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【生活ログ02】性別を隠して職業訓練に行く

はじめに

 島﨑残像です。出生時に女性と割り当てられ、女性でも男性でもないジェンダーアイデンティティを持ち、男性的な表象を目指してトランジションしているノンバイナリー/トランスマスキュリンです。シス男性のパートナー(夫)がいます。
 来年3月に大学院を修了し、4月から奈良県立高等技術専門校の服飾ビジネス科で給付金を受けながら職業訓練に通う予定です。まだ願書を出す前なので選考に漏れてしまう可能性はありますが、情報シェアのために記事を書きます。


性別を隠して職業訓練が受けられるか

 先日、ハローワーク奈良で職業訓練を受ける際に訓練校に戸籍や保険証の性別情報がバレる可能性はあるか聞きました。ハロワの方の言うところによると、奈良高等技術専門校の場合は提出書類に性別欄がないこと、ハローワークがアウティングすることもないため性別情報が渡ることはないとのことでした。
 しかし、訓練校に提出する書類に懸念点が残るため以下に示します。

・入校願書および志望動機等記入票
 →性別欄なし
・健康に関する申告書
 →性別欄不明、健康診断を受ける必要がある可能性
・調査票
 →性別欄不明

健康診断という関門

 健康に関する申告書は、おそらく健康診断結果を病院で記入してもらう用紙だと思います。ここに性別欄があれば記入せざるを得ず、自費診療かつ保険証を提示せず医師から「逆」の性別だと思わる、という状況にならない限りAGABを記載されてしまうでしょう。職業訓練校入校時の健康診断の項目については以下のとおりです。項目に性別が入っていないので医師に記入しないよう頼むこともできるかもしれませんが、性別欄がある以上、書かなければ不自然に思われてしまうでしょう。

第九 健康診断
一 定期健康診断
訓練施設の長は一年以上訓練を実施する訓練生に対し、入校後六月以内ごとに一回、次に示す項目について医師による健康診断を行うこと。ただし、入校の際には必ず訓練生より当該項目に係る医師による健康診断の結果を証明する書面を提出させること。
(一) 既往歴及び業務歴
(二) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
(三) 身長、体重、胸囲の検査(ただし、身長にあつては二五歳以上の者で医師が必要でないと認めたものを除く。)
(四) 視力、色神及び聴力の検査
(五) 胸部エックス線検査(労働安全衛生規則第四四号第二項に掲げる者を除く。)
(六) 血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無(四○歳未満の者で医師が必要でないと認めたものを除く。)
(七) その他医師が必要と認めたもの

公共職業訓練施設における安全衛生管理実施要綱について

 健康診断は自費で医療機関で受ける必要があるようですが、トランスジェンダー/ノンバイナリーはトランスフレンドリーな医療機関を探すことが難しいかもしれません。ここが最大の難関といえます。

ハローワークに性別を隠せるか

 ハローワークでの求職者情報の登録では、性別を「男性」「女性」「入力しない」から選ぶことができます。僕は今のところ「入力しない」を選択しています。
 僕は既にハローワーク奈良に対して、トランスジェンダーであることをカミングアウトしており、幸いにアグレッションを受けることなく利用できています。
 職業訓練を受けるにあたってハローワークに戸籍上の性別を隠すことができるか提出書類から考えてみます。

・マイナンバー確認書類
 →個人番号カードと個人番号通知カードには性別記載がある
  個人番号記載の住民票記載事項証明書は性別不記載で取得できる可能性
・身元(実在)確認書類
 →性別不記載のものとしては運転免許証、障害者手帳がある(1点)
 →性別不記載の住民票記載事項証明書と公共料金領収書(2点)
・無収入申告書(無収入の場合)
 →非課税証明書は性別不記載
・給与明細、賞与明細(前職有の場合)
・年金通知書(年金受給者)
・事業収入、不動産所得、養育費額、仕送り額確認の通帳
・すべての銀行口座の通帳または残高証明
・職業訓練給付金要件申告書
・職業訓練受講給付金通所届
 
→性別不記載
・雇用保険受給資格者証(雇用保険受給者)
 →性別記載あり(前職場が離職票1に記載した性別に基づく)
・受講申込・事前審査書
 →性別欄あり(未記入でもOKとのこと)

 性別不記載のものを組み合わせて提出すれば、性別記載の書類を多数見るという苦痛は回避できるかもしれません。雇用保険資格者証については、離職票に前職場が戸籍上の性別を記載してしまった場合は失業保険の手続き段階で知られてしまうことになります。
 そして、提出書類はありませんが世帯構成員を調べるために住基ネットに情報照会されてしまうようです。氏名、生年月日、住所、年齢の4情報はハローワークに知られてしまいます。
 とはいえ、ハローワークが大々的にトランス差別をしてくることはあまり考えられないので、そこまで神経質になる必要もないかもしれないです。

性別不記載の住民票記載事項証明書について

 上記のようなポストを岩川ありささんがされています。自治体によっては性別不記載で住民票記載事項証明書をとることができるようです。

扶養内で性別を知られずに働く

 自ら社会保険に加入して働く場合、健康保険証の関係から戸籍上の性別が職場に知られてしまいます。しかし、被扶養者の場合は扶養者の保険に入っているため、この問題は発生しません。
 トイレが男女共用で更衣の必要のない職場で、性別欄のない履歴書を提出して働き、1年以上の雇用を回避するか、長期雇用だとしても通常の労働者の4分の3以下の週所定労働時間にすれば健康診断を回避することができます。10人以下の事業所であればトイレが男女共用である可能性があります。
 年齢と見做される性別で被扶養者であることを怪しまれたり、男女どちらなのか聞かれたりすることがあるかもしれませんが、そこは上手く理由をつけて回避できるのではないかという気がします。
 とりあえず、ハローワークから戸籍上の性別がアウティングされるということはないようです。

おわりに

 戸籍上の性別変更前に、AGABやトランスであることを隠して社会生活を送るのはなかなか難しそうです。できるだけ性別情報を秘匿にしながら職業訓練や求職活動を行っていくつもりです。進捗があればまた記事を書きます!

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