サドウスキーの現在

昨日の更新を行うと、例によってグーグル先生の差配によって私のユーチューブ・アカウントにはサドウスキー関連の動画が散見されました。最近この反応速度に呆れます。それでなんとなく片仮名表記に変えてみます。

日本から見れば、ロジャーは日本国内の供給元、配給元共に袂を分かちました。2018年頃だったでしょうか。その後のパンデミックという危機を乗り越え、ワーウィック社への移管が無事に終了し、我が国への入荷窓口はワーウィックブランド込みで、かつてフェンダー/ギブソンの輸入元であった山野楽器が務めることになります。

同時に、ロジャーのショップが組み込みを行うNYC製品の流通がなくなりました。まだ買えるとは思いますが、直接のやり取りとなるため、ルートが必要です。私なら伝手を頼って新規オーダーも在庫品の購入も、たぶん行えるだろうと確信していますが、まったくその気はありません。

さて、ワーウィック(フラマス社)が製造するサドウスキーベース(当面、ギターを作る計画はないそうです)は、私感では、実際に所有し使っていた国産メトロよりも、より「楽器的」な手応え、音色の深みのようなものを備えたと見ており、米国内で調達された汎用の楽器用材をショップで組み込んだ従来品(NYC)よりも、あっさりとクォリティを上げられたとすら思えます。NYCは3本(4弦・5弦・5弦FL)愛用してきましたが、ものとしての使いやすさ、実用性で選んでいたけれど、なんかドイツ製はそれ以上の何かを与えてくれる気がします。ロジャーのご威光は薄れるけれど、却ってそれが良いのかもしれません。

日本では、高すぎるNYCとメトロラインの中間を埋めるといった捉えられ方でしたが、TYOという、日本国内の「カスタムショップ」がありました。それは実際にプロジェクトリーダーと呼ぶべき肩書きの方に管理された、言わば「マスタービルド」でもあります。ユーザーやショップによってはTYOはNYCよりも使い勝手が良い、などと高評価でした。多忙であると受注を断ったり、余裕ができると再開したりと、いつでも手に入るものではない希少性も価値を高めていました。もちろん細かいオーダーに、極力答えてくれる姿勢が、サドウスキーブランドの中では希有でした。

昨日、2022イヤーモデルの限定生産品が、搭載するピックアップの都合でナローネックにてローンチされたことを、ひっそりと祝していました。これはサドウスキー史上、初のことでした。ネックプロフィールまでモデル専用で用意するとは。さすが大規模CNCがなせる技です。

一方、同モデルがメトロラインとしての150本に加え、マスタービルドとして40本が提供されます。4弦、5弦、フレッティド/フレットレス、右用左用を合わせての総数となります。

その違いは、出ている情報からは、フィニッシュがグロスになること、ネックシャフトがフレームメイプルになること、指板がスネークウッドになること、ヘッドストックの突板にもスネークウッドが使用されること。指板の変更によりポジションマークも黒から真珠貝に変更されます。というわけで主に見た目、という印象です。

マスタービルドとはなんぞや? これには明確な答えが見つかりませんでした。フェンダーのように、社内ルシアーが直接担当する、といったものではないようです。ワーウィック内の、サドウスキー担当課長といった人物はお目見えしておりますが、では彼が監督し製作するもの、というわけではありません。

ユーチューブを利用したマーケティング活動も積極的に行う現ドイツ・サドは、オーダー品と思しきカスタムメイドを頻繁に紹介しています。それらはマスタービルドと呼ばれますので、ルシアーは不在でも、TYOのような役割かと推察しました。ただ、国内からの正規ルートでのアクセスは今は不可のようです。マスタービルドものは輸入され、店頭に並んでおりますが、おそらくは配給されたものと想像します。

空想でばかり論じていますが、確実なことは、ごく印象的であった2022年リミテッドの5弦は、フレット数が22であって欲しかった以外の文句は付けようが無く、まぁ34インチよりも長かったら良かったのに、と僅かに思いますが、別にそれでもいいです。かつてこのようなフェンダーボディにPUだけ、それを載せました的な楽器が、全然出せていなかったミュージックマン(スティングレイ)っぽさが、リアハム単体でかなり迫れていたのが嬉しさを増しました。

で、それをシングルにタップしてフロントマイクとミックスしたジャズベースの領域を確保しようとした時、そのフロントJにコイルモード選択スイッチを与えたことには見識を感じます(4弦ベースでは省略されます)。

Jスタイルの、見かけシングルコイルのフロントPUはスタック構造でハムキャンセルできるものです。これを上側だけのシングル、両者をシリーズ/パラレルで繫いだ、結局リアハムと同様の3点切り替えスイッチとなります。

リアハムをシングルにした時にフロントもシングルにできないと、両者でのハムキャンセルが不可能です。そこがちゃんとしている。リアをハムにするなら、フロントもハムキャンセル状態でないと、それもまた困ります。

アメリカ的な大らかさを捨ててもなお、緻密にアメリカ文化を体現する姿勢から生まれる、新しい音楽の道具の提案を見て、日本との協業ではこうはならないなぁと痛感した昨日今日でありました。


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