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Hipshot Ultra Lightへの交換2本、の2

一昨日のネタ、続編です。作業はその日に終わっています。5弦用のサドウスキー弦は本日届きましたが交換はまだ行っておりません。

Vintage Type Jazz Bass

トップ画像はJBの完了後です。元々はGotoh GB2が採用されていました。一度はGB640Rへ換装していますが、音質に納得がいかなかったのと、他のクルーズ・ベースは後に紹介する5弦以外、既にHipshotが付いていますので、こちらもHipshot Ultraliteへ交換することを決意し、元へ戻した状態で使用してきました。コロナ禍となって以来、Hipshot製品の供給に支障が発生し、少量の入荷があってもすぐに売り切れる状態が続いています。サウンドハウス在庫が復活したタイミングで購入を試みましたが、実際は3個だけしかなく見送り、このたびオークションへの出品を見つけたので、中古で入手しました。

実測ではなくいずれもカタログデータの転載ですが重量を記します。
GB2 110.3g
GB640 61.8g
USA Ultralite 1/2 Clover-key 55g
4個で上から441.2g、247.2g、220gですので、GB2からの交換で約半分の軽量化が可能です。

GB2/GB640は共に、クルーソン・ペグの構造通り、表側にブッシュを木部へ食い込むように打ち込みます。ペグ自体は裏側から4個のネジで固定していますので、ブッシュの働きとしてはペグ穴の内径を保護するためでしょうか。ポストとの間には遊びがありますので正確な垂直に保つためのものではなさそうです。そして、ペグ交換を難しくするのが、このブッシュを取り外す工程です。Ultraliteはブッシュ側にナットの溝が切ってあり、ペグがボルトとなってヘッド板を挟み付けます。この締め付けで固定できますが、回転方向での固定を目的にペグ側に1個の止めねじがあります。大仰なクルーソンタイプではありますが、ブッシュは経年で浮いてくることもあり、しっかり作られている近年ものは、逆に外すことが難儀です。整備性は悪いと言えるでしょう。

さて、クルーズのこの4弦JBですが、当初GB640を試みたのは訳があって、このブッシュを外すことを一旦諦めたためです。今回は決意して臨みましたので、それを外す工具を考えました。結局裏側から治具を当てて叩き落とすしかないと思い、ペグ穴にぴったりの金属を探して、結局頭のサイズ12mmのボルトを買ってきました。このままで入らなかったため、ヤスリで少々角を落とし、はまるようになってからブッシュへ裏側から当て、ソフト・ハンマーで打ち付けました。丁寧にやりましたが、ブッシュの金属はボルトに負けて傷を残しました。覚悟していましたが、よそさまの楽器では絶対請け負いたくない作業です。

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ブッシュに少々傷がつきましたが、無事に4つとも取り外し、次に元のねじ穴を埋めます。GB2からGB640を乗せ替えた時に新たに空けた穴がありますので、1つのペグ当たり8箇所の4個分、32箇所の穴を埋めました。この作業は結構好きです。ただ、ヘッドの裏側に傷が付きますので、やはり人様の楽器ではやりたくありません。

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まだ途中ですが埋めていくとこんな風です。ここで中断している理由は、先日お話しした通り、指と指を接着してしまったせいです。木片にアロンアルファを付けてハンマーで叩き入れるのですが、折れて飛んでしまいました。床に付いてはいけないととっさに拾い上げた馬鹿者です。始めは指と指と木片がくっついていました。作業としてはこの後、ナイフででっぱりを削り取っていきますが、これも慎重にやるものの傷を付けてしまいます。自分の楽器だからできます。

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完了した図です。E線用の上側に白い傷が見えますでしょうか。前の画像と比較してください。結構な傷を残しました。ただ、ナイフだけの処理にしては平滑に削ることができています。私の殆どの楽器がこのようになっていますので、実はこの後付けアピールは好きです。日焼けの跡も♡。

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表からはこんな風です。ブッシュが6角のナットになっておりますが、さほど見た目の違和感はありません。ペグの足の長さがメーカーによって異なりますので、つまみの部分がヘッドに近くなってしまいましたが、操作に違和感はございません。デザインは乗せるパーツを前提に考えないと行けないですね。この楽器は、きちんとGB2を前提に寸法が出されています。そして、約220gの軽減によって重量配分が良くなり、弾きやすさで雲泥の差が生まれました。音の方は生音で弾いてみて不満はありません。弦も交換しネックを調整しました。

Be Bottom' 24 Type-J Custom

5弦の方へ進みます。こちらは特注でアルダー1ピースボディにカスタマイズされています。ネックは21フレットモデルがローズ、またはメイプル指板ですが24フレットモデルの標準はエボニー指板です。同社にJacksonというフレットレス専用モデルがあり、そのフレッテッドという位置づけですので、木部は同じ治具で製作されるようです。できあがりを見て一つ不満というか、調査不足で浅はかだった自分に気付きました。

