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【新曲MV解説】Mr.Childrenが仕掛ける、20年の歳月をかけた壮大で圧巻のセルフオマージュ ※ネタバレ注意※


【はじめに】
本noteでは
Mr.Childrenの新曲「Fifty's map ~おとなの地図」のMusic Videoおよび楽曲について解説しています。
ファンの心理を見事に汲んだ秀逸すぎるアイデアに感動と興奮が止まらず、何とも言えないこの気持ちや起きた事象を文字にせずにはいられなくなってしまったため、単なる自己満足で記事を作成しています。
よって本来は私のスマホのメモアプリの中にとどめておいても良いくらいなのですが、SNSを見ていると「これ、どう言語化したらいいのかわからない・・・」「この気持ちは何なんだろう。」など、私と同じような気持ちになっている方が非常に多いように感じましてこの感情を共感し合える仲間が一人でも増えたらという気持ちで公開させていただきました。

とはいえやはり本来は文字や理屈で解説するよりも、
映像で初めて見てこその体験だと思いますので、
まだMusic Videoを見ていらっしゃらない方は
まずは是非是非そちらをご覧ください。


※関係スタッフ/制作者の方(絶対見ていないですがメンバーの皆様)、勝手に画像など色々と引用してしまい申し訳ございません。
あくまでファンとしての個人的利用ですのでご理解いただけたら幸いです

↓↓↓以降ネタバレ注意↓↓↓
(現在実施中のツアーに関してのネタバレはございません)


2023年10月3日。
国民的ロックバンドMr.Childrenことミスチルが、新曲「Fifty’s map ~おとなの地図」のMusic VideoをYouTubeに公開しました。

●Mr.Children 「Fifty's map ~おとなの地図」MV
https://www.youtube.com/watch?v=AJefRdTWcYM

10月4日発売のNew Album『miss you』の2曲目に収録されている楽曲で、テレビやラジオなどでも事前オンエアはなく、YouTube(+サブスク)で先行配信&解禁という状況でした。
アルバムごとに明確なテーマを掲げ、毎回驚きと発見を与えてくれるミスチルが私は大好きで、なかでも新曲を耳に出来る瞬間がこの上ないワクワクする幸福のひと時です。

そんな至福の瞬間に飛び込む心の準備を整えたところで、
「ちょっと待った」と言わんばかりに私の思考回路を停止させたサムネイルがこちら。

YouTube上のサムネイル


!?!?!?

ミスチルファンであれば、誰もが既視感を感じるこの情景。
そしてそのシーンから自然と脳内で再生されるのは、桜井さんの「ねえ」という優しい呼びかけ。


そう、これは今から20年前。2003年11月に発売された両A面シングル『掌 / くるみ』に収録されている「くるみ」のMusic Videoのワンシーンそのものでした。
当時は今のようにYouTubeやSNSでMusicVideoが容易に見れるものではなかったので、衛星放送でのPV特集を何度も繰り返しテレビの前に張り付いて見ていたのを思い出します(だからこそ余計に脳裏に焼き付いている)。


「くるみ」は、“隠れた名曲“なんてものとは程遠く、日本中どこを探してもすぐに見つかってしまうくらいファンに露骨に愛された曲でライブでも何度も披露されており、ミスチルファンでなくても耳にしたことがあるリスナーが多いのではないでしょうか。

諸説あるようですし、何より正解はないと思いますが、
「いつかやって来る未来」=来る未=くるみ、といった風に、未来という概念を擬人化させて書かれた楽曲と言われています。
「ねえ くるみ」と呼びかけるような歌い出しも印象的です。

歌詞もメロディもアレンジも最高。
※wikiに色々エピソードもあるのでよければ。


そんな「くるみ」のMusic Videoはというと、
家族も愛想をつかして出て行ってしまい、白タンクトップで家で一人さみしくお新香も納豆もふりかけも乗っていないまっさらな白米をかきこむ50-60代の独身男性が主人公。
バラバラになってしまったかつてのバンド仲間に声をかけ、それぞれ家庭や仕事がありながらも一念発起して何とかおやじバンドを再結成させ、
無人の結婚式場や老人ホームなど、決して望んだ華やかなステージではないけれど強い信念をもって演奏を繰り広げるその姿に胸を打たれてしまう映像になっています。
「くるみ」が放つ優しく切ないメロディと、この映像の何とも言えない哀愁がマッチしていて当時から私の大好きな作品でした。


