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【番外編】5→4バックの可変式から読み解くライプツィヒの狙い

今回もバイエルンvsライプツィヒのレビューです。2週間も前の試合ですがかなり面白い現象が見られましたし、対トッテナムのCLでも現象は違えど同じコンセプトの形が見られたので番外編として書いていこうと思います。前回の記事をまだ読んでいない方はぜひそちらを先に読んでいただくと今回の記事での理解もよりしやすいかと思います。↓↓↓

前回の記事とは反対に、今回はライプツィヒの攻撃面、バイエルンの守備面にフォーカスしていこうと思います。番外編ということもあり個人的な推測が多めに含まれていますが「そういう風にも考えられるんだなぁ」くらいの気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

Ⅰ、5-2-3から4-3-3への可変

まず始めに、この試合を見た方なら誰もが思ったであろう「アダムスのポジションどこだ?」という疑問から始まります。守備時は右ウィングバックの役割を全うするも、攻撃時になると最前線、しかもサイドよりかは中央よりで裏へかけひきをする様子が幾度となく見られました。

次に不思議になってきたのがビルドアップにおけるDFラインの人員です。アダムスが攻撃時に前線に飛び出していくことにより、「アダムスが出ていったスペースは誰が埋めるの?」といった新たな疑問点が浮上してきます。

この2点に注目して観戦していると後半開始直後の47:30のシーンが目につきました。久しぶりにブンデスを見たので最初はカメラアングルが頻繁に変わることに戸惑いがあったのですが、普段のアングルでは見切れるところまで映せていることもあり、かなり実用的でここから新たな発見することも多々ありました。実際にこのシーンでもライプツィヒの4-3-3という新たな発見がありました。

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このシーンからビルドアップにおける2つの主原則がわかります。
①DFラインは5バックから4バックに。
②アダムスが右インサイドハーフ、ライマーがアンカー気味になり中盤が逆三角形の形になる。


バイエルンの守備に対してどのような効果があるのかを解説する前に必ず言及しなければならないのが今回の試合で前線の中央を任された「ダニ・オルモの役割」についてです。ナーゲルスマンは今シーズンこのバイエルン戦まででリーグ戦5ゴールを決めているP.シックではなくダニ・オルモをスタメン起用してきました。シックは怪我をしているわけでも、コンディションを崩しているわけでもないので(前節は途中出場からゴールを決めています)この起用からナーゲルスマンの意図が見えるのではと考えました。実際にどのようなタスクを任されていたのでしょうか?

この試合を通してダニ・オルモは裏に抜ける動きは少なく、逆にライン間で受けるような動きを度々していました。完全なトップ下というわけでも、トップというわけでもない、まるで0トップのような働きを託されていました。

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①DFラインは5バックから4バックに。
②アダムスが右インサイドハーフ、ライマーがアンカー気味になり中盤が逆三角形の形になる。
③ダニ・オルモの0トップ
この3つにフォーカスすることでバイエルンの守備に対してどのような効果があるのかを読み解くことができます。キーポイントとなってくるのは「数的優位」です。

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このように4-3-3+0トップ型を使うことで中盤と後方で数的優位を作ることができます。ナーゲルスマンはバイエルンが4-2-3-1でくることを想定していてこの布陣を採用したのでしょう。セオリー上、中盤でも後方でも必ずフリーマンが生まれる構造になってますよね。もしCBが中盤の数的不利を埋めようとしても、前回の記事でも書いたようにエンクンクとヴェルナーが常に裏を狙っているのでロングボールでそこを狙えるといった利点もあります。

加えて後方から中盤にボールが渡った時の攻撃の形も見ていきましょう。

前線5vs4

基本左はアンヘリーノ、右はヴェルナーが幅をとり、ハーフスペースにおいては左エンクンク、右アダムス、中央をダニ・オルモが担当するといったバイエルン同様5トップ型で攻めていました。狙いとしてはこれまた数的優位でしょう。相手4バックに対して5トップをあてて、どこかしらに1人フリーマンを作ることができます。後半では特にアダムスのハーフスペースをとる動きからアラバをつり出し、ヴェルナーとのコンビネーションを図るシーンが目立ちました。

Ⅱ、想定外のプレッシング

前半はライプツィヒ側の守備上の問題もありかなり圧倒される展開となりますが、修正を機に後半からペースをつかんだライプツィヒ。しかしながら後半に入ってもバイエルン守備陣をショートパスなどで崩していく展開や5トップで相手4バックを困らせるシーンはあまり見られませんでした。それはなぜなのか。この疑問に対する答えは見出しにもあるように想定外のバイエルンのプレスのかけ方にあります。

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バイエルンはこのように1トップのレバンドフスキがアンカーを抑え、両サイドハーフがSBへのコースを切りながらCBにプレスを掛けにいっていました。これの何が想定外なのかというと、レバンドフスキの守備タスクです。これは完全に自分の推測なのですがナーゲルスマンはレバンドフスキがアンカーではなくCBを抑えてくることを想定していたのではないのでしょうか。しかしながら、このバイエルンのプレッシングにより狙いとしていた数的優位を作ることができず、中盤は4vs4の数的同数、後方は2人で4人を抑えられる構造になりビルドアップで苦戦を強いられることになります。たとえ何かの拍子でSBにボールが渡ったとしても中盤がスライドするなどといったケアも十分でしたし、ダニ・オルモにキミッヒがマークを専念できることでライプツィヒ5トップに対しても4バック+キミッヒの疑似5バックでライプツィヒの攻撃に対応できていました。

Ⅲ、最後に

かなり大胆な可変式を採用してきたライプツィヒですが結果的にはあまり機能せず無得点で試合を終えました。ただ、いかなる場面でも相手に対して数的優位を作ろうとするナーゲルスマンの考えには感心するしかありません。CLのトッテナム戦でも相手が4-4-2で守備ブロックを組んでくることを想定しての3バック採用。1つの攻撃の形だけでなく様々なバリエーションの形を効果的な場面で使っていく。また、それぞれの相手に合わせた戦術を使うことのできるチーム作りやトレーニングを日々行っているのがわかったような試合でした。1年目でこの仕上がり具合は流石としか言いようがありません。ブンデス首位争い、そしてCLでどこまで躍進するのか、今後のライプツィヒの動向には要注目です。

ナーゲルスマン率いるライプツィヒをテーマに2つの記事を投稿しましたがいかがだったでしょうか。今回は読んでいただきありがとうございました。面白かったよ、って思ってもらえればぜひSNSで拡散、意見などがあればコメント欄、Twitterにドシドシ寄せてください。このアカウントのフォローもよろしくお願いします。今後とも記事をアップしていきますので次回も読んでいただけると幸いです。ありがとうございました。

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