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好きバレしませんように
付き合っている時は可能な限り好きという気持ちが相手に伝わって欲しかったのに、今は1ミリの好意も伝わらないで欲しいと思ってしまう。
まだ好きな気持ちが残っているとバレた途端、手の届かないところに行ってしまいそうだから。
「別れよう」と言われたあの日から、目に見えて彼の生活の中から“私”がいなくなっていくことが辛かった。
彼のインスタに投稿されていた2人の写真が消え、カバンにつけてくれていた私があげたストラップが消え、誕生日にあげたお財布が別の財布に代わり…
最後の日、彼は「ケジメを付けるために目に見えるものは全部変えてしまった。けれど全部捨ててないし一緒に撮った写真や手紙も取っている。」と言った。
きっと最後の優しさのつもりだったんだろう。
彼がそうしたなら、私もそうしなければいけないような気がして、私の日常から彼の痕跡を消した。
今まで付けていたネックレスも、もらったリップを使うのも辞めて、お揃いのストラップや貰った手紙、全てを実家に持って帰った。
インスタの投稿も消して写真は非表示にしてLINEの設定名もスマホのパスワードもロック画面も変えた。
ローマ字入力しかできない彼のために、フリップ入力しか使わない私のスマホにローマ字も追加していたけれど、それも消してしまった。
スマホケースには2人で出かけた先で撮った写真を挟んでいたけど、それも変えてしまった。
そうやって見せかけだけは赤の他人になって、私の日常から痕跡を消せた…はずだった。
自分から一緒に授業を受けに来てくれた彼。
あの頃と同じように可愛い動物の動画を見せてくる彼。
私の写真フォルダを見ようとしてきた彼。
私のスマホからローマ字入力が消えたことに気づいた彼。
スマホケースの写真が無くなったことに気づいた彼。
あの時の私はどんな反応をしていただろうか。
ちゃんと友達として接せていただろうか。
何だか彼は情けをかけて私と話してくれているような気がして、それなのにまだ私は彼の気持ちを尊重出来ずに次を向けていないのが申し訳なくて、ただただ元気なフリをしている。
好きな気持ちが溢れないようにって難しいな。
かと言って少しも好きじゃないと思われるのは寂しい。
これが複雑な乙女心ってやつだね。
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