見どころはラストシーンなのですが、その布石として楽曲の序盤で、
主人公が再結成するバンド名の候補を「Mr.Children」か「Mr.ADULTS」の二択に絞り、スケッチブックに書いた前者に×を、後者に〇をつけるシーンがあります。
よってMusic Video内で描かれるおやじバンドは「Mr.ADULTS」という名前で活動をしているということになります。


話はラストシーンに戻ります。
ライブ終わりにバンドメンバーと一緒に河川敷を歩いて帰る主人公。
ふと思い出したようポケットからバンド名が書かれた紙を取り出しくしゃっと丸めて投げ捨てて先を歩くバンドメンバーを追いかけて去っていきます。

そして偶然通りがかった男性がその紙屑を拾い上げ、くしゃくしゃの紙に書かれた〇の付いた「Mr.ADULTS」ではなく、大きく×が示された「Mr.Children」の方に目を向ける。
去っていた主人公の背中を見送り、主人公とは反対方向を振り返って歩き始めるのと同時に「1989年・Mr.Children結成前日。」というテロップが表示される、というエモすぎる演出になっています。

そしてその偶然通りがかった男性というのは、もちろんこのお方。

若い。圧倒的王子様感。

フィクションでありながらも、バンドの結成秘話を絡めた話になっており、ミスチルにとって重要な意味を持つ楽曲だったことは間違いないはずです。


と、ここまでは20年前の楽曲「くるみ」の話。
ようやく話は現在(私の思考回路が止まったところ)に戻ります。

以降ネタバレ要素が強くなりますのでご注意ください↓

そんな「くるみ」のMusic Videoの、主人公が先を歩くバンドメンバーを追いかけていく河川敷の場面が新曲MVのサムネに使われていたわけです。
もしこれが人為的ミスだったら事務所さんやレコード会社さんのYouTube担当者のクビが飛ぶのではないかとヒヤヒヤしましたが、結果、飛んだのは私の目ん玉の方でした。


「Fifty's map ~おとなの地図」は、
現代の地下鉄の駅のホームで、一人のサラリーマン男性(50-60代?)がスマートフォンで「くるみ」のMVを見ている場面から始まります。

私もよく地下鉄のホームでミスチルのMV観てます。いたら声かけてください。

なるほど。
現代の象徴のような地下鉄のホームで、「くるみ」のMVを見たこの主人公の心の中で何かが燃え上がって新しいことにチャレンジして自分だけの“おとなの地図”を描いていくストーリーなんだな、と勝手に予想します。

が、全然違います。
テニスを習い始めるでもなく
大学で学び直し始めるでもなく
世界一周の旅に出るわけでもありません。

何とそこから約5分、楽曲のラストに至るまで
「くるみ」のMVがダイジェスト的にそっくりそのままフル画面(時代を感じる4:3画角)で流れるのです。
合間合間でサラリーマンの表情が抜かれたり、現代の街の景色がフラッシュバック的に映し出されたりと、新しい要素はありますがそれはもうほぼ「くるみ」です。


動画タイトルが間違っているようにしか見えない①
動画タイトルが間違っているようにしか見えない②
動画タイトルが間違っているようにしか見えない③



はっはー。そういうことですか。
コロナの影響もあって音楽業界も中々厳しいと言いますし、ミスチル級のアーティストでも過去映像の再活用・活性化みたいな発想になってきますよね。
大丈夫。大丈夫。
どこか少し寂しいけど、
何より楽曲は素晴らしいし、こんなことで別に萎えません。
ずっと応援しています。うんうん。


そんな気持ちでラストの河川敷のシーンまで来たところで私は度肝を抜かれます。

9回裏ツーアウト3点ビハインド。
ここから世紀の大逆転がはじまります。



主人公がポケットから紙を取り出し
くしゃっと丸めて投げ捨てて
先を行くバンドメンバーを追いかけて去っていき
通りががった男性が捨てられた紙くずを拾い上げて、と


桜井和寿(2023 ver.)降臨。


あっけにとられている暇はありません。
さらに丸められた紙屑を開いていくと
そこに書いてるのはバンド名ではなく・・・


この紙のニュアンスを再現するだけでも大変そう。



この辺りからうっすら気付き始めます。


もしかすると自分はいま、
ただの過去MVのダイジェスト映像なんかではなく
とてつもなーーーーーく
ながいながい時間をかけた
今まで誰も見たことのない
壮大で感動的な物語を見せられているのかもしれない、と。


そして極め付きはラストシーン。

「くるみ」では振り返って画面左方向に歩き出していた桜井さんでしたが


もうこの背景に映る高層マンションすらも「くるみ」の頃から壊されず建っていてくれて、オーナーさん管理会社さん居住者のみなさま本当にありがとうございますと土下座したくなるほど愛おしい・・・