フレット付きのネックからフレットを抜く改造を行うと、フレットの高さ分だけ弦高が上がる理屈になりますから、楽器の状態によっては弦高をそれ以上下げられないケースがあります。こちらは逆で、フレットレス先にありきですので、ネックの仕込みがフレット付きだと浅いのです。フレットの高さ分だけ弦の位置がボディから離れます。ブリッジのサドルも突っ張っちゃって、弦高が高い楽器みたいになっています。弦とボディの隙間が広いのは弾きにくくもあり、何より楽器としてのバランスを欠いた仕上がりに感じます。

個人的には気に入りませんが、ルシアーとしてはそれでいいと考える人もいるみたいです。昔MTDにフレットレスとフレッテッドをペアでオーダーした時の話、思うところ色々あって、試しにネックをスワップしてみました。すると違和感なくフィットし、ブリッジの駒高だけ調整して全然オッケーだったのです。さすがにびっくりしました。だからクルーズのそれも悪とは言えません。それでもネックポケットはいずれ信頼できる工房で落としてもらい、弦をボディ側に近づけ、サドルをもう少し低くできるよう加工してもらうつもりです。それはさておき

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使用されるペグはGB-11Wです。こちらもHipshot同様ブッシュがナットになっておりヘッドストックを挟み込んで締め上げるデザインです。それなのに裏側には取り付けネジが3箇所あります。Gotohのデザイナーは、パーツの取り付けを本当にリジッドにやりたいらしいです。私は、その方向性は好きではありません。パーツの取り付けをボルトで装着する場合、その締め付け力によって鳴り方が変化することはよく知られています。そしてボルトの数も変化を生みます。

これも昔話です。FreedomのRhinoを使っていた時の話です。ブリッジをGotohの510(フラッグシップ製品には駄洒落でゴトーのナンバーが型番に付きます)からフェンダータイプのMontreux製に替えました。それはテールピース側を4つのネジで固定しますが、取り付けてみると前側(ネック側)が浮くのです。これを気持ち悪いと思って、前側の角近くに穴を入れる加工をお願いし、追加のボルトで留めました。すると驚くほど音が悪化しました。浮いていても弦を張るとボディに密着します。弦のテンションで上から押さえつけられているくらいの圧が、「音楽的に」ちょうど良かったのです。

こうした例から、パーツの取り付けを行うネジの数と位置、そのトルクは非常に楽器の鳴りに影響するのだと学びました。Gotohのパーツはブリッジもですが、うちのは絶対ブレないぞと誇るかのようなデザインに見えます。印象だけです。駄目とは思いませんし、言いません。悪しからず。

重量を比較しましょう。
GB11W 78.6g
USA Ultralite 3/8 Y-key 42g
5弦ですので合計では393g、210gとなり、こちらも約半分に落とせます。GB11は多弦用として開発されていますが4弦用と同等にする考えなのでしょうか、さほど軽量ではありません。Res-o-liteシリーズを用意しているからでしょう。でもあれはなんかね、響きがイマイチなんですよね。GB350を試したこともありますけど残念な感じでした(重量は驚異的な31.3g!)。

そしてブッシュのナットを締めるためにレンチが必要ですが、家のどこを探しても見つかりませんでした。モンキーやソケットなどいくつかあったのですが出てきませんので、買いに行くことにしました。余計な散財です。それぞれサイズが異なりますので、メモして出掛けます。
GB11W 17mm
Ultralite 1/2 3/4inch
Ultralite 3/8 9/16inch
ソケットレンチだとロングタイプでなければ使えません。さすがにインチでは商品の在庫がありませんでしたので、出費を最小に抑えるためモンキー1本にしました。プロ御用達の店での最安商品ですが、嬉しいことに17mmのラチェットがお尻に付いています。

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昨日注文の5弦用sad弦は今日届きました。でもネックポケットやってから替えようかな、などと考え急ぎません。現場が無いからね…。

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4弦と同じように5弦も挿していきます。好きな作業なので47箇所でも苦になりません。こちらは目立つ傷を付けること無くできました。

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仕上がりました。日が浅いため焼けていません。こちらのYキーはサウンドハウスで5個発注できました。表面は以下の通りです。

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実測で(ただし10g単位)4弦は280g、5弦は170gの軽量化を果たしました。計算合わないね (^_^;)

追記:Be Bottom'24のネックポケットの件、Be Bottom'21と、ネックを外さずに簡単に比較しました。ボディ厚が24の方が1mm弱薄く、ポケットの深さは同じようでした。弦とボディの距離が遠い原因は、24の指板が厚いためとわかりました。やはりフレットレス用に作られたネックにフレットを打って、その分の嵩が増えていると見るべきです。Jacksonをそのままフレッティッドにしたというのが正しいみたいです。今後どうするかは、ゆっくり考えていきます。

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