ファイターズのドラフト戦略 9月時点

 こんにちは。ファイターズは最近非常に調子が良いですね。圧倒的な最下位から、4位、5位争いができるくらいには復調し始めました。年間を通してある程度の見通しもつくようになってきたので、今季序盤にも似たような記事を投稿しましたが、改めて現時点でのドラフト戦略を考えてみたいと思います。

来季以降目指すべきチーム作り

 まず、9月1日時点でチームは最下位に沈んでおり、再建を望む声も聞こえてきますが、タンキングに走る必要はないと思います。2023年開業予定の新球場に向けてチーム作りをする必要はありますが、そもそもNPBにおけるタンキングとはどういう行為を指すのでしょうか。MLBと比べて比較的若い段階で有望株が戦力化されることや、強豪球団と弱小球団の戦力格差が比較的小さいこともあり、主力を放出して有望株と引き換える文化はありませんし、放出できるような主力もいません。他球団も含めて、もしNPBでもエース格と有望株のトレードが実現するなら、個人的には面白いと思うんですけどね。
 今季のファイターズの低迷は、主力(コア5と一時期持て囃されていた西川、大田、近藤、中田、渡邊)のキャリアワーストクラスの不調と外国人補強の失敗(コロナ禍で難しい面はありました)が大きかっただけで、主力のバウンスバックや新外国人助っ人の活躍次第では余裕でAクラス争いは可能だと思います。なので、まずは来季優勝(少なくともCS争い)をする前提で戦略を練りたいと思います。
 仮にドラフトで6人選手を獲得するとして、8つの補強ポイントを用意しました(指名順位によっては補強ポイントに合致する選手が残っていない可能性があるため)。今回は補強ポイントの確認を行い、次回具体的な選手名を当てはめていきたいと思います。

ドラフトでの補強優先度が低いポイント

 まず、補強ポイントを考える前に、ドラフトでの補強の優先度が低いところはどこでしょうか。というのも、前述したようにチーム作りにはドラフト以外にも外国人選手の補強やトレードなど、様々な手段があるため、補強方法ごとに補強し易いポイントが存在します。トレードは読みにくい上にセンシティブな話題にもなりかねないので触れませんが、外国人補強は戦力アップには必須ですし、上位のチームには必ず活躍している外国人がいます。
 そこで補強ポイントに目を向けたいのですが、ファイターズのドラフト記事等でよく言われているのが、大砲系の選手獲得です。確かに、ファイターズは12球団有数の長打力不足に悩まされている球団であり、中田も移籍してしまったので補強が必須なのかもしれません。しかし、今季は野村高濱が1軍のクリーンアップを打ち、2軍には清宮万波今川など、大砲系の若手有望株がひしめき合っています。個人的には、彼らの成長を促すのが最優先なので、ドラフトで数年かけて大砲系の選手を育成するよりも、即効性のある外国人大砲を獲得する方がコスパは良い気がします。外国人であればプロスペクト達が本格化した際に契約を延長しなければ出場機会を奪うこともないので、チーム作りの邪魔にはなりません。
 また、ファイターズの弱点である大砲系の選手クローザー格のパワーリリーフは、ドラフトで埋めようとしても簡単には埋まりません。仮にトップクラスの即戦力の選手がいて埋められるとしても、1巡目の枠を使うことになるのは必須です。上述したポジションは外国人で埋めている球団も多く、外国人補強の方が即効性が高いので、まずは外国人ガチャにかける方が先なのかなと思います。もちろん他に補強ポイントがないのであれば良いのですが、最下位球団なんてどこもボロボロなので、ドラフトで補強し易い(するべき)ポイントについて考えたいと思います。
※とはいえ、1巡目で「一塁専の大砲型大学生!リリーフ型の社会人!」などと、ドラフトの最優先事項にするのを避けたいだけなので、補強ポイントの一つとしては挙げることになります。矛盾しているようですみません。

