【再考】シャルルの性別疑義
※fusetter(2023.4.9)再録。
本記事は2021年に執筆した「【考察】根地黒門と掃除番とシャルル」の内容の一部を再構成したものです。
当時の内容を改めて精査し、補足や修正を加え、より読みやすくシンプルにしました。
ただし、シャルル女性説は詳細を説明すると前提知識と解説が膨大となるため、今回はあくまで簡易版となります。
予めご了承ください。
シャルルの性別を女性と疑うことについて、劇中劇に登場する役がそのままジャック=男性、ジャンヌ=女性ではない前例が既に存在することが一つ前提としてあります。
JJ1周年に公開されたSS『ハッピー・アニバーサリー』(以下、1stアニバSSと呼ぶ)において、根地が本来は男性である歴代の玉阪比女彦の一人をAJとして舞台に登場させているのです。
※1stアニバSSはJUMP j BOOKSの公式noteにて現在も無料公開中。
加えて、この1stアニバSSに登場する比女彦はゲーム内の情報と照合することで、比女=ジャンヌとして過去に活躍していたらしい玉阪志木年と推測できる箇所があります。
※歴代比女彦についての詳細は下記を参照
https://note.com/snowblossom_jj/n/ne9d0dad934d2
つまり、根地は物語によっては肉体的ではなく見た目や服装のイメージでジャックかジャンヌかを決めることがあるのです。
では、下記よりシャルルの性別が怪しく見える点を一部簡単に紹介していきたいと思います。
①デザイン
シャルルは同じ希佐のジャックである向井に比べて髪型やメイクが中性的。
また、弟のフィガロは服の上からも体のラインが比較的分かる軍服のようなデザインの衣装だが、シャルルは胸元がケープ状の布で隠されていたり逆に体型を隠すような造形となっている。
加えて、シャルルの服はシルエットがワンピースのような女性的な形状である。
②「ハレル・ア」PV
かりうどが二人一組となって踊るパートは社交ダンス風の振り付けとなっており、フィガロが男性(ジャック)側、シャルルが女性(ジャンヌ)側となっている。
該当PVと社交ダンスの動画を比較すると分かりやすい。
また、ダンスPVにも作中の世界観や設定が細かく練り込まれている可能性があり、それが事実ならば山岳信仰やサバトのイメージが根底にあると思われる。
そもそもゴーストを倒すシャルルたちがエクソシストやゴーストバスターではなく「かりうど(≒狩人)」と呼ばれるのも、キリスト教と日本の古い山岳信仰のイメージを重ねて描いているためと思われる。
かなり複雑な話となるため詳細は割愛するがその場合、
シャルル≒神嫁たる巫女
フィガロ≒蛇の男神(山神)
に置き換えることができ、二人のダンスは巫女と神の性行為を伴う婚姻の儀式=聖婚を表現したものと推測される。
男女のペアダンスを性行為のメタファーとして取り入れるのは宝塚などでも起用されている手法である。
③神話
秋公演のかりうどは②で触れた以外にもいくつかの神話や宗教の要素が落とし込まれている。
その中でもエジプト神話モチーフは大きなポイントとなっているのだが、そこでの二人はシャルル=葬祭の女神ネフティス、フィガロ=戦争と砂漠の男神セトという近親相姦の夫婦に置かれている。
元の神話ではネフティスは不倫してセトを裏切るのだが、秋公演は最後まで添い遂げたifとなっている。
解説が煩雑となるため詳細は以下の過去記事を参照のこと。
https://note.com/snowblossom_jj/n/n2cd823c712cf
※主に根地√の致命的なネタバレあり。
④戯曲
世長がジャック転向した秋以降の劇中劇は彼の公式公表の戯曲モチーフ『身毒丸』の作者である寺山修司の作風や世界観の要素が強くなる傾向がある。
※そもそも寺山作品は膨大な数が存在するため、実際は夏以前の劇中劇も今把握している以上に影響を受けている可能性はある。
さて、寺山作品には主に
1.自らを育て慈しんだ母への愛=母恋い
2.自らを縛り虐げる母への憎しみ=母殺し
3.愛する女性(恋人)との縁を母の妨害やその他の理由から失う悲劇
といった要素が登場することが多い。
世長の『身毒丸』は主に1と2をテーマとした作品だが、原典の一つである『俊徳丸』から主人公・俊徳丸を義母の虐待(呪い)から救い出す恋人・乙姫を(おそらく意図的に)削除していたりと少々変わった形で3の要素が見られる。
秋公演ではこの寺山作品の作風が以下のように割り振られている。
・強い母性を持つメアリー→母なる存在
・メアリーに生み出され彼女を慕うジェイコブ→母恋い(母を愛する子)
・シャルルを奪われてメアリーたちを殺害しようとするフィガロ→母殺し(母を憎む子)
※メアリーとフィガロにジェイコブのような親子関係がないのは『身毒丸』が血の繋がらない母子の愛憎劇がポイントの戯曲のためと思われる。
・メアリーの仲間(ブクロー)によってフィガロと引き裂かれるシャルル→母による息子の恋人の排除
つまり、シャルルがフィガロの意中の女性(恋人)役に置かれているのである。
そもそも希佐と世長の関係性は『身毒丸』ではなく先に述べた『俊徳丸』の主人公とその恋人から取られている節がある。
以上①~④より様々な場面においてシャルルが男性とは異なるイメージや役割を強く付与されている点から、その性別が本来は女性の可能性があると私は考えています。
なお、今回触れた山岳信仰と寺山作品を組み合わせることで、シャルルの性別を含めて秋公演をもう少し深く掘り下げられるのですが複雑かつ冗長となるため今回はここまで。