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遠ざかる、一服

子どもたちが寝て、自分がまだ活動できる余力を残している日。そんな日は週に何日もあるわけではない。だからたまに、5歳児がすんなりお布団に入り、0歳児もスヤスヤと寝息を立てている夜、心は浮かれてはしゃぎだす。
今なら、散らかった部屋を片付けられるし、ドラマを配信で観ることもできるかも。でもとりあえず、今日も一日なんとか乗り切ったご褒美に、ひと息入れようか。紅茶かな、コーヒーかな、冷蔵庫にスイーツもあったぞ、とウキウキしながら準備をして、いざ、とスイーツの袋を開けた途端、聞こえるか聞こえないかほどの微かな音を耳が拾う。3秒ほど静止して、気のせいだろうか、と生どら焼きを一口齧ると、今度は先ほどよりもはっきりと、何かが聞こえる気がする。
廊下につながるドアをそっと開くと、「んなぁあああぁ、んなあぁぁぁ」と赤ちゃんが怒っている。一瞬の逡巡ののち、手に持った生どら焼きを置いて寝室に向かう。
わずか10分の1人時間、贅沢を言わないで洗濯物でも畳んでおけばよかったかなあ、と少ししょんぼりしながら、怒れる赤ちゃんを抱き上げるのだ。


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