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だるまさん

いつか貰った大きな達磨
何十年前?
わたしが生まれるくらいの
気づいたときには
二つの黒いおめめ
座敷の奥で埃を被って
鎮座していた
だるまさん

家族がだんだん欠けてきて
いけないことなんだけど
だるまさんの処分に困った

どんと焼きなんて近所でやらないし
神社もない
送るには大き過ぎる
仕方がないので納屋に置いた
だるまさん納屋の闇で怒ってた
願い叶えたのに
ここから出して貰えないって

わたしはとっても罰当たり
扉を締めて
感謝のことばも言わず
だるまさんのことは忘れた

ぽつ、ぽつ、ぽつ

あれから何年経ったことだろう
ふとした拍子に納屋の扉を開けた

すると
だるまさんが消えていた

ぽつ、ぽつ、ぽつ

だるまさんのいた上で雨漏り
何年も何年も
紙で出来ただるまさんは
だんだん色褪せ、溶けていった

ぽつ、ぽつ、ぽつ

わずかばかりに残った
身体の破片

家族の願いは叶った

叶えただるまさんの願いは
こんな薄情な家から
逃げだすことだったに違いない

でも足の無いだるまさんは

雨露に身を任せ

ここから逃げて行ったのだ

ぽつ、ぽつ、ぽつ

願いひとつ叶えて
どこかに行った達磨さま