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5年前のことを、ほんの少し

2020年は社会全体が変革の起点になったと認識されていますが、私自身のプライベートライフもまた、コロナとは無関係に大きな変動が起きました。私が高校3年の時に両親が建てた戸建て住宅は、未来永劫長男である私が住み続けることを暗黙のうちに強要する巨大な荷物でした。その裏側の事情を明かすことはできませんが、父の死後ちょうど2年後に解体され、元「家」だったところはあっさりと人手に渡りました。実家というものが私には、ずっと負担でしたので、これは必然であるとともに宿願だったかも知れません。いずれにしても40年間、私のアイデンティティの一部だった土地との縁が完全に切れます。それは思っていた以上に断固とした力強さの、瞬間的で圧倒的な転換でした。この歳で何をと叱られるでしょうが、家を失うことの恐怖を初めて知りました。代金の一部は受け取ったわけですが。

今の住まいに根を下ろして1年が過ぎました。これほどに流れの速い1年間は記憶にありません。引っ越しの荷物もあらかたそのままです。こんなに時間があるのにね。本は本棚を買って並べましたが(一部屋の壁2面です)、CDと機材は収容する家具をどうするか決めかねて、体よくダンボールのまま積まれています。このままなら次に引っ越す時も楽ですね(笑)。でかいベッドを買って最高の睡眠が得られる環境を作り、一部屋に防音室を組み上げ、練習とリスニングが不自由なくできれば、私独り生きるのに全く不満はありません。それがいけないのですね。今の所、誰かの訪問を受け入れることはできません。それだけをとればコロナは好都合です。

オチのない話をだらだら続けるのもなんですから、昨日に続いて自動車のことでも少し書いて終わります。

2016年にボルボV40 D4 momentumというアマゾンブルーと銘うつきれいなソリッドのブルーを纏った車を買いました。外装色は私の心の、これが一番好きというカラーそのもので、momentumは中間グレードのため革シートではありませんが、化繊のインテリアがグレーのチェックと白のツートーンに配色され、ステアリングも黒・白だったり、ザ・北欧というデザインが、ごめん、汚い言い回しだけど死ぬほど好きでした。センターコンソールをリアルウッドのパネルへ付け替えることができ、見た目に加え手触りからも温もりを感じました。

クリーン・ディーゼルというのが少しブームになっていてプジョー/シトロエン/DSとか、BMW/MINI、メルセデス、ジャグワ、マセラッティなどなど、輸入車を中心にマツダを加え、よりどりみどりになっていました。先に少し触れましたが、2012年に国内での販売開始となったVWのザ・ビートルを、予約注文して国内最初期のロットで買いました。こちらも4年間で6万キロ走っての買い替えとしましたが、1.2リッターの7DCTだったかな、当然ハイオク仕様で燃費があまり良くなかったので、私なりのエコを目指してディーゼルを試みることにしました。

私の好みからするとシトロエンC4が良かったです。ディーゼルの導入は日が浅かったですが、モデルとしては相当古くなってきており、同じタイミングで買えるプジョー306は兄弟車でありながら、それより一つ前の世代とのことでした。でも乗った中で明らかに一番好き。あとはBMWの1シリーズ、後輪駆動はディーラーショウルームから一般道に出るためにステアリングを切った瞬間から、自分の知ってるクルマというものはこういう動きだよね、と思い出させてくれました。

2ヵ月前に介護施設に入居した父が、初めての外泊を申し出て家に戻ってくる秋の日、寿司が食べたいと言うから、慎ましく「銀のさら」で二人前を用意して、人生最後の自宅で過ごす時間を迎えました。翌日は朝ご飯にライ麦の食パンを半分と牛乳を飲むなり、もう帰りたいと言い出したので午前中から施設へ送りました。2日間の休みを取っていて体が空いたので、暇な午後にはクルマでも見ようとBMWディーラーへ連絡してみます。今話しているのはボルボ購入時の2016年現在です。ついこの前という感じで、すでに4年半が経っているのですね。

数日前に散歩がてらに立ち寄って1シリーズの試乗は済ませており、ザ・ビートルで訪れて見積もりを出そうとしたのですが、担当者が今日は外してくれと言うので、まだ見ていなかったボルボを見ようかとサイトに申込みをするや、秒で電話が掛かってきて、新規にできた近隣ディーラーを訪ねることになりました。

まずは高速道路を使って、当時最新の安全技術のデモンストレーションをされました。それから自宅付近も走ってみるよう勧められ、若くはない男性社員と2時間ぐらいドライブを続けます。普通ありえない試乗パターンです。訪れたのは14時くらいだったですが、暗くなってディーラーへ戻り商談が始まります。断っても断ってもしつこく食い下がり、所長が値段をどんどん下げてきます。この1台で今月かっこがつくんですと泣き落とし混じりに訴えられ、またその社員はサービスから営業になって、まだ一台も売っていないのでどうにかしたい、と懇願され、結局21時過ぎまでのネゴシエーションの果て、予め決めていた予算内で買えるようになったところで決着します。

本当にベストインテリア、ベストカラーというところでは満足し、悪い買い物ではなかったと今でも思います。昨年、このMINIを買った時、あの日ご縁のなかったBMW 1シリーズの最終版を運転させてもらいます。すでに心はMTに決めておりましたが、やはりタイヤ一転がり目から後ろから押されている感覚があって楽しい。2016年のBMW営業さんがザ・ビートルの見積もりをしてくれていたらそっちになってたんだろうな、と思いました。

プジョーはディーゼルに自信ありのメーカーで306も面白かったですが、乗り較べたら1.2リッター・ガソリンの方が私は好きでした。やはり鼻先の軽さは気持ちよさに直結するんですね。ボルボは納車の瞬間から、(あんなに長時間・長距離試乗したのに)やっちまった感がありました。ステアリングフィールの悪さで。プジョーでわかっていたのに。

余談ですが、プジョーは車両設定を「スポーツ」モードにすると、たとえ音楽を聴いている時であっても、そこに割り込んでエンジン音をスピーカーから流します。1.2リッターなのにV8エンジンをサンプルした音が聞こえると、わかっちゃいるのに楽しくなります。このサウンドは切ることができません。またリアトランクのスペアタイアを置くスペースにサブウーハーを積むグレードがあって、それだと本当にマッシブな車に乗っている錯覚を生みます。これたぶん今でもプジョーはやってるんじゃないかな。

DS4とシトロエンC4では先述の通りシトロエンの方がはるかに好きで、ただ車両本体価格はそれほど高くないのだけれど値引き無しの上、下取り査定も厳しく、その記憶があったためにボルボの商談で傾かされました。

引っ越したこの家の駐車場は、5ナンバー車を前提とした区画であるのは明白で、停めたところでの乗り降りが細く開けたドアから体をよじりながら行わなければなりません。前方の空間もやや狭く、一度切り返して出るのも億劫でした(そして下水の蓋を踏んでガッチャンと大きな音を立てます)。小さい(というより幅の狭い)車に替えたいなぁとの思いは徐々に募り、それとともにD4の運転感覚の癖を我慢することにも耐えがたくなってきました。

車種選びに入るのは8月のことです。なにをどうやってミニに至ったのか、これもまたロングストーリーですのでいずれ面白い話にまとめられたらと思います。本日はこれくらいにして確定申告の伝票整理に戻ります!


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