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【日本のMVの歴史】そうそう! 私が「日本最古のモーション・グラフィックスって多分、美大生の頃に授業で見たNHKの家紋のやつ」っていってた作品(番組)はこれだ!

20代後半より、日本のMVシーンを記録し続ける映像ライターとして、一度【日本のMVの歴史】を総括してみようかと思い立った本年。11月にはLOFT9 SHIBUYAさんでイベントを行い、素晴らしいゲストのみなさまと共に80年代から現在までの時代背景を駆け足で整理させていただきました。

が、MVは、音楽表現、業態、映像機材、ソフト、インフラ、時代の二ーズや空気感などなど、様々な影響によって多様かつ急速に変遷するコンテンツなので、一度のイベントではなかなか拾いきれず。2018年は、時代時代の要素をひとつひとつ丁寧に調査するのか、何かひとつの視点に絞って掘り下げるのか、手探りではありますが真摯に模索し、自分なりに【日本のMVの歴史】をまとめる年にしたいと勝手ながら思っております。みなさま、引き続きのご指導、ご鞭撻、およびご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

さて。本日は、かねがね私が「日本最古のモーション・グラフィックスって、美大生の頃に授業で見たNHKの家紋のやつじゃない?」って曖昧に公言していた作品の詳細が判明しましたので、ここに改めて紹介させていただきます。

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NHK特別番組『日本の美』日本の文様 *NHKアーカイブス

番組詳細(*NHKアーカイブスHPより引用)
日本の伝統美を追求したフィルム構成番組。広く海外諸国との番組交換や国際親善に役立たせようというもの。「日本の文様」は5本シリーズの一つ。着物や調度品に描かれる家紋などの文様。日本人は身の回りの自然や世界を、円や直線で表現してきた。その心が形となった文様の美を、武満徹作曲の音楽と共に描いた。第1回ルギー王立実験映画祭グランプリを受賞。

制作者(敬称略) 監修:岡田譲・山辺知行 美術:杉浦康平・粟津潔 切紋:花田紋正 作曲:武満徹 構成:吉田直哉 撮影:岩井禧周 録音:稲村清 編集:大高晋

放送年:1962年 23min 白黒モノラル放送

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少し経緯を説明させてください。

当方は武蔵野美術大学映像学科に在籍していたのですが、当時の学科長がNHKスペシャルなどを数多く手がけた名ディレクターの故・吉田直哉教授でした。私はまったくの不良学生で、芸術よりも遊びや酒に夢中のモラトリアム堕落者でしたが、なぜか、吉田先生は寛容に対応してくださいまして。

その吉田先生が、様々な映像作品や番組アーカイブを見せてくださった中で、最も印象深かった作品が、言葉の説明を廃し、画と音楽のみで日本の家紋等を紹介した『日本の文様』でした。

本作を拝見したのは、今から20数年前の、19歳か20歳の頃。その10年後に、当方はMVライターとしての道を爆走し、モーション・グラフィックスについての記事をたくさん書くに至ったのですが、その頃、よく思い返していたんです。「そういえば、吉田先生が見せてくれたモノクロームの家紋のやつ、日本の元祖モーション・グラフィックスだったのではないか?」と。

確か、家紋のグラフィックのひとつひとつがフィーチャーされて、それらが音楽に合わせて4分割、6分割、9分割になったり、1つが増殖したり、回転したりする。そんな記憶を頼りに、本作についての情報を募集してみたところ、なんと! 本作の全編を再見する機会をいただきまして! 

うん、記憶と違う!

モーション・グラフィックスといえば、「音楽と映像のシンクロがきもちいい感覚映像」で、MVはもちろん、映画のタイトルバックや音楽専門チャンネルのSTATION ID、モーションロゴなどで活躍している手法ですよね。90年代中頃はTOMATOが制作したU.F.OのMVや、teeveegraphicsの小島淳二さんが2000年に制作した砂原良徳「LOVEBEAT」以降、感覚没入感が最高な作品に耽溺したものです。

その音と映像の完璧なシンクロ信号と比べると、本作は、映像(V)とBGM(A)の信号の両方が偶並走している感があるのですが。とはいえ、これはデジタル編集どころの騒ぎではない1962年産のフィルム制作された実験映像で、しかも全国放送された先駆的な作品(番組)であるわけです。私が生まれる12年前に、NHKで全国放送されているんです。マジですごいです。 


この作品の、全編を、拝見させていただきまして、改めて面白いなと。ちなみに、私が分割増殖描写だと思っていたのは、一部をのぞいて記憶違いで、ひとつの文様パターンを連続描写した着物や暖簾のデザインを映していたカットでした。が、ひとつの文様を武満先生の音に合わせてぐるぐる回したり、カメラワークのヨリ、ヒキ、パンを最大限に(今から見返すと過剰に)駆使したりする描写が、「新しい映像表現」として国営放送の波に乗る。その表現、試行錯誤、伝達手段はとんでもなく革命的だったはずなので、震える思いがします。

本作、みなさまにも全編共有したいのですが、今回は公開・複製禁止の条件で拝見しましたので、公開する際はしかるべき手続きを行ってからにします。ひとまずNHKアーカイブスHPのリンクのみを貼らせていただきますね。

さて、こんな感じで、この場では自分と映像とMVの歴史の断片をつらつらと記録して参ろうと思います。引き続きよろしくお願いいたします。





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