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書くなら今しかねえ

先日、ランジャタイさん主催ライブ『ランジャタイのやるなら今しかねえ~大バズーカ★バズーカ★ハイパー丸~』にゲストで呼んでいただいた。どんなサブタイトルだよ。

約1ヶ月前にこのライブの制作を協力しているK-PROさんからオファーをいただいた。せっかくなのでもちろん出させていただこうとしたのだが、詳細を聞くとこのライブで披露するための

・ランジャタイのネタ

・ランジャタイと森本のトリオネタ

・森本のピンネタ

の計3本を書いてほしいとのこと。ゲストにかける負荷ではない。百歩譲って最初の2つはいいとして、なんで僕ピンネタやらないといけないんだよ。しばらく考えたあと、なにを血迷ったか「出ます!」と返信してしまった。

聞くところによるとこのライブはK-PROさんがスペシャルな公演を連日行う『一週間ぶっ通し興行』の最終日を飾る公演で、なおかつ一番初めにチケットが完売したらしい。なんでだよに次ぐなんでだよである。

出演が決まったあと、まず初めにランジャタイのコンビネタの制作に取りかかった。ランジャタイをイメージしたコントを当て書き、K-PROさん経由で2人に台本を送っていただいた。すると数時間後に

国崎が台本をスクショして僕に送り返してきた。返信しても「いま役作りしてるから黙ってて」としか返してこない。本番当日までこういった『スパムDM』が送られ続けた。

本番一週間前の夜、K-PROスタッフさんから「明後日ランジャタイさんのロケがあるのですがもし空いてたら参加していただけますでしょうか?」という連絡が来た。たまたまその時間空いていたので参加することに。

もちろんなにも聞かされることなく集合場所である中野駅に到着するとなにやら国崎さんとスタッフさんがざわついている。どうやら前日から伊藤さんと連絡がつかないらしく、今日ちゃんと来るかわからないとのこと。なんで全員ギリギリで焦りだしたんだよ。もっと早めに焦るポイントあっただろ。

集合時間を過ぎても音沙汰がないため電話すると、前日の早い時間から爆睡していたらしくロケの存在を知らなかったらしい。なんで僕が2日前にロケの存在を知ってて、当人が前日までなにも知らないんだよ。

伊藤さんは1時間ほどで到着するとのことで、その間本来伊藤さんがやるはずだったというラップバトルの映像を僕で撮ることになった。概要を聞くと

「街の電柱とかにラップバトルを仕掛け続けるだけだよ」

どんな企画なんだよ。なぜか自信たっぷりの表情でラッパーの衣装を渡され、気がつけば

電柱、鯉のぼり、電話ボックス×3とラップバトルをしていた。ジャッジの国崎があまりラップバトルを見たことがないのか、どの試合も終わったあと「オッケーオッケー」とだけ言って勝敗を決めなかった。なんで僕鯉のぼりと引き分けてんだよ。

ラップバトルがひと段落ついたころに伊藤さんが到着したのでそこからは3人で中野を街ブラするというロケをした。聞くところによるとランジャタイさんは芸歴13年目にして初のロケらしい。たしかに彼らはなるべく屋外に放たない方がいいので世の中が懸命な判断をしている。ロケ中は案の定様々なハプニングに見舞われつつもなんとか無事に終えることができた。

そして迎えた本番当日。劇場に入り、ライブの流れが書いてある香盤表を確認すると

『オープニング:森本によるショータイム』

なんだこの怖すぎる一文は。まさか僕が見落としていただけでネタの他になにかしらのショーを用意しなければいけなかったのか?すぐさま国崎さんに聞くと

「あぁ。それ昨日思いついたやつ。今から説明するよ〜」

そんなもん勝手に思いつくなよ。どうやらオープニングで陽気な音楽を流すから、それに合わせてできる限り楽しく踊り続けてほしいとのこと。なんでそんな『森本主催感』出さなきゃいけないんだよ。

あっという間に開演時間となり、国崎による指導のもと僕は

この格好でショータイムに挑むことになった。コンセプトなんなんだよ。

開演と同時に予定通り陽気な音楽が流れ始め、明転するとともにただひたすら自分の引き出しにある数少ないダンスの動きを披露する。しかし当然ながら素人の即興ダンスなんて見てられない。笑いが一切ないまま、1分間踊り続けて僕のショータイムは終了した。体感時間は『7年10ヶ月』だった。

その後ランジャタイによる正式なオープニングがあり、そのまま3人でのトークコーナーに。国崎さんがマイケルジャクソンのモノマネ芸人であるマイコーりょうさんにハマり、それがきっかけでマイケルジャクソンも好きになった話をしていたけど、絶対に逆だろ。マイコーりょうさんから入る人がいるなんてマイコーりょうさんも想定してないよ。

