ソフトかハードか問題

濃い1ヵ月を過ごした昨年の8月。その第一土曜日に初めてマツダの試乗を行い、5週間後の9月5日(土)にミニが納車されます。この期間はクルマのことを沢山考える時間があり、退屈しませんでした。外出は控えるべき時でしたが、試乗のために店舗を訪れた回数は合計10回です。納車まで5週と言いましたが、契約したのは17日でしたので、2週と3日で納得のいく調査を終えたわけです。楽しい日々でした。

マニュアルミッションの車を買いたいという思いは、あの運命の一日、ロードスターRFから降りた瞬間に確実なものとなりました。全く予期していなかった大きな方向転換です。このとき、ひとつ思うことがありました。

乗ったのは2.0Lのハードトップでした。ロードスターと言えばブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツをお手本に作られていますから、一番ベーシックな型だと1tを割る重量で、エンジンは非力と自他共に認める1.5L NAとなります。もしかすると、近所のマツダに1.5Lのソフトトップしか置かれていなかったとしたら、それを運転して、衝撃的なインパクトを獲られたかどうか、疑問が湧きます。1.5Lの方は、回す楽しみとか、使い切るとか、運転を遊びと考えるのならきっと魅力的に映るワードが添えられ、そもそもの商品コンセプトとしても、正しく、楽しさを突き詰めてできあがっています。

ホンダのビート、これは660ccの4気筒エンジンを運転席の背中に置いた2座席のオープンカーですが、そんなエンジンをべた踏みで回しても大して速くない、正真正銘の遊び車でした。面白くて病みつきになりましたが。

私も若かったので、ドライビングスキルを養うのに一役買ってくれたと思います。結構な頻度で山へ行っては、ぐにゃぐにゃのカーブを泳ぐように走り回っていました。ある日、このまま行くと死ぬな、というイメージが浮上し、そうならぬうちに卒業を決めました。エンジンが後ろにあるので前には空間しか無く、どこかへ突っ込めば両足が無くなりそうでした。速度はそれほど出ませんが相手があれば加算されます。エアバッグは付いていましたが、ドライバーが死亡する事故を、自ら起こしかねないことは容易に想像できました。決して危険なクルマだと言いたいわけではありませんが、お調子者の性格からして、重大事故を引き起こしかねない不安が強まりました。

8月7日(金)にアクアラインを超えて千葉県に上陸します。CX30、これは背の高いSUVと言われるジャンルになりますが、中身は普通の乗用車で、ご存じの通り、現在の売れ筋となるデザイン、ファミリーユースなどに最も使い勝手がいいと言われる形状をしています。出勤先の立体駐車場をいつでも利用可能なように、車高は1500mmに留めたいのですが、はっきりとその数値で制限していたところは利用しなくなりましたので、1550mmを上限とすることができます。その範囲に収まるサイズなので、選択肢に入れることにしました。Mazda 3に続いて販売開始された新型車種です。

マツダが誇る新しい仕組みのエンジン、Skyactive-Xを搭載するマニュアル車も一度乗ってみたくて検索しました。それと4WDを兼ね備えた3は日本全国に1台だけ試乗可能なものがありましたが、所在地が広島でしたので諦めることにし、車種がCX30であれば、それが千葉にあるとわかって予約をしたのです。同時にロードスターの1.5L(ソフトトップ)にも乗ることができました。

感染拡大防止の観点から、営業の方は寄り添わず、キーを渡されると30分くらいで戻ってきてくださいと言われて放置です。来た道を少し戻ってぐるっと回ったつもりが迷ってしまい、初めてのクルマでカーナビの設定方法もわからず、スマホに頼ってなんとか帰れました。

CX30のMT / skyactive-x / 4wdという組み合わせは、それはそれで悪くなかったです。上質でした。ただし、視界が高い位置なのは、単純に好みではありません。やはり地面に近い方が好き。そこそこ大きいクルマを動かしている感覚があり、ゆったりと乗れていますが、もっとコンパクトに感じさせてくれる方が好き、とあって買うことはないなと思いました。新エンジンは前回の試乗でATに乗っていますが、上まで回さないのでどうということもありません。たしかマイルドハイブリッドでしたっけ、発進はモーターアシストが加わっているのだと思いますが、とてもとてもスムースで、癒やしのクルマだと思いました。でスーパーチャージャーも付いてるから、ダッシュ力もあると。文武両道な優秀さです。燃費は少しいいくらいなので、ディーゼルのように車両購入時の差額を燃料代で埋め合わせるのは、事実上不可能になります。たしか1.5Lガソリンエンジンから、100万くらいの開きがあったんじゃないですかね。非常に高額です。

ですから車体を3にして、マニュアルで乗るなら1.5Lでいいんじゃないかな、などと思い、ロードスターとも基本的には同じエンジンですから、3に乗らなくても乗り味の想像はできるのではないかと考えます。ロードスター(ソフトトップ)は、しかしRFとは全然印象が変わります。CX30の高級エンジンから乗り換えたせいでしょうか、車体が軽いのに力が全然足りないと思いました。いえ、きびきび走るのに回せばいいだけなのですが、常時そのような運転をするのは、今は違うのではないかと思います。余裕が欲しいです。

オープントップも試したくて、途中から開けました。それが大きな間違いで、8月7日の千葉の気温、太陽の強さを甘く見ました。帽子も被っていないですから、正気では居られないハードな試乗になってしまいました。

1.5L NAエンジンは、思い描く走行感は提供されないだろうと推測でき、この試乗は成果がありました。室内の静かさ、そしてボタン一つでの屋根の開閉、色々な意味でロードスターは2LのRFが私の好みです。先の問いへの答え、ソフトトップを試乗していたらロードスター、ひいてはMTに乗ろうとは考えなかっただろう、です。






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