アンダーカットが大きくてつらいよ、、というパーシャルの印象方法のヒント💡

《前置き》(めんどくさい人は読み飛ばして)
クラウンブリッジの印象のように、アンダーカットのブロックアウトを寒天でやればいい、というような方法が使えないパーシャルデンチャーの印象。
残存歯がフレアーアウトしていたり、歯肉退縮を起こしていたり、顎堤のアンダーカットが強かったり、、

でも、そんな時でもアルジネート印象なら何とか採れますよね。
それは弾性ひずみが大きくて、アンダーカットを容易に通過できるから。
でもアルジネートの欠点は、簡単に言うとシリコーン印象材と比べて、永久ひずみが大きくて寸法精度が悪く、表面粗さが大きいこと。
アンダーカットが大きくトレーの撤去が困難になりそうだけどシリコーン印象をしたい!という時にはどうしたら良いのか?

かつてパーシャルの医局員時代、私は顎顔面補綴科にも所属していました。腫瘍などで顎顔面領域の組織を失い欠損部が上顎洞や鼻腔に及ぶと、欠損部には複雑な形態のアンダーカットができてしまいます。
上顎洞や鼻腔に付近には脆弱な粘膜部分もあるため、シリコーン印象材を安易に用いると、撤去時に粘膜を引き裂いて出血、ということもあり得ます。よって、そのような欠損部の印象に昔から用いられてきたのは、Waxやコンパウンド 、アルジネートでした。
しかし、より精密に、かつ安全に欠損部形態を印象したいという思いから、所属講座の教授と指導医と共に新しい印象材の開発を目指しました。

《研究していた印象法》
弾性ひずみがアルジネートと同程度であり、永久ひずみや寸法精度がシリコーンと同程度であること。
そんな印象材にするために、「シリコーン印象材に白色ワセリンを混ぜる」ということを試みました。(印象材のメーカー研究者の方からの提案で)
なぜどうしてワセリンなの、という話を私が詳しく解説することはできないので、すみません、、
(すごく簡単に言うと、ワセリンのような油分を入れることでシリコーンが弱くなり千切れやすくなるということでした。)

《実際の印象方法》
⚠️ここから先に書くやり方を患者さんで行うのはあくまでも自己責任です⚠️

用意するのは、
★フュージョンIIエクストラウォッシュ(GC)
★白色ワセリン
★秤
★大きめの紙練板、スパチュラ
です。

重量比でフュージョン : ワセリン=2.7 : 1になるように計量し、練和後にトレーに盛り付けて、メーカー指示通りの硬化時間経過後、トレーを撤去します。

《後書き》
(私とGC社の間には何の関係性もありませんし、GC社の回し者でもありませんので悪しからず。笑)
物性試験の結果、ワセリン混合の印象材はアルジネートと同程度の弾性ひずみを有し、シリコーンと同程度の永久ひずみを有していました。
再線再現性については印象材の基準をクリアしていますが、油分により表面荒れが若干起きるため、クラウンブリッジの印象には向きません。
顎顔面補綴学会でこの印象法の研究発表をし、論文も書き、試作品を作るところまで行きましたが、残念ながら製品化には至りませんでした。
(研究の詳細を知りたい方は論文検索でどうぞ)
材料学、補綴学の分野からの突っ込みどころは色々とあると思いますが、、
ご質問のある方はお待ちしてます!
読んで頂きありがとうございました😊









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