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兵書『孫子』ー君は戦争を知っているか?⑨

 第三「謀攻編」の二回目です。

【本文書き下し】
 故に上兵は、謀を伐つ。其の次は、交を伐つ。其の次は兵を伐つ。其の下は城を攻む。 
 攻城の法は、已むを得ざるが為なり。櫓・ふん轀(ふん=車+賁)を修め、器械を具すること、三月にして後に成る。距いん(いん=門+西+土)また三月にして後に已はる。将、其の忿りにたえずして、之に蟻附し、士の三分の一を殺して、而も城の抜けざるは、此れ攻の災なり。
 故に善く兵を用ゐる者は、人の兵を屈し、而も戦うに非ざるなり。人の城を抜き、而も攻むるに非ざるなり。人の国を毀ちて、久しくは非ざるなり。必ず全きを以て天下を争う。故に兵は頓(つか)れずして、利を全くすべし。此れ謀攻の法なり。

【現代語訳】
 だから上の戦争は、はかりごとを伐つことである。その次は、外交関係を伐つことである。その次は、敵の軍を伐つことである。その下は、敵の城を攻めることである。
 城攻めという方法は、やむを得ずするためである。櫓(やぐら)や城攻めの四輪車を用意して、(城攻めの)器械を揃えるのは、三ヶ月の後に完成し、敵攻めのための土塁は、さらに三ヶ月のちに作り終わる。将軍が、完成を待つ間に)忿怒を抑えられず、城に兵を蟻を付けるように一斉攻撃し、兵士の三分の一を戦死させて、城を抜けないのは、これこそが攻めの災いである。
 このため、上手く軍隊を動かす者は、人の兵を屈服させ、しかも戦うのではない。人の城を抜いても、攻めたのではない。人の国を壊しても、長くいることはない。必ず無疵で完全であることで、天下を争う。
 このように、軍は疲弊せずに、利益を完全に手に入れるべきである。これがはかりごとで攻める方法である。

☆評釈☆
 直接、城攻め(現在なら都市爆撃?)する前に、謀攻せよ、という。
 城攻めするには準備に時間がかかり、しかも、準備を待っていられない将軍や軍部が城攻めをして、城が落ちる前に、味方の兵士をたくさん殺してしまう。

 城を直接攻撃に至る前にすることがあるだろう、と主張しているのだろう。1、敵の謀略をやっつけ、2、外交を攻撃し、3、軍を伐つ。城を攻めるのはその後だと。
 中国の城は、城壁の中に町があったので、城攻めするということは、要は一般市民を攻撃するということになる。
 一般市民は城内の町から逃げ損ねたのなら、生き残るために必死になるので、包囲されたが最後、何でもするだろう。
 ここで「城を攻む」と「城を抜く」が使い分けられているのだが、最初「城を抜く」とはどういう意味か分からなかった。
 が、攻めた後、居抜きで取ってしまうという意味ではないか。
 軍を伐つのと城を抜くのとを別々に述べているのは、軍隊と原野で戦うのと、人々の住まいである城を取ることとの違いから来ているのだろう。

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