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日本近代文学館 第59回 夏の文学教室〈異文化を問いなおす-ことばの冒険、ちがいの発見〉

会期: 2024年8月3日(土)
会場: 有楽町よみうりホール(ビックカメラ7F)
後援: 読売新聞社
協力: 小学館

古典から近現代まで、文学者の眼に異文化はどのようにうつってきたのか。さまざまな文学作品から問いなおします。(公式siteより引用)

◎グレゴリー・ケズナジャット「越境者との遭遇」
日本の近代文学が”外国人”をどのようにとらえてきたのか?を分析。
・明治以降の多くの場合、”外国人”は、「近代化」「キリスト教」の象徴としての存在として扱われてきた。
・戦後になると、その象徴するイメージは、「占領下の記憶」「米軍の暴力」あるいは「基地の中の兵士」としての存在であって、一人の”人間”として描かれてきたとは言い難い。
・例外は、夏目漱石。「こころ」や「三四郎」には、人としての特徴をそなえた存在として登場する。
・日本語を母語としない西洋人で日本語で小説を書いている人は、未だに少ない。その越境者としての視点が文学性を生むと講演者は考えている。

◎綿矢りさ「パッキパキ北京、シャンシャン上海」
・最新作「パッキパキ北京」を著したきっかけを紹介しながら、海外の旅を題材とする小説を書くことを受講者にお勧めした。
・綿矢さんは、家族の仕事の都合で、2022年に半年ほど、北京に移住していた。最初は自分の仕事をするつもりはなかったが、編集者の提案で、滞在中の経験をもとに小説を書くことに。ご自身はあまり出かけずに緊張して過ごされていたようだが、自分とは真逆のパキパキした仕事のできる女性が北京に来たらどんな生活をするのか?を想像して、主人公のイメージを作ったのだとか。
・海外を題材にすると、日本の読者にとっては、少々情景描写が細かくても、素直に受け止められるとのこと。京都などを舞台にすると、むしろ、その細かい描写に何かしらの意図を感じられてしまうように思うとのこと。
・書くことを意識して過ごしたことで、より滞在が豊かなものになったらしい。
・旅した海外の街を舞台にすると、描写力が高まるので、お勧めだということだった。

※毎年開催されている文学教室ということだが、今回、たまたま、この催しの載ったリーフレットをみたことから、最終日のみ申し込んだ。綿矢さんのファンなのだが、講演を聴くのは初めてだったので、楽しみにしていた。
しっかり、講演内容を文章にして準備されていて、それを読む形式かと思いきや、ときどき、顔を上げて、そのほかの情報も付け加えるスタイルに。さすが、関西人、ユーモアを交えた楽しい講演だった。




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