とらやの羊羹

食後は、必ずお茶をいれてテレビを見ていた。小中学生のときは、じいちゃんが買ってきた御座候(わたしは粒あんが嫌いなのだけれど)や家にあったお菓子をたべながらお茶を飲み、高校生の時は、お茶菓子になるようなものを自分で買って帰ることもあった。祖父が謡曲の先生だったこともあり、生徒さんからよくお土産をもらっていた。羊羹はそのひとつだった。とらやの竹の皮につつまれた羊羹をだして、3センチくらいにきる。緑茶はいつもより苦く、濃いもので。フォークでうすーくきった羊羹を口にいれて、そのあと緑茶を飲む。くちの中にある、あつい緑茶で、うすっぺらい羊羹をとかし、何度でもそれを繰り返した。甘いものも苦いおちゃもそこまで好きじゃなかったけれど苦いお茶と甘い羊羹の組み合わせがちょうどよく感じてこの2つは最高の組み合わせだなと思った。小さなお皿、こし餡の羊羹、見たくもない野球中継、苦い緑茶。食後の思い出は、この組み合わせですぐに再現できる。

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