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市原市南部加茂地区のコアコンピタンス

0.はじめに

著者は、2021年度前期に開講されたフェリス女学院大学国際交流学部国際交流専門科目『プロジェクトで学ぶ現代社会』にて、千葉県市原市南部南総・加茂地区の抱える過疎化問題や、現在実施されている政策について学んだ。本noteでは、学んだことを基に、今後の市原市南部加茂地区での政策を提言する。流れは、1.市原市の概要、2.市原市の抱える課題、3.市原市の施策~SDGs未来都市と逆開発~、4.観光以外の逆開発の価値、5.提案する政策、6.おわりにといった順で展開する。

1.市原市の概要

千葉県市原市は千葉県の中央部に位置し、千葉県最大の面積を誇る市である。

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最新の国勢調査によると人口は約27万人で、これは茨城県水戸市や、中核市である新潟県長岡市とほぼ同規模である。

市原市は大きく北部地区と南部地区に分けられる。北部地区は京葉工業地域の一部で、国内最大のコンビナートがある市の中心地だ。人口の多くは北部地区に住んでいる。南部地区は、養老渓谷が有名な自然豊かな土地である。過疎化が問題になっているのも南部地区であり、大都市である北部地区と過疎地である南部の格差が問題になっている。

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2.市原市の抱える課題

今回取り上げる市原市の抱える課題は2つある。1点目は、前述した北部地区と南部地区の格差だ。元々第一次産業が盛んであった南部地区は、工業地域として開発された北部地区に反し、開発がされてこなかった地域である。以降は養老渓谷を中心とした観光地という側面が多く取り上げられてきた。第一次産業の衰退に伴い人口は減少し、現在南総地区や加茂地区は限界集落と化している。2点目は、高校生以上の学生の外部流出だ。市原市にはスポーツや学習面などで強い訴求力を持つ高等学校以上の学校がなく、学生は高校進学を境に市外へ流出する。大学進学や就職も東京都内の学校、会社に就く場合が多く、市内に戻ってくる若者は少ない。市原市の産業はコンビナートが主力であるため、特に若い女性の定住者はかなり少なくなっている。

課題を整理すると、市原市は
①南部地区の強化
②若年層の呼び込み

が必要であると言える。

3.市原市の施策~SDGs未来都市と逆開発~

現在市原市では、SDGs戦略に力を入れている。「SDGs のシンボルとなるまち」の実現を目的とし、5つのまちづくりの柱を元にした取り組みを行っている。5つの柱は、
①産業と交流の好循環が新たな価値を創るまちへ
②つながりと支え合いがひとと地域を健康にするまちへ
③ひとの活躍と豊かな生活を支える安心・安全なまちへ
④子どもたちの輝き・若者の夢・いちはらの文化を育むまちへ
⑤ひとが環境を守り活かすまちへ
である。

市原市_自治体SDGsモデル事業概要

この取り組みが評価され、2021年5月には千葉県の自治体で初めてSDGs未来都市の認定がされたほか、同時にSDGs未来都市の中でも特に先導的な取り組みである自治体SDGsモデル事業にも選定された。

関連して、市原市南部地区の小湊鉄道によって実施されている逆開発について述べる。逆開発とは、駅のアスファルトをはがし木を植えるなど既に開発された土地を森に戻す活動である。現在養老渓谷駅や月崎駅前でその活動が行われている。里山と駅を繋ぐことでより美しい景観や観光地としての更なる価値獲得が期待されている。

4.観光以外の逆開発の価値

逆開発は、観光地の強化だけでなく、復元生態学の観点からも価値のある事柄だと考えられる。復元生態学とは、生態学の一種であり、人間活動などによって撹乱を受けた生態系・個体群を復元することを目的とした研究分野である。保全活動として有名なものにビオトープが挙げられる。

自然再生活動は全国各地で行われているが、小湊鉄道の逆開発事業のように人工物を撤去して意図的に自然に返す試みは行われていない。

5.提案する政策

以上の点に着目し、養老渓谷ないし養老渓谷駅周辺を生態系の研究地区として売り出すことを提案する。市原市は東京から近いので、都心にある大学が研究のために訪れやすい点で適している。それによって関係人口の増加が見込まれるほか、小湊鉄道側にも利用者が増えるというメリットがあると考えられる。市原市が力を入れるSDGsの観点から見ても、環境保全と地域課題解決を結びつけているため既存の政策と方向性が一致している。また、逆開発の状況によっては、将来的な研究施設の誘致も検討される。研究施設の誘致は、大学生を中心とした若年層を市原市に呼び込むきっかけになると考えられる。

6.おわりに

本授業では、コアコンピタンスという言葉がキーワードとして多々用いられた。コアコンピタンスとは、他の企業や団体には真似できない強みのことである。過疎地域や田舎は高齢化、人の距離の近さ、豊富な自然など画一的な視点でとらえられることが多い。その中で市原市南部加茂地区の持つ他にはない強み、コアコンピタンスは逆開発だと著者は考えた。逆開発は、更なる市原市の魅力強化と課題解決の鍵である。逆開発が今後さらなる発展を遂げ、市原市のみならず地方の課題解決モデルとなることを期待している。




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