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ハーレムゲコ

先日、三四郎の相田さん、R-指定さんと3人で飲みに行った。相田さんとはかれこれ4年ほど前からお世話になっていて、Rさんとは去年から『スペシャのヨルジュウ♪』というレギュラー番組で共演していて、相田さんとRさんは共に『オールナイトニッポン0』のパーソナリティと、それぞれで交流があった3人が今回初めて一同に会した。

相田さんおすすめのお寿司屋さんに連れてってもらい、Rさんの「寿司とコーラは合う。というかコーラはなににでも合う。コーラ最高」という『洋画の吹き替え』みたいなセリフを聞きながら絶品料理の数々に舌鼓を打っていると

「そういえば今日チコカリートが来たがってたんですよ」

どうやら現在沖縄に住んでいるフリースタイルダンジョン初代モンスターでおなじみのチコカリートさんが仕事の都合で東京に来ており、今日の飲み会の話を聞いて羨ましがっていたそう。

チコさんは一度ツイッターでトンツカタンのことをつぶやいてくれたということもありいつかお会いしたいと思っていて、相田さんも「会いたい!今からでも来れるかな?」と前向きだったのですぐさまRさんにお願いして連絡してもらった。

そこからしばらくして

チコさんがやってきてくれた。初対面にも関わらず持ち前の圧倒的な陽のエネルギーでどんどん打ち解けていき、最終的に『チコさん主催の会』くらい話題の中心にいた。

そんなこんなでいい時間になってきたのでそろそろお店を出ることに。普段あまり交流する機会のないラッパーのみなさんと一緒にいたせいか、相田さんが急にオラついて

「締めのクラブでも行っちゃう?」

と言い出した。すかさず僕も

「いやラーメンみたいに言うなよ」

と返すと、相田さんはツッコまれて満足げな表情を浮かべていた。そんな芸人ふたりによる『陰のじゃれ合い』を見たチコさんがおもむろにスマホを取り出し、

「あ、もしもし?いまそっちどんな感じっすか?なるほど!じゃあこれから4人で行きますー」

クラブへの直通電話をかけていた。行ったことないからわからないけど、クラブって電話予約できたんだ。

「あれ、実はボケなんだ…」という事実を白状できないまま、一行は渋谷の『ハーレム』というクラブに向かった。中に入るとイケてる男女が爆音のクラブミュージックを聴きながら艶めかしく体を揺らしていた。すぐに溶け込むチコカリート。異空間にまったく馴染めない3人。

…ん?

3人?

そう。クラブ慣れしていない芸人に混じり、ヒップホップの第一線で活躍するR-指定も萎縮していたのだ。あまりにおどおどしているもんだから途中から『プロダクション人力舎所属』かと思った。

その様子をみかねたチコさんが僕に対して「今から俺とじゃんけんして、負けた方が女の子に声かけましょう!」と提案してきた。なにを言ってるんだこの人は。クラブの隅っこでちびちびとジャスミン茶を飲んでる人間がそんなことできるわけがない。

この絶対に勝たねばならないというプレッシャーのなか僕が出した『ギッチギチのグー』を、チコさんは『ふわっふわのパー』で包み込んだ。試合に負けて勝負にも負けた。こうして僕は近くにいた女性2人組に声をかけることとなった。

ただどうしても『ジャスミン茶男のソロ』だと負け戦すぎるので、隣にいた『コーラ男』ことRさんにお願いして2人で声をかけることに。おそらくハーレム史上初の『ソフトドリンカーダブルス』が結成された。

急きょ開催された入念な作戦会議の結果、第一声は

「あのーすいません。(人差し指を天高く掲げ)この曲、知ってます?」

に決定した。Rさんも「それはマジで完璧ですね」と太鼓判を押してくれた。

しかしながらやはり知らない人に声をかけるのはなかなか勇気が必要で、ふたりして女性にすこし近づいては怖くなって引き返すという『波みたいな行動』を8回したあと、ついに僕が

「あのーすいません。(人差し指を天高く掲げ)この曲、知ってます?」

と話しかけた。作戦通り一言一句違わず言えた達成感に満ち溢れていた。それを受け、女性たちは明らかに怪訝そうな表情を僕らに向けながら

「知らないです」

詰んだ。こんなにすぐボールが返ってくるとは思わなかった。絶望する僕をかばうようにRさんがなんとか会話を続けようとしてくれたが、その努力も虚しく女性たちはその場を立ち去った。

「ま、まぁこんなもんっしょ」

精一杯の強がりとともに僕はジャスミン茶を一口すすった。隣を見ると、そこには呆然と立ち尽くすR-指定。

どうやらこの敗北の味に、コーラは合わないようだ。

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