見出し画像

ラスアス2リマスターの感想

  改めてラストオブアス2をクリアしてこのゲームの何がすごいのか整理したい。このゲームの最もすごいところは前作の最後にジョエルがもたらした選択の結果をプレイヤーですら目を背けたくなるくらい正面から誠実に描き切ったことだろう。

 私はジョエルというキャラクターが大好きだ。前作のエリーとの関係が、知らない無愛想なおじさんとクソガキから親子に変化していく過程でこの二人にとても愛着が湧いた。前作を初めてやったときはワクチンの開発でエリーは死ぬと聞かされたときジョエルと気持ちがシンクロしたのを感じたし、ファイアフライは全員火炎放射器で丸焼きにしてやったのを覚えている。まさにこれから手術しようとしている医者や看護師共は全員脳天にショットガンを全弾ぶちかましてやった。このジョエルの行動は親として自然な行動だと思う。世界と自分の娘どっちを取るかと言ったら、後者を取るのは当たり前だろう。(このラスアス2のリマスターをやる前に、前作のリメイクも連続してプレイしたのでよりジョエルが大好きな状態でプレイした。)

 その後ジャクソンに戻る直前にジョエルは嘘をつき、エリーは嘘をついたのを察しわかったと飲み込んだ。あそこまで絆が深まったジョエルを信じたかったというのもあるだろう。だが、深層心理ではやはり嘘をつかれたことをわかっていたと思う。

 ラストオブアス2は何の続編なのかといえば、このエリーの「わかった」だと思う。前作のラストやDLCをやれば、自分の免疫に意味を求めていることがわかるだろう。どうせみんな最後はおかしくなっちゃうんだし待っていようと言った好きな人は先に死に、偶然持って生まれた免疫に何か意味を見出したがっていた。そういう意味ではジョエルに救われたと同時に「無意味に生かされてしまった」というわけだ。

  このエリーの「ジョエルに無意味に生かされたことをどう許すか」を軸に、親としての自然な行動で無実の人たちを殺しまくってしまったジョエルの選択の結果を目を背けたくなるレベルで誠実に描き切ったノーティドッグは本当に偉いと思う。実際それなり売れればいいのであれば、前作の人気主人公の罪なんてなあなあにしてまた旅でもなんでも続けてれば良かっただろう。それでも苦しみながらジョエルの罪に向き合いこれほどの品質で凄まじい作品を生んでくれたことに感謝したい。

 アビー編についてもリマスターで久しぶりだったこともあって、なんでこんなやつ操作しなきゃなんねえんだ!と思ったが、進めていくと本当にろくな目に合わず感情移入してしまう。ジョエルに父親を殺された事も含めて本当にろくな目に合わない。アビーといえばムキムキな身体だが、父親を殺される前は普通の体型だったのであれは復讐の鎧なのだ。アビーはエリーの鏡であると同時にジョエルの鏡でもある。父親を殺されたという点ではジョエルを失って以降のエリーだし、他人にとっての大事な人を奪ったという点ではジョエルと共通しているだろう。そういう意味でラストのエリーがアビーを許すことがジョエルを許すことにもつながってくる。

 エリーの「一生許せないけど、許したいと思う」というセリフのように一筋縄ではいかない複雑な復讐の連鎖、赦し、愛情を徹底的にシリアスに描き切ったラストオブアス2はやはり名作だった。

 賛否両論ある作品だが、その中間の「まあまあだったな」という感想はほとんど無いのではと思う。ストーリーもゲーム部分もサウンドもとても良くできているのでその徹底的にシリアスなストーリーがぶっ刺さるか拒絶するかの二択だろうか。ただ途中で辞めるのはおすすめしない。やり切る覚悟を持ってからの方が良い。

ポリコレどうこう言われるが、アビーやレブなどのキャラクターにはちゃんと理由があるし、むやみに配慮してる感を出そうとして入れたわけじゃないのは明白だ。まあ理由なく入れたからって別になんとも思わないのが正直なところだが。

(映画でもよく性的マイノリティが出ただけでポリコレに屈しただの大騒ぎする人達がいるが、ただ愛する対象の属性がマジョリティと違うだけで、愛し方に大して違いなんてないのにそんなに共感しにくいのだろうか?と思う。個人主義の時代に誰が誰をどんなふうに愛そうがその人の自由だろとならないのはなぜなんだろうか。)

 話がそれたが、凄まじいゲーム体験だった。復讐というよくある題材をこのレベルのシリアスさで体験できるゲームは他にないだろう。エンタメ全体で見ても無いのではないか。楽しいとは違う。大事な人を失うことの追体験なので正直に言えば苦しかった。でもその苦しさはこのゲームの誠実さの証なのだ。

 もし3が出るのならジョエルやアビーを赦すほどに成長したエリーのどんな物語が見れるだろうか。次回作に期待したい。

追記
PS4 Proとの体験の比較だが、解像度モードではネイティブ4Kに対応したことでより鮮明に美しくなった。それこそプリレンダムービーと見紛う程に。PS4 Proでも綺麗だったが解像度が1440p相当だったためか4Kモニターだと多少滲んで見えた。
PS4 Proレベルの解像度で良ければ60fps出るのでより快適になる。PS5の処理能力はPS4 Proの倍ぐらいだったと思うので順当な進化、リマスターと言えるだろう。
NO RETURNについてはおまけ程度の出来だろうか。そもそも人を殺すということの重みが他のゲームと比べ物にならないくらい重いのでこんなにパンパン殺すのはコンセプトに合っているのか?と感じてしまう。ただやはりラストオブアスの戦闘は良く出来ているなと改めて感じさせる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?