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欧州MBA現地就活記_ネットワーキング

 今回はネットワーキングについて。ネットワーキングは、その人を利用するような印象を覚えるので個人的にはあまり好きな言葉ではないのですが、それ以外に言葉がないのでネットワーキングで統一します。
 私にとってスイスが理想的な国でしたが、スイスは欧州の中で最もVISAの要件が厳しい国でもありました。VISA問題を解決するために、非常にネットワーキングを重視している考え方になっていると思います(他の国ではここまでネットワーキングが重要ではないかもしれません)。 


現地就職の3つのドア

 卒業生からどのように現地就職したのかという話を聞いていくと数年前に流行った『サードドア: 精神的資産のふやし方』の話に近しいことを実践している人達がいることに気付きました。その本に出てくる3つのドアに合わせて、現地就職をする際に開けうる3つのドアを紹介したいと思います。

人生、ビジネス、成功。
どれもナイトクラブみたいなものだ。
つねに3つの入り口が用意されている。

ファーストドア:正面入り口だ。長い行列が弧を描いて続き、入れるかどうか気をもみながら、99%の人がそこに並ぶ。

セカンドドア: VIP専用入り口だ。億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる。

それから、いつだってそこにあるのに、
誰も教えてくれないドアがある。
サードドアだ。
行列から飛び出し、裏道を駆け抜け、何百回もノックして
窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に─―必ずある。

サードドア: 精神的資産のふやし方

ファーストドア:HR

 HRにアプローチしていく、要するにネットワーキングなしに求人に直接応募することです。ファーストドアへのアプローチの利点は、①実行しやすいことと、②目標を立てやすい(=進捗を感じやすい) ことが挙げられます。一方で、①非常に競争が激しく、②ポテンシャル採用されることはまずない(例外はリーダーシッププログラム)。自分の欧州における市場価値を確認するために応募しただけなので、あまり書けることはありません。量派の人を探してノウハウを聞くことをオススメします。

セカンドドア:Hiring manager

 MBA就活のネットワーキングにおいて、もっとも王道とされるアプローチ先です。Hiring managerや、Hiring managerの友達/同等以上の職位の人から紹介してもらえることを狙うことになります。
 実はHiring managerとHRはVISAに関して利益相反の関係にあります。HRからするとVISAを持たない極東のアジア人を採用する手続きは非常に面倒くさいとのことでした。ある会社の採用で2次面接が終わったタイミングでHRからVISA問題で採用が非常に難しいことが判明してしまったというメールが来たが、Hiring mangerをCCにいれそのケースにおいてVISAは問題になり得ないことを丁寧に述べたメールを送ったところ次のステップに進むことができました。

サードドア:意思決定者

 意思決定者に採用したいと思われるとすべてのVISA問題は解決されます。問題は①その層の人たちは忙しいこと、②LinkedInを見てる可能性が非常に低い点です。その一方でその人達にアプローチをする人自体が非常に少なく、もし知り合えたらその時点で相当目立つことが出来きます。まさにサードドアです。そのドアの開け方は無数にありますが、上記の本は1つ参考になるのかなと思います。私の場合、関心を持った会社のChairmanに直接直筆の手紙を書いたところ、ランチに行くことになり、求人が存在していないにも関わらずオファーを貰うことに繋がりました。

 サードドアを狙ったネットワーキングを実施したことで、最終面接まで行った会社のうち4社中3社はいずれもCFOとのインタビューで「●●から君に関して連絡あったけど、どうやって知り合ったんだ」という会話に発展しました。もちろん知り合いであるだけで採用に繋がるような甘い世界ではありませんが、CFOをよく知る人からの連絡はポジティブに働いたと思います。また、サードドアの良い所は、欧州ではあまりないポテンシャル採用が行われる可能性が高まる事だと思います。

 自分はサードドアを狙うことにしました。これは、そんなことできるわけがないと言われるとむしろやりたくなる、自分の性格にあっていました。

アプローチ先

 どんな人にアプローチするのか。基本的に、思い浮かぶ人は全員にアプローチするが答えだと思います。

1.卒業生

 自分の所属する学校の卒業生。全てのMBA生が利用するパイプライン。多くの卒業生はその学校の所在国で就職するはずなので、もし働きたい国があれば、働きたい国とMBAの所在国は同じにすると良い思います。

2.前職の上司

 過去働いていた会社の関係者で欧州に関連がある人(そんな人を知ってそうな人)。自分の場合は上司と話すのが好きだったし、会社も嫌で辞めたことはなかったため、キャッチアップがてらオンラインで話しました。

3.日本人

 興味深いキャリアの日本人の方々には連絡してみました。日本という共通項だけで、快く引き受けてくださり、人のやさしさに触れました。LinkedInだけでなくTwitterや他のMBAブログを読んで様々な日本人にコンタクトを取りました。助けてもらう度に、自分も就職してこういう卒業生になろうと心に決めました。

