高校生クイズ

「ニューヨークへ行きたいか!!」
トメさん(福留功男・日本テレビアナウンサー)の周りをカメラが回る。
「オー!」と参加者の顔、顔、顔。
「どんなことがあってもニューヨークへ行きたいか!!」
「オー!」

あの伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」は1977年、こうして始まった。(〜1998年)

「史上最大の人間ドキュメンタリー」の始まりだった。

日テレ「木曜スペシャル」で第1回の放送を見終えて、僕は深く溜息をついた。

「こんなに面白い番組があっていいのだろうか」と。

毎日放送「アップダウンクイズ」の優勝賞品が「夢のハワイ旅行」だった時代、アメリカ大陸を横断しながら、クイズを出題。ニューヨーク決勝の地、パンナムビルの屋上を目指す。

テーマ曲は、トランペット奏者メーナード・ファーガソンが演奏する「シーム・フロム・スタートレック(「宇宙大作戦」のテーマ曲)。これだけ書いても分からない人もいるかも知れないが、聴くと、「ああ、これこれ!」となるはず。

嫁と付き合っていた時、大阪のライブハウス「ブルーノート」にメーナード・ファーガソンを聴きに行った事がある。

休憩時間に入り、「シーム・フロム・スタートレック」の演奏が無いので、僕は勇気を出して、ファーガソンに訊きに行った。

「シーム・フロム・スタートレック」を聴きたいのですが、と。

彼は首を横に振った。
「あの曲はフルオーケストラでないと演奏出来ないんだ」

1982年暮れ。
「ウルトラクイズ・史上最大の敗者復活戦」という番組の収録が、今は無き、「大阪球場」で行われた。

東京・後楽園球場の福留功男さんと大阪球場の読売テレビ・羽川英樹アナウンサーが司会で、ウルトラクイズの「国内敗者復活戦」。

「ウルトラクイズ」の第一予選会場、後楽園球場まで行けない僕にとっては朗報だった。

入社の三ヶ月前。僕は1問目で敗退。

1983年、入社した年に「高校生クイズ」が始まった。当然の如く、志願して、スタッフに紛れ込んだ。

この第1回「高校生クイズ」も会場は大阪球場。

後楽園球場の模様を映し出す「オーロラビジョン」。計算違いで、球場の入口から入らない。高さを10センチ縮める為に、スタッフが「オーロラビジョン」を載せたトラックに乗り、みんなでジャンプ。トラックの荷台がほんの少し下がった瞬間に、「オーロラビジョン」を球場内に入れる事に成功した。

それからADとして、「高校生クイズ」には長らく付いた。
ある年、収録が全て終わって、撤収の準備をしている時、トメさんから
「今日は一日お疲れさん」
と優しく声をかけてもらい、とっても感動したのを昨日の事の様に憶えている。

1992〜1994年には、「高校生クイズ近畿大会」のディレクターを任される様に。

1992年、京都。
1993年、大阪。
1994年、姫路。

今と違って、スマホも携帯もゲームも無い時代、「高校生クイズ」に出場する事が高校生にとって、大きな楽しみであり、イベントだった。

現在の参加人数は全国合わせて、一万人位。

僕らがディレクターをやっていた頃は「近畿大会」だけで、一万人以上の高校生が集まった。

猛暑のど真ん中、「高校生クイズ近畿大会」は一日で収録が行われるので、収録終わりには疲れ果てていた。へたり込んで一歩も動きたくなかった。

会社に帰ると、ビールで乾杯。窓の外では天神祭の花火が次々と華やかに上がっていた。ビールの味は格別、天国へ行った気分だった。

収録の翌日からは地獄の編集。30時間の収録VTRを音声の聞こえる1.5倍速、3日間でプレビュー。

内容を全て紙に書き出して、スクリプトを作る。高校生の「宝石の様な」喜怒哀楽の表情、生の声を慎重に掬い上げるのが僕に与えられた使命と思っていた。

それが終わったら、編集に2週間。30時間を1時間にしなければならない。

毎日、朝9時から夜10時まで。毎回、凄まじい編集地獄に気が狂いそうになった。

3年間、編集していて感じたのは、女子より男子の方が「喜怒哀楽」の表情が年々無くなっていった事。

男子の方が社会に影響されやすく、素直な表情が出せない。それに対して、女子の方が感情に素直に反応しているのかなぁーと思っていた。

第1回の「アメリカ横断ウルトラクイズ」が「スターウォーズ」が公開される前年の1977年。46年という歳月が過ぎた。

あの頃、テレビにも映画にも熱中していた日本人。スマホやインターネット、ゲーム等のおかげで、便利になり、娯楽も増えたが、「暑い寒いという感覚」を失ってしまったのかもしれない。

多分、世界一便利な国、日本。でも、本当に幸せな国なのだろうか?

「高校生クイズ」で出会ったたくさんの高校生たち。たくさんの「喜怒哀楽」を見せてくれた高校生たち。今はどんな風に暮らしているのだろう。

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