「Fifty's map ~おとなの地図」では振り返ることなく画面右手に歩き出します。


そしてその先で待っているのは・・・(もう若干期待はしていましたが)



というのが事の顛末です。
映像を見れば分かることを、ただただ自己満で文字に起こしただけですのでここまでわざわざ読んでいただいた方、ありがとうございます。


ここからは私なりの個人的な感想文です。
今回のMVを見て上手く言葉に出来ない方たちと少しでも感情を共感し合えたら嬉しいです。


まず結果として、
「Fifty's map ~おとなの地図」は「くるみ」のアンサーソングだった
ということになります。
ここまで明白に「くるみ」の映像を活用して全編構成しているわけですし、歌詞もかなり親和性が高いように感じます。
※“アンサーソング”なのか?という問いもあるかもしれませんが、過去曲と関連性が強い楽曲という意味合いで分かりやすいのでそう位置づけました

歌詞で過去曲に軽く触れたり引用したりする程度はあっても、過去曲に対する明確なメッセージ性をもった新曲を出すことはこれまであまりなかったように記憶しているので、ミスチルがアンサーソングを出すこと自体がまず新鮮でした。
加えてそのアンサーの対象に選んだのが「くるみ」という、ラブソングでも応援ソングでもなく、過去と現在と未来を謳った“人生の歌”であったと。
そして映像内でも分かりやすく2003年の<過去>と、2023年の<今>を比較させるようなセルフオマージュの演出を行い、分かり易くタイトルに“Fifty's”という年齢要素を盛り込んでいるということは、これはどう考えても、

「くるみ」が指し示していた、“いつかやって来る未来”が、
いよいよついにやって来たよ。

というメッセージに受け取れる気がしてならないわけです。

このメッセージだけでも何だかグッとくるものがあるわけですが、もう少し私なりに深堀りしていきます。

少し抽象的な話になります。


30代に突入したとき。
孫ができたとき。
久々の学生時代の友達と再会したとき。

人生の節目節目で、「あれから〇年か」「あの時はこうだったよね」「早いようで長かったな」といった風に感傷に浸ることは誰にでもあるのではないでしょうか。いわゆるノスタルジーってやつです。

ただどれも現在地から遡った過去のある地点ないしその地点から今に至るまでのプロセスの中で起きた事象やイベントの振り返りだと思うのです。

今回のMVを見て「もうくるみも20年も前のことか~あの頃は~」と現在地点からの過去を振り返った人もいると思うのですが、MVを見終わった私の感覚は少し違っていて、

突然20年前にタイムスリップして
20年前の自分視点で、20年後の未来(=今)を見ているような感覚に陥りました。
同時にこの20年という時間の経過を、これまで感じたことがないほど強く強く実感しました。

それはきっと、

“いつかやって来る未来”が、ついにやって来た

のではなく

“いつかやって来る未来”に、自分がようやくたどり着いた

ような気がしたからだと思います。


それはなぜか。

思い出してください。
「くるみ」では、桜井さんは振り返って左方向(=過去)に、
「Fifty's map ~おとなの地図」では振り返らず、メンバーの待っている右方向(未来)に歩いていくのです。

さらに「Fifty's map ~おとなの地図」は
“行こう”
という歌詞でラストを締めくくります。

過去を振り返ることなく未来へと進み続け、
ようやく今、”Fifty's”という名の“いつかやって来る未来”を通過し、
またその先の未来に向かって進んでいく。

そんな力強いメッセージを、楽曲と映像から私は感じ取りました。

よってもって、
よくある現在地点からの過去の振り返りではなく、
過去地点から未来(=今)に目を向けたことで、より一層リアリティをもって20年という歳月の重みを痛感したのだと考えています。

この時間の重みのようなものと、
楽曲が持つ力と、くるみの映像のエモさが相まって、
何とも表現しづらいこの感動的な気持ちをつくり出しているのではないかと私は思っています。


【さいごに】

最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
拙い文章でしたが楽しんでいただけたら幸いです。

タイトルで
『20年の歳月をかけた壮大で圧巻のセルフオマージュ』と書きましたが、
最も壮大で圧巻なのは、
ファン一人一人が、
ミスチルと歩んできた自分だけの20年があることだと思います。
それがなければ20年、50年、100年かけても意味がないはず。
ミスチルだからこそ成立した企画だったのではないかと感じています。


こんなに泣けるMusic Videoをつくってくださったスタッフの皆様、
こんな素晴らしい曲を書いてくれる桜井さん、そしてミスチル。
本当に最高で大好きです!!


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