短編小説  女王様のジェラシー

「あの子になれない。」


あの子はプリンセス。みんなに甘やかされてずっとニコニコしてる。
可愛くて、愛嬌もあって、お姫様みたいな子…私は真逆で知らない人から女王って呼ばれてるらしい。
冷たくしたいわけじゃない。だけど、ずっと愛を跳ね返して、優しさを無視して、1人で全部やってきた…そして、本物みたいに偽物を演じてる。
私は、私になりたくて、自分を貫いてきたのに、お姫様に勝てるわけがなかった。高嶺の花にはなれたのに…それでは意味がなかった。
昔はお姫様に憧れていた。けれど、私が望まれているものはそうではないと、そして、お姫様は努力してもなれないと、そう、悟ってしまった。そして、そうしてる内に自分すらもわからなくなってしまった。
ただそう、項垂れていても仕方ないのに、今日だけは、どうしてもいつも通りの女王様ができる気がしない。もういっそのこと全部さぼってしまおうかしら、

「ねぇ、大丈夫?」
「!?」
「?珍しいね。なにかあったの?」
やめて、優しくしないで、余計惨めになるでしょ
「あなたってかっこいいよね」
「……あなたはすごくかわいいわ。まるでお姫様のようよ。」
「私がお姫様なら、あなたは高貴な女王様ね」
「そうでもないわ…私はどうせ偽物よ。私…あなたがとても羨ましいわ」
「私もよ。本当はあなたみたいな美しい人になりたかったの。」
「…私はお姫様になりたかったわ」
「私達、真逆に見えて、似た者同士なのかもね」
「そうなのかもね。」
願望も、愚痴も全部言い合って、女王様の呪いはお姫様によって解かれた。



妬みも嫉妬も人間らしいけど、それを呑み込めるかが問題。

汚い感情もうけいれて、
          愛と優しさを受け入れる
               強さを持って

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?