ある底辺字書きの嘆き

初めまして

こんばんは。私は勿搗(なづき)と申します。

私はとあるサービスを利用して、ぼそぼそと小説を投稿しております。元々は読者でした。ですが、だんだんと自分なりに表現してみたくなり、筆を取るようになりました。

最初は五千字くらいから始めて、今では二万字くらい書いています。反応は様々でしたがありがたいな、今後もマイペースでしか書けないけど頑張ろうと思っていました。

そんな矢先、身体を壊してしまい一年半も何も出来ない日々が続きました。

能天気な私はスランプなんてよくあること、すぐに何か書けるだろうと高を括っておりました。

私には好きな推しカプがいます。その推しカプを幸せにしたい一心で、仕事と家事の合間に夢中で小説(らしきもの)を書き続けました。

ずいぶん荒削りで、ムラのある読みにくい文章だったと思います。それでも人様に評価されたのが嬉しくて、夢中で書いていました。

しかし、読みやすい文章を目指しているはずがある時を境に頭にすっと入らなくなりました。文章が氷のようにツルツルと目を滑るのです。私は焦りました。自分の文章が下手くそだからそう感じるのだと思い、何とか改善しようと試みました。

好きな作家さんの文章を読んで参考にしてみたり自分なりに取り入れようとしましたが上手くいきません。次第に閲覧者は減っていき、後に残されたのは言い方は悪いですが、例えるならば小学生の作文並みの言葉の羅列しか出来なくなった私でした。

創作に向いていない、もう止めてしまおう。ふと、そんな考えが脳裏を過ぎりました。好きな創作さえも楽しめない自分は無価値なのだと、酷い時には死ぬことすら考えました。

傍から見れば、そんなことでと思うでしょうが上手く文字を綴れないのは思っていたよりずっとつらく、言いようがないくらい地獄です。特に文字書きは認識されなければ人権は無いのと同じことです。孤独です。

酸素がなければ生き物が生きていけないように、どうにも息苦しさと目眩と動悸に襲われて夜中でも起きてしまうのです。

しかし、創作のために自分の健康を損なっていては、本末転倒もいいところです。

ある時。全部、全部消してしまおう。

私は何もかもデータを消去することにしようと思い、消去ボタンを押しました。

しばらくは穏やかな日々が続きました。もう創作に悩まされる自分はいません。私は自由なのだと、そう思っていました。

ですが、ここからが本当の地獄でした。

全部リセットしてすっきりしたものの、今度はどこにも感情を吐き出す場所が無くなったのです。推しのこんなところが可愛いだとか推しカプのこんな姿を見てみたいだとか可愛らしいものではなくSNSで軽く呟くには憚られるような、ドロドロに塗れた汚い欲望です。実生活にはとても出せません。

どこにも吐き出せない苦しみはそれは大層私を苛みました。他に何か楽しみでも見つけて生きていければ良いのでしょうが、それも出来ずにただ行き場の無い苦しみを抱えて生きていました。

どうにも遣り場の無い苦しみを発散すべく他の趣味で気を紛らわせようとしましたが、それも徒労に終わり途方に暮れた末に選択したのは創作に戻るというものでした。

思い切って文体を変え、全くの別人として創作しようかとも思いました。

しかし、滲み出る文章の癖のようなものがあったのではないかと推測されます。幸か不幸か、指摘はされていませんが閲覧者が前より確実に減っているのがわかります。

もちろん話はありきたりのものしか書けません。モチーフも目新しさがなく何とも読み応えのないのでしょう。

単純に楽しくて書いていた文章とは違って、こうすれば楽しんでもらえるかな、とかウケるかな、なんていうのはすべて私が勝手に想像していただけなので実際にはとてつもなく滑稽にうつっているのでしょう。

今ではそれがとても恥ずかしくて死にそうです。うっかりまた、すべてリセットしてしまいそうになる手をどうにか押し留めている毎日です。


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