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「後工程」を考えよう〜「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」を読んだ

元駅員で交通系YouTuberの綿貫渉さんの「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」を読んで考えたことを、脳内関西人の林(仮名)と富田(仮名)の会話形式でお届けします。


 最近、駅で駅員さんと話したことある?

富田 駅員さん?そういえば久しく話したことないな。なんか聞きたいことがあってもスマホで調べられるし。

 せやろ?駅員さんに用があるのは、大体、自分で調べようともせえへん人か、なんか文句ある人ってことになる。

富田 まぁそうなるな。人身事故とかで駅員さんに怒って詰め寄る人もおるよな。怒ってもしゃあないのに。

 通勤時間帯のターミナル駅とか、ものすごい数の人が行き来してるやん?あれを駅員さん側から見たら恐怖やで。そのまま通過してくれたらええけど、自分のとこに来るのは大体苦情やって考えたら、たまったもんやないわな。

富田 確かに。客層バラバラで人数も多いから、モンスターカスタマーが居る可能性も高いよな。特に夜は酔っ払いも増えるし。ある意味、究極の接客業やな。

 ほんまそれ。シラフで酔っ払いの対応するんはキツいやろなー。酔っ払いの吐いたゲロの掃除とかもせなあかんし、大変やと思う。せやから、駅員から車掌になった人は、二度と駅員には戻られへんっていう人が多いねんて。

富田 駅員さんって、そういうキャリアパスなん?

 駅員から車掌、ほんで運転士っていうルートやねんて。それぞれの段階で試験があって、もちろんそれも大事やねんけど、試験を受ける以前に、遅刻せえへんことが1番大事で、一回遅刻したら昇進1年遅れとからしい。駅員が寝坊したせいで始発遅れたりしたらニュースやもんな。せやけど、寝坊しただけで新聞沙汰になる職業はなかなかないで。

富田 オレ絶対、駅員無理やわ。せやけど、駅員さんが絶対寝坊せぇへんように、時間になったらベットの下がブワーって空気で膨らんで無理やり起こすっていうやつ見たことあるで。テレビのなんかの番組で。あれがあったら流石に寝過ごさへんやろ。

 それがやな、あれで起こされるんはめっちゃ不快やねんて。せやから、あれが作動する前に別の目覚まし掛けて先に起きるようにすんねんけど、スイッチ切った後、二度寝するっていうリスクがあるらしい。

富田 なるほどなー。完璧やと思ったけど、どんなシステムにも穴はあるもんやな。それにしても、駅員さんって、カスタマーハラスメントに耐える強靭なメンタルと時間厳守、さらに泊まり勤務をこなす体力もあって、どんな職場でも通用しそうやな。

 もう1個、駅員さんに要求される、ならではの能力があんねんけど、なんやと思う?

富田 なんやろ?路線図の知識とか?

 それもそうやけど、大声を出せることやって。非常時に大勢の乗客を自分1人で避難誘導せなあかんから、新入社員研修で徹底的に鍛えられるらしい。

富田 確かに、考えてみたら大事なことやな。話聞いてたら、駅員さんマジリスペクトやわ。明日電車乗るとき御礼言いに行こ。

 苦情言いにきたと思って怖がられるからやめとけって。迷惑にだけならんようにして、心の中で感謝しとったらええねん。最近読んだ「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」っていう本にええこと書いてたで。

改札の駅員さんに問い合わせをするときは、聞きたいことが誤解なく伝わるように分かりやすく伝える。ホームにいる駅員さんには電車の接近時や発車時には話しかけない。切符売り場では必要以上に手間が掛かるような面倒な注文はしない。電車に乗るときは駆け込み乗車しない。電車が止まったとしても駅員に問い合わせず、出ている情報でどうすべきか自分で判断する。この気持ちを持ち続けて、少しでも鉄道会社で働く人の負担を減らすことができれば良いなと思う。
綿貫渉「怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン」(KADOKAWA)p199より

おれが新入社員の頃の上司の口癖が「後工程を考えろ」で、当時は「工場やあるまいし『後工程』って(笑)」って感じやってんけど、これは仕事だけやなくて生き方全般、駅員さんに対する態度にまで通じる真理やったわ。

富田 ええアドバイスもろてたやん。せやけど、感謝の気持ちは思ってるだけでは伝わらへん。苦情やと思われんように、笑顔で徐々に近づいて行こ。

 不敵な笑みを浮かべたおっさんが近づいてきたら、余計怖いって。

〈おしまい〉



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