トークコーナー終わりでネタコーナーに。まずは僕が書いたランジャタイのコントを披露していただくことに。舞台袖で見ていたのだが、台本通りだったのは設定と流れだけで『8割オリジナル』になっていた。ただ、僕が描けなかったランジャタイ色をこれでもかってくらい濃くしてくれて、台本をはるかに超えるコントに昇華してもらってうれしかった。

ネタ終わりの幕間映像で件のラップバトルが流れた。初めはウケていたが、対戦相手を変えているだけでやってることはずっと同じなので 、割と序盤から一切笑いが起きなくなった。できたてホヤホヤの例えを使うと、『ショータイムでの僕』くらいウケてなかった。

その後予定ではそのままトリオネタを披露するはずだったが、あまりのウケなさに急きょ『言い訳タイム』を設けることにした。今のところチケット代よりも少し多めに返金しなくてはいけないレベルのライブである。

「こんなにウケないとはね〜!」などの醜すぎる言い訳タイムを経て、ようやくトリオネタを披露することに。

このトリオネタを作るにあたり、普段のランジャタイのネタを思い返してみるととにかく国崎さんがボケ続け、それを伊藤さんが優しく包み込むというイメージがあった。なので既存のランジャタイのネタに僕がとにかくツッコミ続けるという流れをなんとなく決め、国崎さんに

「ランジャタイで一番しつこいネタをやってください」

と連絡すると、即答で

「ぽんぽんヨガっていうネタがある」

そんなネタあるなよ。動画が添付されていたので確認してみると

「ぽんぽんヨガを教えるから絶対にやってね?」

という内容のみで3分45秒やってた。後半伊藤さんは一言もしゃべってなかった。このお笑いどこで習ったんだよ。

ということでこのぽんぽんヨガのネタにとにかくツッコミまくるということだけ決め、国崎さんの「練習はしなくていい」という判断によりぶっつけ本番でやることに。

最初はちゃんとツッコんでいたはずだったのだが、ある瞬間を境に

『2人ともマイケルジャクソンになってしまう』という珍現象が起きて途中から「ポゥ!」と「アォ!」しか発さないまま、気付いたら終わっていた。舞台袖で国崎さんが「あのままひとりの人間になるかと思った」と言っていた。なってたまるか。

その後はラップバトルの映像を見ながら言い訳するという『最悪の時短』を発明し、それ終わりでついに僕のピンネタの出番になった。

「森本はこのネタで世界を変えたいと言っていました。渾身のネタです。笑いで世界を平和にする、そんなメッセージが込められたネタです。みなさん、とくとご覧あれ!森本のピンネタです!!」

という国崎による壮大な前フリで披露したのは一昨年のR-1ぐらんぷり二回戦で『無笑い』だったネタ。

できたてホヤホヤの例えを使うと、『ラップバトルでの僕』くらいウケなかった。

ピンネタを終え、最後はみんなでロケの映像を見るコーナーに。オープニングが無駄に長かったり、数あるお店の中から富士そばに行こうとしたりと国崎さんらしい言動にみんなで笑っていたところ、僕と国崎さんが同時にとある違和感に気付いた。

伊藤さんが一言も喋っていない。

ロケしてる時はなぜか気付かなかったのだが、伊藤さんがとにかく喋らない。リュックを背負ったまま、一歩下がってキョロキョロしているだけなのである。それを指摘してからというもの、

みんなもう伊藤さんにしか目が行かなくなってしまった。国崎さんのボケも、僕のツッコミも誰も聞いてなかった。画面の伊藤さんが喋らなければ喋らないほど会場全体が笑いに包まれた。彼がロケに1時間遅刻しているというのも最高のスパイスとなって我々に襲いかかった。僕も国崎さんも立てなくなるくらい笑ったし、お客さんも笑い疲れて「はぁぁぁ……」という声を漏らしていたし、伊藤さんは画面に映る自分を指差し「こいつヤバイね」って言ってた。客観視すんな。

ついさっきまで返金確実ライブだったにも関わらず、この伊藤さんが見れただけで一気にチケット代の元が取れたと思う。喋らずにお客さんを満足させるという『チャップリンの手法』でなんとかライブを乗り切ることができた。

この時の衝撃とおもしろさを会場に来れなかった皆様に少しでも伝えたいと思いこのnoteを綴った。これを読んだあなたがウケてくれていますように。

できたてホヤホヤの例えを使うと、

『ロケ中のランジャタイ伊藤を見た国崎と森本』くらいウケていますように。

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