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これも運命

 子供の頃、親の知り合いだったと思います・・・詳しいことはよく覚えていませんが、とにかく【ブリーダーさん】で産まれてそれ程経っていない猫さんをお迎えしたことがありました。その方に事情があったのか何かで、2匹のシャム猫さんのうち1匹が我が家にやってきました。私が迎えに行ってどちらのコにするか選んで、本当に嬉しかった。

 でも、お別れの時とても辛かった。私は既に成人して仕事もしていましたが、手につかないぐらい泣きました。もう二度と私は猫をお迎えしない。辛かったという理由もあるけど、何て言うか【一生にこのコだけ】という気持ちがありました。それだけ特別な存在として、今も思い出すと胸が苦しくなります。

 そんな自分が、ここ最近猫ちゃんをお迎えしました。ドラマや漫画で聞くような【ひょんなことから】が、正にそう。一番しっくりくる言葉です。こんなことになるなんて、思ってもみませんでした。前述の【一生にこのコだけ】を忘れたわけではありませんから。

 夏のある日、うちの倉庫の中でこっちを見つめる猫ちゃんが居ました。珍しい!他にもやってくる猫ちゃんがいましたが、目が合うだけで逃げられました。

 この猫ちゃんも近づくとやはり逃げましたが、少し離れはするものの立ち止まってこちらを見ていました。お腹がすいているのかな?と、猫ちゃんが現れたとき用に買ってあったカリカリとお水を用意して、倉庫の片隅に置いておきました。

 しばらくして見に行くと、少し食べてありました。なんだか嬉しくなってまた追加。翌日にもまた少し食べてあってまた追加。ちょっとリッチなご飯買ったりして、さながら貢いでるよう。それでもそれが楽しかった。それから、いつしか私や夫の姿を見ると鳴きながら駆け寄ってくれるようになり、足元で甘えてくれました。

 ある日気づいたのですが、朝も晩もうちの倉庫に居るんじゃないか?と思えてきました。様子を見に行くと必ず倉庫内のどこからともなく駆け寄ってきました。それはそれで嬉しかったけど、このコはどこから来たのか?迷子なのか?捨てられたのか?思わなかったわけではありません。

 けれど、自分の中の【あの誓い】があったので、深入りは避けようとしていました。これ以上は情を持ってはいけない。夫と、それぞれテキトーな名前をつけて呼んでいました。

 きっとどこか別の家でご飯を貰ったり、上手にやっているんだろう。そんな風に思っていました。汚れている感じでもないし、痩せこけているわけでもない。毛艶も、そう悪くない。

 それが・・・。いつものように駆け寄ってきてくれた猫ちゃんと、少し遊ぼうと触れました。ゴロゴロと喉を鳴らし、尻尾もピンと立てて目を細めてくれました。そこへ夫も帰ってきました。一緒に猫ちゃんを見ていた時に夫が【そう言えば怪我してたよね?】と。

 知らなかった。どこどこ?と、夫が言う尻尾を見てみました。すると・・・

 血の気が一気に引きました。血がかなり出ていて、尻尾の付け根が裂けている(ように見えた)・・・自分でも信じられないくらい手が震えて、夫に病院に連れて行ってあげたいと訴えました。夫が怪我に気づいた時より酷くなっていると言いました。最悪なことにその日は土曜日の夕方。色々あって(問い合わせをしたけど断られたりして)連れて行ける病院がありませんでした。

 絶望している私に夫が、【とりあえず家に入れてあげる?】と言ってくれました。生き物を家の中で飼うことをよく思っていなかった夫でしたので、そう言ってくれて嬉しかった。義両親が1階に住んでいて動物嫌いなので、夫が外からはしごをかけてベランダに抱えて上がって、一旦浴室に入ってもらいました。その間じっとおとなしくしてくれてました。

 ホームセンターへとりあえず、ケージ、キャリーバッグ、トイレセット、ごはん容器・・・思いつくものを買いました。そしてその夜もその次の日の夜も祈るように過ごしました。どうか生きていて。当の猫ちゃんは、戸惑っている様子はあれど、暴れたり隠れたりすることは全くなく、大人しくすごしてくれました。ご飯もしっかり食べて、おトイレもすぐに理解してくれました。

 幸い週明けは仕事が休みだったので、病院へ連れていくことができました。心配していたケガも、思ったほど酷くなくその他の傷も心配いらないものでした。本当にホッとしました。

 問診記入の際年齢はわからない。一旦保護したとしつつも、名前のところにしっかりと書いてしまいました。夫と、情が移り過ぎないようにテキトーに呼んでいた名前を少し練り直していたものを書きました。

 実はテキトーとは言え、その音と響きにももう既に愛着もあったもので。あぁ、たくさんフラグが立っていたのね。もうこのコお迎えするしかないなぁ・・・。ごくごく自然に、そういう流れとなりました。

 葛藤はもちろんありました。でも、このままお外で会うだけの日々を過ごして、いつか姿を見なくなったら?どこかで事故に遭ってしまってる姿を見てしまったら?そんなことを頭を過ぎっては目を背けていました。それが、あのケガを知った時にはもうダメでした。・・・思っていた怪我より軽かったけど、深刻に見えてしまったのは既に情が湧いていたんでしょうか。

 このコが本当は何歳なのかはわかりません。獣医さんによる推測のものだけです。猫生がどれくらいかもわかりません。今じゃそれを考えて怖くなってしまうこともあります。先代の猫さんの時は17年程一緒に過ごしてくれましたが、アウトドア経験はありません。それにお迎えしたのはもっと仔猫時代でした。不安になっても仕方がないのでしょうが、考えてしまいます。できるだけリスクに備え、そして自分たちも学ばなくてはと思います。

 それでわかってきたことと言えば夫が思いのほかメロメロになっている姿。面白い・・・。意外でした。猫ちゃんについては喋るようによく鳴いてくれるところや、抱っこは苦手だけどとりあえずどこにでもついてきて、寄り添ってくれるところ。困ったいたずらもあるけど、手を焼くという程ではない。そう思えているのは、自分もメロメロなんでしょう。

 NNNというものが存在するらしい。我が家を選んでもらったとするならば謹んでお受けして、このコの猫生を幸せなものにしてあげたい。正式な施設や団体からの保護ではなくこういうカタチではありますが、このコが通って居付いてくれるようになり、私の気持ちも解いてくれて、夫の心も変えてくれて・・・。

 いろんなタイミングやコトが重なって今があると思います。NNNの思惑?選ばれて光栄です。運命という言葉はちょっと恥ずかしい気もしますが、そうとしか思えません。

 

#うちの保護いぬ保護ねこ


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