Ashdown社について思うことを少し の2

では着地点までを一気に行きましょう。年末にABM-600-EVO4というモデル新品約6万円を、大手楽器店で買いました。自身にとっては思いがけない落とし所でした。価格的に、ウォルターウッズなどと違って気軽に試せるものでもありました。中古だと、同等の旧製品が2〜3万円で出ています。AB級の600Wアンプが新品で6万て、ちょっと考えられません。

家に、旧タイプの重たいヘッドは、閉店したお店から譲り受けたHartke HA3500が2台あります。8Ω時240Wで、十分な出力ですし、乾燥重量9.3kgはD-classアンプであるAmpeg PB800よりも軽いので、別にこれでいいじゃありませんか。確かに。

Hartkeは韓国Samsonの1ブランドですから韓国製。Ashdownのこの低価格は中国製で実現しています。Hartkeは教えに行っている教室の備品だった頃、原因不明のノイズ発生、たぶん電源から拾ってくるのだと思いますが、に度々悩み、何度も点検修理に出しています。また譲り受けたヘッドが2台というのも、1台目にトラブルが出て、お店がメイン稼働できる新品を導入していたためです。私の印象として、Hartkeは脆い、壊れやすい、ノイズ拾いやすいというデメリットがありまして、それは限定的な条件下にしか当てはまらないかもしれませんが、直面していた事実が、仕事に持っていくことをためらわせます。

Ashdownはアニバーサリー特別仕様として、いや仕様は同じなのですが、この主力モデルを英国内で組み立てたものを限定販売しました。それが販売店のセールで、なんと正味、あの値段だったのです。ちなみに同モデルのレギュラー品は本家サイトでの直販価格が£729で、只今のレートで103540円になります。昨年BMW MINIを買って英国びいきとなっていますので、これは嬉しい。ていうか、ずっと英国には憧憬を持ち続けていて、父の香典返しは、全てWedgwoodの品にしたくらいです。ここぞとばかりに買いまくった。Filofaxだって英国で買った革製のを20年以上使っていました。

限定品はパネルが光沢を抑えた渋いシルバーで、外装のレザーにステッチが入ります。見た目などどうでも良いのですが。そして品質という点で、違いがあるのか、と言えば「同じ」でいいんじゃないかと思います。新品なんで、トラブルなく使って行けて、何かあったら保証が効く、その安心感と美観の美しさ(使用感の無さ)が嬉しいです。とにかく中古でばかり入手するので、たまに買う新品がまぶしいです(MINIも中古)。ここが心意気というものですが、ブリティッシュの限定品もチャイニーズの通常品と同価格で供されます。

それで、まず機能面で言えば、オン・オフできる9バンドのEQ、オン・オフできる(バルブ)ドライブサーキット、オン・オフできるコンプレッサー、オン・オフできるオクターバーがビルトインされています。私は全てカットです。あとプリシェイプスイッチがあって、Trace Elliotにあったのも思い出しましたが、あれと同じミッドカットのプリセットトーンが得られます。トレースは「どんしゃり」だと言う人が昔多くて、だから使いにくいだの聞きましたが、単にこのスイッチが入っていただけではないかと思うのですが。

もちろん、私はこれもオフ。パッシブ/アクティブスイッチはパッシブで。と、オールスルーの状態で満足できるピュアで太い音がストレートに出ます。悪く言うつもりは全くありませんが、コレクションした、あのMomarkでは出すことのできないタイプの音です。

2000年前後に、ドイツのGlockenklang Soulというヘッドを持っていました。直接の比較ができませんが、肉薄していると思います。Soulはトランジスタですが、ABMはプリアンプに12AX7を使用しています。それよりももっと前にスウェーデンのEBS Fafnerを使っていましたが、こちらもECC83(12AX7と同一)を擁します。いいアンプでしたが肉薄しています。ABMに、私は全く不満を、今の所は、感じておりません。ただひとつ問題がありますが。

それは空冷ファンの作動音です。現在の住まいには3畳の防音室が入れてあり、アンプ類は全てその中で音出しをしています。防音室は密閉度が高いため、人員の生命を守るための換気扇を常時運転させる規約があります。それよりもうるさいです。また、夏場のためにエアコンを備え付けてあり、最も安く買えるモデルの、特別に対策のない作動音は静かといえるはずもありませんが、それよりもうるさいです。ちょっとした掃除機並みです!

Ashdownのファンはダブルで装着され、スイッチオンから数秒でマックススピードで回転します。で、このことを私は事前に知っていたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=Pvv94DGN6NQ
Andertonは英国内の楽器店であり影響力のあるYoutuberですが、ここでAshdownのファンノイズを"annoy"と言っています。にも関わらず、購入時に店頭で確認して、その店内のうるささを勘定に入れておきながら、この程度ならと容認してしまったのです。

今は、ですから室内で積極的には使っていません。いずれファンを静音タイプに交換するか、温度検知式にするか、何か手を入れたいと思っています。聞くところによると、アンプは熱をこもらせないよう、熱くなくてもエアの循環を確保しなければならないのだそうです。CPUとはちょっと違うのですね。改造しない方がいいのかな。でも部屋でも使いたいですけどね。

さて、パワーアンプとしてどうか、が本来の焦点でありました。この機種の背面に"Line In"の端子があります。Ashdownは回路図を公開していませんので、どこにその信号が合流するか不明でしたが、購入後にやってみると、これの使用目的はクリックを入れたり、マイナスワンを流したりする用途でした。外部プリアンプのラインアウトをそのまま受ける使い方に適合しません。それこそ、Ampeg、EBSの一部のアンプにはエフェクトループの他に"Preamp out"と対になる"Poweramp in"のコネクターがあり、セパレートして使えるようになっていますが、その意味での"Line in"ではありませんでした。

軽く失望しましたが、一方エフェクトループがマスターボリュームの直前に割り込むよう配置され、ここに外部プリアンプの接続が適合します。マスターボリュームというのは、プリアンプのアウトレベルを決めるもので、パワーアンプのアッテネータではないことの方が多いので、本当はそれもジャンプしちゃって、文字通りのパワーアンプの入力直結が嬉しいのですが、多様なユーザーを想定すると危険性もあって一般的でないのかなと思ったりします。プロ用というのは、そういうところの自由度が確保されてるものを言うと思うので、先に挙げたAmpeg、EBSの一部の製品は、まさにプロ用ですね。

というわけで、ABMをモノラル・パワーアンプとして使用することは、信号ロスなく可能であることが確認でき、たいへん結構です。ただ、痛痒がないかというとさもあらず、表面の楽器入力端子に、ダミーでもいいから何か挿しておかないとエフェクトリターンがミュートされる謎の仕様、まぁこれも安全弁なのかもしれませんが、ちょっと余計かなと思います。当初は面食らいました。音が出なくて。

2020年の大晦日、何か書こうと思い立った時の、一番直近での買い物がこれでした。では何故これを選んだのか、を軽く説明するつもりが回り道を重ねて遠大なストーリーになってしまいました。正規品、新品、英国製、プリメインとしてもパワーアンプとしても実用上十分かつ正統的なアンプの良さを備える6万円のリグって、他にないよね。と悦に入っています。早くライブにお目見えしたいものです。おわり

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