補強ポイント1:即戦力のスター選手

 現在伊藤がルーキーとしてエース格の投球を披露していますが、今年は早川(楽)佐藤(阪)牧(横)栗林(広)などドラフト1位の選手の多くが活躍しています。流石に今年は近年稀に見る即戦力ルーキー当たり年でしたが、即戦力ルーキーは毎年少なからず存在します。1巡目の枠というのは、上手く使えばチームの核となる選手を獲得できる貴重な枠です。
 ここで言う即戦力とは、高校生であれば1〜3年以内に1軍に定着する逸材、大学生及び社会人であれば2年以内に主力及び準主力に成長する逸材のことです。近年であれば前述した伊藤早川の他に佐々木(ロ)奥川(ヤ)のようなスーパー高校生など、超一流の選手は紆余曲折あってもすぐに頭角を現します。
 ファイターズの入札選手は一貫して「その年のナンバーワンを獲得する」ことで有名ですが、個人的には上述のような即戦力のスターがいるのであれば、その方針に賛成です。補強ポイントを無視して指名するのに批判的な意見もありますが、3〜5年後のデプスや補強ポイントは流動性の増している現代NPBでは読めないことも多く、補強ポイントに目が行きすぎてしまうのは愚策かなと思います。
 例えば、2019年ドラフトが良い例かと思います。2019年シーズンは先発投手不足が顕著なシーズンで、15勝の有原に続く2番手投手がベテランの金子であり、100イニング以上投げた投手がこの二人しかいませんでした。そこでチームは即戦力寄りの先発投手を補強ポイントとし、1巡目で河野、2巡目で立野という(高卒)社会人投手を指名しました。そして、2019年のアマチュア市場は近年稀に見る捕手豊作の年でしたが、当時5年目の清水が自己最多の98試合に出場し、打率.259、5本塁打と順調に成績を伸ばしていたので、捕手の獲得は6巡目の梅林に留まりました。
 さて、2021年現在のチーム状況はどうでしょうか。捕手に関しては、将来を嘱望されていた清水が伸び悩み、競争相手として獲得した古川も1年目は苦しんでいます。先発投手に関しては、有原はMLB移籍となりましたが、上沢がエースとして本格化し、バーヘイゲンや伊藤など、2019年時点ではいなかった選手がローテーションを守るなか、河野はクローザー転向を囁かれ、立野はようやく頭角を現しました。このように、補強ポイントも大事ですが、目先の補強ポイントを優先し過ぎても先のことはわからないので、数年後を見据えてまずは投手センターラインを補強することが大切です。特に、1巡目は超一流の選手が獲得できる最も可能性の高いチャンスですので、ある程度の補強ポイントは目を瞑っても良いかもしれません。
 投手・野手共通して言えることですが、日本代表に選出されたメンバーを見ても分かるように、現在のファイターズには超一流の選手がいません。代表に選出された近藤、長年リードオフマンを務める西川は十分一流の選手ですが、坂本(巨)、柳田(ソ)、山田(ヤ)の域にはまだ達していません。伊藤大海にそのポテンシャルはありますが、1年目なのでこれからといったところでしょうか。ただ、超一流にならずとも、その周りを囲む優秀な選手は育ちつつあるので、圧倒的なコアになれる逸材が獲得できれば一気にチーム力が上がる可能性もあります。問題は今年のドラフト候補にその逸材がいるかどうかですが、その点については次回に残しておきます。

補強ポイント2:先発型のチャレンジ枠

 今季の先発ローテーションの中心は上沢、伊藤、加藤、池田、バーヘイゲンの5選手です。後半戦からは河野も加わりました。来季も安定した活躍が見込めるのは上沢伊藤の二枚看板で、加藤池田は調子を落とし気味で、投球内容も絶対的ではないので、どちらにも転ぶ可能性があります。怪我から復調したバーヘイゲンは安定していますが、来季の契約状況は不透明のため、計算が立ちません。
 来季活躍しそうな若手については、後半戦から先発再転向を果たした河野、河野と同期の立野、2軍でローテ格の吉田輝星あたりは来季先発機会を増やすと思いますが、ローテーションで1年間稼働する計算は現状できません。河野はリリーフでの起用を望む声もありますが、ドラフト1位ということもあり、先発失格の烙印が押されるまでは先発として育成して欲しいです。リリーフとして出力の上げ方やカッターの使い方を覚えたので、課題のスタミナや打たれ始めると止まらない傾向を克服できれば、ローテの上位に定着する才能はあります。そもそも現在のリリーフ事情については、パワー系外国人を補強してからだと思っているので、目先の勝利のためにリリーフへ再転向を促す必要はないと考えています。
 また、上原、生田目、金子あたりには谷間を埋めるスイングマンからスターターの活躍を期待しているのですが、一進一退の日々です。本来ローテの4、5枚を固定して、チャレンジ枠で2軍の調子の良い選手を交代させながら使いたいのですが、現状チャレンジ枠が少ないように感じます。なので、中位から下位指名で先発投手候補を獲得したいです(※リリーフ起用を前提としている変則社会人とかではなく)。高校生であっても、今年の根本のような完成度の高い投手であれば、シーズン終盤に起用することも考えられるので、投手陣の底上げに繋がれば良いなと思います。

