クルマをどうしよう9 最後の最後まで

マツダ車に乗り換える事案。ということで、少し書きたいと思います。ディーゼルのボルボV40から今の6速MTミニに買い替えたのは2020年夏でした。買い替えの理由は二つあり、新しく住んだ家の駐車場が狭く、できるだけ小さなクルマにしたかったのと、ボルボの鼻先が過度に重いバランスによる乗り味に我慢できなくなったというところです。いずれも我が儘かもしれません。買い替えを正当化できる理由にはなりませんが、もうひとつ、自分も歳を取るから、あともう何台も経験することはできないだろう、と考えれば元気なうちに乗りたいものには乗っておくべきとする潜在的な欲求もありました。いったいいつまで運転できるでしょう。あと何台乗り継げるのかな。

時系列での話ではなく、これはかなり事が進行している中、突如降って湧いた出来事でした。ある日の通勤途中にマツダのUカーディーラーの前で、ふと目に付くクルマがあり、間近に見たくて帰りに立ち寄りました。CX-3がそれです。実は2020年にも検討していました。サイズ感がちょうど良く、ディーゼル搭載車があります。

あの頃、マツダは変革期を迎えており、デミオやアクセラ、アテンザが欧州での車名に倣い2、3、6などへ変更し、中でも3がブランドニューの鮮烈なデビューを飾りました。小さくしたい、という願望を他所に、それもタイミングですから3も試乗したり、直後に出たCX-30にも乗りました。いずれもマツダの良心と言うべきか、マニュアルトランスミッションが用意され、その試乗車をキープする千葉や埼玉のディーラまで遠征しました。ロックダウンに近い状況下で…。

もっとも、その時、初めからMTにしようとしていたわけではなくて、CX-3と3を最初に乗らせていただいた近隣のディーラー(つまりは先のUカーショップを構える新車販売の店舗ですが)ではATでした。試乗を終えたとき、そこにあったロードスターに目が行き、ついでに乗らせてほしいと恐る恐る言ってみたところ快諾を得られたので、1.5の幌と2.0のハードルーフをMTで試乗させていただきました。ここしばらくATを所有してきましたが、免許取得以来ずっとMTでしたので、その日、私は覚醒し絶対にMTを買おうと決めたのでした。ロードスターは流石に選べませんでしたが。

諸条件を加味してCX-3が浮上し、その時点ではすでに廃番でしたが2リッターNAのMTを中古で見つけたので、ほぼそれで決まりでした。そんな折、中古で良いのならと視野を広げてクルマ探しをしたところ、ミニにも存在したという次第です。その後の溺愛ぶりはこれまでにお伝えしたとおりです(スイスポも乗りましたがミニとは争えませんでした)。

2020年に欲しかったCX-3は今でも現行販売されており、プラットホームや内装デザインが旧態依然となっています。マツダは内燃機関の存続を目指し、ディーゼルに力を入れ、その後ディーゼルの燃焼方式をガソリンで実現する超リーンバーンのスーパーチャージャー付きエンジンを新規導入し、直近ではロータリーエンジンを発電に利用するハイブリッドも市場へ投下しています(2020年にも既に噂は出ていました)。

これらは全て変化球とも言えますが、英知を結集したマツダならではの独創性があって、永遠にとは言わずとも、末永く内燃機関を残そうとする意地には好感を持ちます。一方、小さな地方企業である規模からして、シャシーの刷新は遅れ気味と言わざるを得ず、多くの自動車会社がアライアンスを組んで国際協業による秀逸なプラットホームを開発、共有化していく進化のペースからは置いて行かれているように見えます。

それでもロードスターをはじめ、既存の製品に熟成を重ねていく姿勢には、イギリス的と言いますか、古いものを残す意欲に私は価値を認めますし尊敬の念を持って応援したいところではあります。

とはいえ、2024年の今、CX-3がまだ欲しいものリストの上位にあるかと問われれば、残念ながら、そのサイズの良さ以外に魅力を感じなくなってしまいました。代わりに、というか、後に出たMX-30が嗜好にぴったりはまり、今回も大きく揺さぶられることになりました。

もともと、MX-30はEVを視野に入れたプラットホームを新規開発されており、先行するマツダ3、CX-30に採用され、満を持して登場したニューモデルとなります(もはや古い話ですが)。外観に特徴があり、一見すると2ドアクーペ、しかしリア側に観音開きドアを持っていて独り乗車、かつ楽器などの少々大きめの荷物を携帯する利用者からすると抜群の使い勝手に思えました。

内装はリサイクルの部材を多用したり、マツダ創業時の商材であったコルクをシグネチャーとして採用するなど「意識高い系」デザインが、心地よい方向に纏まっており私は気に入りました。特にグレーの内装色がお気に入りであったボルボV40のそれを彷彿とさせます。いわゆる北欧デザイン系の彩色は最も気持ちの落ち着くテーマであり、今住まうマンションのリフォームでも内装に取り入れています。

MX-30は今話題のロータリー・ハイブリッドがありますが、まだ価格が高すぎて蚊帳の外。EVは航続距離が短いし自宅で給電できないので却下。すると最初に投入されたマイルドハイブリッドの2リッターガソリン、ということになるのですが、これで十分と思いました。そして価格が安い。あとは試乗して気に入れば、それでいいや、と思うわけですが、実際はそのように進行しませんでした。なぜならば、この時すでに別の車種との商談が進んでいたからです。そちらをひっくり返すか否か、まさにその日の夜がデッドエンドでした。そして、現実はマツダ車を試す機会すら逸して、既定路線で決着したのです。

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