4.教授

 IMD MBAの教授は企業のクライアントを個人で持っており、非常に強いネットワークを持っています。もちろん、「紹介してくださいよー」って言って紹介してもらえるものでもないですが、中には教授のツテでポジションを作ってもらった卒業生やCVを超有名企業のCEOに直接送ってもらった卒業生もいました。
 ちなみにIMDでは、教授とランチ行きたいと言えばほぼ確実に行けました(忙しいので日程調整は難航しますが)。他の学校の方も、就活関係なく、授業以上の内容を聞きたい時はランチに誘った方がいいと思います(自分も数人とランチしました)。
 教授と同じプロジェクトに関与すると結構仲良くなります(教授宅でご飯食べたクラスメイトもいた)。自分は関心があったファイナンスの教授や関心がある企業をクライアントに持つ教授には連絡をしてお願いしました。

5.クラスメイト

 少人数で全員のことを知るIMDにおいて、これはもはやネットワーキングではないのですが、クラスメイト経由の強いリファーラルを貰うケースも存在しました。社内情報も詳細に教えてもらえるので、もし求人に関連する部署をよく知るクラスメイトがいると非常に強力な協力者になります。私はクラスメイトのお父さんにお話を伺うこともありました。

6.日本好きの外国人

 ありがたいことに日本が好きな外国人や日本で働いてた/学んでいた外国人は多くいます。商工会議所の集まりや、日本絡みのイベントに参加して何人かと仲良くなれました。中には採用権限を持ってる人とも仲良くなれました。職には繋がらなかったが、イベントを楽しみました。

7.転職エージェント

 スイスに就職したアメリカ人の卒業生からオススメされて、とりあえずアプローチしてみました。が、全無視されました。エージェントはVISAを持たない人に対しては基本的に相手しないが、バックグラウンドが非常に優れていれば相手されることもあるんだと思われます。そのアメリカ人卒業生はMBBとIBのバックグラウンドでした。 

ネットワーキングで何を話すのか

3つのマインドセット

 自分はクラスメイトにKing of Networkingと言われるくらい、ネットワーキングを通してかなり積極的に協力してくれる方々と知り合うことができました。振り返ると、以下の3つのマインドセットが重要だったかなと思います。

1. Be curious.
 相手のキャリアや人生に心の底から関心を持つ。
2. Be authentic.
 心から気になることを質問する。なぜ気になるのかの背景も伝える。
3. Be bold.
 敢えて失礼かもしれない質問や御願いをしてみる(しかし空気はよく読まないといけない)。明らかに相手してくれないような高職位の人にも連絡を取ってみる。
 

どんな話をしていたか

 最初の方は卒業して5年以内の若い年次の人に絞ってキャリア相談等の仕事絡みの質問をしていましたが、段々と卒業後10年を超えた人達と話すようになり、その人達には人柄/人生に触れるような質問をするようになりました。キャリアの最大の成功や失敗、人生の後悔、公私共にこれからの人生でやりたいこと、子供が生まれてから仕事と人生のバランスであったり、その中でどのように自己研鑽の時間を設けているか、それについて奥さんとどうコミュニケーションを取っているか等です。
  ネットワーキングの際に自分の専門分野の情報を提供することでwin-winの関係を築くことが理想の形ではありますが、自分はビジネスの知見を通したwin-winの関係は諦めていました自分しか知らない情報で相手が興味あることはまずなかったと思います。
  その代わりに、プロのインタビュワーになりきって、その人の人生を振り返る機会を与えることを心がけました。そういうwin-winの関係もあると信じて。実際に話す前には、そう思い込めるくらいその人のことを調べ上げました。LinkedIn, Google,そして Twitteでの本名の検索は必ず実施し、インターネット上から取得可能な情報は全て読み込んだ上で臨みました。知りすぎてて気持ち悪いと思われないように、逆に配慮していました。その甲斐もあったのか、終わった際に振り返る機会を与えてくれてありがとうと言われることもありました。ミーティングを延長していいよということで1時間を有に超えることも。人の人生を聞くのは、元々非常に好きだったためこのネットワーキングの仕方が非常に自分に合っていました。
 ネットワーキング後も連絡が来たり、自分のCVを知り合いにばら撒いてくれることになった回数はクラスメイト比でも圧倒的に多く、自分はいいネットワーキングをできたんじゃないかと思います。もちろん、どんなに準備しても会話が盛り上がらないことや、相手に失礼なことをしてしまったと反省することも多々あったが、そういう時は就活頑張ってるクラスメイトに話して傷を癒してもらいました。

ネットワーキングのすゝめ

 正直に話すと、自分はそこまで現地に残りたいという強い覚悟があったわけではなかったため自分が関心をもった相手にしかネットワーキングできませんでした。就活を目的にアプローチするというよりも、人に会って楽しんでいたら、いざとなった時に頼ることができた、という感じでした。結果的に様々な人々との会話が就活に活かされましたが、これは副次的な効果だったと思います。
 既にリタイヤした人やキャリアの終盤に差し掛かっている人達から得られた人生訓は、自分の心の奥底に深く刻まれることになりました。現地就職できなくても十二分なリターンを得られたから現地で働けなくてもいいやと途中から思うようになりました。
 就活がうまくいくか行かないかは結局は運でコントロールしきれない要素があると思いますが、ネットワーキングから学びを得ることはコントロール可能です。現地就職に固執しすぎず、肩の力を抜いてネットワーキングそのものから学びを得てあわよくば就活に活きすというくらいの軽い気持ちでコツコツ続けるのがいいのかなと思います。海外での学生生活を楽しむことを忘れないようにしてください。

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