。経常、税前も損失になっております。なお、前年度も営業損失でしたが、営業外費用が少なく、特別利益が大きかったため、経常利益と税前利益でした。

当中間損益計算書

当期の営業外費用は借入金の支払利息が大きくなっていることで大きくなっています。前期の決算においては、特別利益は固定資産売却益と抱合せ株式消滅差益となっており、これらが当期はないまたは小さいと思われ、当期の特別利益が小さくなっています。

前年間損益計算書

なお、固定資産は土地の売却益が大きいようです。もしかしたら、昔々から持っていた土地が含み益を抱えていたのかもしれません。

なお、年度決算においては営業利益となっているので、下半期において大きい収益があるのでしょうが、今回は見ません。

前期と前々期、早期割増退職金が出ています。おそらく、リストラをしているのでしょうが、2年連続で出ているので、かなりの人員整理に入っていたのでしょう。

探すと、上記の記事がありました。

前年間貸借対照表(一部)

前期に100億円の借入金があったためでしょう、金融費用が多くなっています。

全体として、個別決算としては、相当に厳しい決算となったといえるでしょう。とはいえ、まだ純資産が厚いので、すぐにどうこうとはならないでしょうが、今後の企業運営次第だと思います。ただし、前期の有価証券報告書を見ると、朝日新聞の発行部数はおよそ7%減少しています。

これが改善されないと、固定費の回収に支障をきたすことになるでしょう。しかし、紙媒体は人口減とネット媒体の伸長から、全体のパイは減っていくでしょう。そのため、別の収益の柱を見つけることも方針としてはあり得るのかもしれません。
とはいえ、グループ会社が多いので、そちらで稼いでれば問題ないのでしょうが。なお、現状は(連結では)メディア・コンテンツ事業に次ぐものは不動産事業のようです(約10分の1の売上ですが、利益はこちらで稼いでいるようです)。

この中間決算で、繰越利益剰余金はマイナスになりました。しかし、特別積立金が大きいので、利益剰余金はプラスとなっています。こちら、前年の株主総会招集通知によれば

言論・報道機関としての経営基盤の強化、及び事業展開に備えるための内部留保の充実等を勘案

という理由で積み立てているようです。今年度に配当を行う場合、配当規制には引っかかりませんが、特別積立金の目的外使用になりうるのではないでしょうか。どうされるのでしょうか。まぁ、株主がいいと言えば何でもいいのでしょうが。

ところで、株主に上野姓が複数いらっしゃいます。どういう関係の人なんだろう?と思ったら、創業家一族のようです。また、香雪美術館も株主で、こちらは共同の創業者だった村上龍平の収集品をもとに作った美術館なのだそうです。

これを見る限り、創業家一族は配当を求めるでしょうから、安定的に配当を行うことになるでしょう。当別積立金も取り崩す場面があるかもしれません。

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