<お祭りステージ2>
●会場入り
予定の約30分前にステージイベントの会場となっている体育館に入った。
あまりの空間の広さに困惑した。
ステージ寄りに長テーブルと座布団が配置されていて、飲食自由で観客は思い思いに過ごしている。スーパー銭湯の大広間を大きくしたらこんな感じか。祭りも終盤とあってか、空席も目立ったが、それでも、観客80人位は残っているようだ。ところどころで、子供が走り回り、やや騒然とした雰囲気も漂う。
ステージから一番離れたところの観客は、表情が見えないどころか、観ているのかいないのかも判別できない。家族や友人と会話をするスペースとして利用しているだけなのかも知れない。
この空間にいる全員を取り込もうなどと考えるのは止めて、とにかく最後までしっかりやり切ることだけを考えることにした。
直前の出演者になると会場で歓声が沸き、子供たちを中心にかなり盛り上がっている様子である。こういう方の次はやりづらい。途端に静まり返ったりしたら、詰まらないという評価になるのだろうか。俄かに緊張が高まってきた。
こういうときにどうすれば、普段通りの演技ができるだろうか。
緊張を緩和するのに、柔軟体操をしたいと思ったが、生憎、ステージ脇の控室には、出演者とその道具で体操などできるスペースはなかった。
そこで、以前、やってみて良かった方法を試してみることにした。本に載っていたものではないが、狭い空間で緊張をほぐしたいと思い、目を瞑って呼吸を整えつつ、何となくやってみたことが偶然にも効果があったのだ。
人は同時に複数のことには集中できないということなのか。専門的な説明はできないが、ステージに上がること以外の何かに集中せざるを得ない状況を作れば、いくらかでも緊張から解放されるということは理にかなっているように思われる。
いよいよ、出番のアナウンスが始まった。
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