あこがれのラジオを終えて
前回のnoteで僕が芸人を志すきっかけとなったニッポン放送の番組『知ってる?24時。』と同じ枠でフワちゃんと番組をやらせていただくことになったという記事を書いた。先日、その生放送が終了したので今回はその日のことについて書こうと思う。
当日は入り時間前にフワちゃん、作家の周成と3人でカフェに入り軽くご飯を食べた。フワちゃんは「あたしダイエット企画中だからなにも食べないよ」と言っていたが、結局周成が頼んだカルボナーラを3口食べてご満悦だった。最初は罪悪感に苛まれながら食べていたが、終盤は「もっとソースを絡めてからちょうだい!」と指示を出すほどのパスタモンスターになっていた。
腹ごしらえを済ませ、ニッポン放送に入って打ち合わせやジングルの収録などを終えたころには本番まであと30分を切っていた。スタッフさんに「本番5分前にはブースに来てください」と言われ、楽屋へ戻った僕たちはなぜか『ダラダラと過ごす』という選択肢を選んでしまい、あっという間に本番10分前になってしまった。慌てて準備を始め、僕はなんとか5分前にはブースに向かえそうだったのだが肝心のフワちゃんがまだ時間がかかるとのことで周成が
「森本さんだけでもブースへ!!」
『のちに命を落とす人間』みたいなセリフを言ってきたのでひとりでブースに向かった。
ひとりでブースに入り、刻一刻と本番が近づく。時計の針は23:58を指したが、一向にフワちゃんがやってくる気配がない。その時の写真がこちら。
フワちゃん慣れしている僕もさすがに不安げな表情を浮かべている。しかし一番かわいそうなのは今回フワちゃんと初めて一緒に仕事をする作家のトゥルーマン翔だ。
ちゃんと『この世の終わりフェイス』をしている。人間、絶望するとただただ右斜め下を見ることしかできないのだ。
いよいよ本番まであと1分を切ったところでスタッフ陣がついに『フワちゃんは来ない』という方向で動き始めた。はじめて大勢の大人たちが一斉に諦める瞬間を目の当たりにした。そして全員が僕の方を見て
「森本さんひとりのパターンで行きましょう!」
そんなパターンないわ。もう誰もまともな判断ができなくなっていると
ドタドタドタドタ!!!!!
完全に『フワの足音』が聞こえてきた。あいつ、足音も派手なのかよ。
「遅れてすみません!!!!!!」
フワちゃんが謝罪とともにブースへ入ったのが本番10秒前。すると続けざまに「やばい!!!!!!」と言い出したので何事かと思ったら
「周成!!!充電器ちょうだい!!!」
いらねーよ。これからラジオ番組やるやつがスマホの充電を気にすんな。
こうしてドタバタもドタバタでなんとかふたり揃って本番に臨むことができた。しかし無事に始まったからといって放送自体がスムーズにいくわけではない。フワちゃんがタイトルコールを忘れてヘラヘラする時間があったり、台本の紙を散らかしすぎてなかなかコーナーが始められなかったり、やっと始まったと思ったコーナーでは「キレイなトイレでおしっこをした」というオチのエピソードトークを披露したり、その後フワちゃんが持ち込んだコーナーが10秒間に何回「FUCK」と言えるか競うものだったりと、放送事故スレスレを走り続けた1時間だった。その証拠に、エンディング間際にニッポン放送の偉い方が一瞬だけブースに顔を出して
「とんでもない放送だな!!!」
とだけ言い残してドアを閉めていった。僕がニッポン放送の人間だったら確実にそのあと「お前ら出禁な!!!」と吐き捨てているのでこの局の心の広さに感銘を受けた。
ちなみにこの番組に関与してしまったスタッフさんたちは社内で「この放送大丈夫なの!?」と何人かに聞かれ、全員が「えっと…大丈夫だと聞いてます」と言ってぼかしたらしい。どれだけ辿っても「大丈夫」と言った張本人が見つからないパターンのやつだ。
帰り際、深夜なのでタクシーチケットをいただいたのだが、フワちゃんは原付で来ていたため受け取らないと思ってたら
「タクシー乗って帰るの憧れだからタクシーチケットください!」
と言い出した。原付はどうするのか聞くと
「ここに乗り捨てる!」
グランドセフトオートかよ。交渉の結果、翌日のお昼に取りにくることを条件にニッポン放送に原付を置かせていただけることになった。おそらくニッポン放送的にもこんなの最初で最後のケースだろう。 こうしてそれぞれがタクシーに乗って帰路につき、僕たちの初めてのラジオは怒涛のスピードで終わっていった。
決して僕の思い描いていたラジオではなかったけど、それでもとんでもなく楽しくあっという間の1時間だった。聴いてくれた人にとってもそうであったら嬉しい。 リスナーの皆さま、スタッフさんたち、そしてフワちゃんには感謝してもしきれない。みんなのおかげで最高の経験をさせていただいた。いつかまたできますように。
後日改めて放送を聞き返してみた。
ひとつ断言できるのは、
この放送を聴いて芸人を志す中高生はいない。
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