補強ポイント3:高出力リリーフ

 今季のリリーフハイライトは、クローザーが固定できなかったことに尽きますね。石川直也離脱、秋吉不調により、クローザー杉浦で開幕したファイターズですが、杉浦はセーブ失敗を繰り返し、現在(9/5時点)2軍再調整を行っています。37登板で防御率3.44、奪三振率11.78、WHIP1.15なので印象ほど成績は悪くないのですが、36イニングで7被本塁打は打たれすぎですね。杉浦の適性がどこにあるのかという議論も度々起こっていますが、今季に関しては杉浦クラスの支配力のある投手はいないので仕方ない気もします。
 頭数については、ファンが悲観しているほど少なくはないと思います。登板数上位には、堀、ロドリゲス、玉井、宮西、井口が並び、前半戦不調だった宮西、玉井は調子を上げてきており、井口は新フォームがハマり覚醒中です。問題はクローザーを務める支配力と精神力のある投手がいないことでしょうか。ロドリゲスや堀も防御率は良いですが、四球から自滅する癖があり、迷った時にコマンドはアバウトになっても投げ込める強さのボールがないため、乱調になるシーンを見かけます。必要なのは少なくとも勝ちパターン、いずれクローザーを任せることができる支配的な投手です。間違っても昨年までの井口や西村のような1.5軍格の有象無象を増やすのでは、意味がありません。
 支配的なリリーフに必要な要素で言えば、真っ先に高出力であることが挙げられますが、なぜかファイターズの投手は入団後に球速が落ちることが多いです。前述した井口は1年目に150キロ前後の投球をしていましたがフォームを微調整し140キロ前半まで落ちました。ただ、今季はフォームがハマり、150キロを記録、成績も向上しました。イマイチ球速低下の要因は不明ですが、飛躍的に出力を上げる育成術も持ち合わせていないので、懲りずに高出力投手を獲得し続けるしかありません。近年はスピード化が進んでおり、下位指名にも高出力の投手は残っていることが多いので、最低でもひとりは確保したいです。特に昨年はパワーピッチャーが豊作でしたが、高出力リリーフタイプを指名していないので、現実的にも指名する可能性が高いと思います。

補強ポイント4:即戦力遊撃手

 補強ポイントの4つ目が、常日頃から言われている二遊間です。正直、現在のファイターズには多くの補強ポイントがあり(最下位なので当然ですが)、デルタが公開しているポジション別攻撃力表でも「捕手」「遊撃手」「左翼手」「右翼手」で大きなマイナスを作っていることが確認できます。しかし、外野手は西川と大田のバウンスバックがある程度期待できること(ともに残留すればの話ですが)、浅間、万波、五十幡、今川、宮田等のプロスペクトで溢れていること、両翼は外国人での補強をし易いことを踏まえると、まずは二遊間かなと思います。
 二遊間の中でも特に遊撃手ですが、1軍レギュラー格は石井中島のみとなっております。平沼がライオンズに移籍し、来季レギュラー争いに名乗りを上げそうな若手がイースタンにいるわけでもないので、より補強の必要性があります。現在守備型の中島がバックアップとして貢献しており、打撃に魅力のある遊撃手が不足しているので、ある程度攻撃力(走塁貢献を含む)のある選手が候補となりますが、攻撃力のある遊撃手は球界全体で不足しており、貴重な人材なので、アマチュアNo1を狙いにいくしかないかもしれません。阪神のルーキー中野や楽天の小深田の活躍もありますので、即戦力遊撃手獲得の進言は以前よりハードルが下がっているかもしれません。個人的には小兵タイプの即戦力社会人よりも、大型大学生遊撃手の方が好ましいですが、今季のドラフト候補との兼ね合いもありますので、具体名については後述します。

 本当は補強ポイントを一回にまとめたかったのですが、長くなってしまったので、一度切りたいと思います。次回は補強ポイント5〜8を考えたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました(誤字脱字等はご容赦ください)。

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